東京都の石原慎太郎知事が「トップダウン」で始めた若手芸術家の支援事業「トーキョーワンダーサイト」(TWS)に、知事の四男・延啓(のぶひろ)氏(40)が深くかかわり、批判を呼んでいる。「身内は遠ざけるべきだ」との都議会・野党の指摘に、石原知事は「余人に代え難い」と反論する。
都立美術館の予算、決算の推移
●名刺を注文
朝日新聞の請求で公開された公文書などによると、延啓氏は今年6月と9月、TWS館長でもある今村有策・都参与(47)らとともにTWSのロゴ入り名刺を注文していた。肩書は、事業を企画する芸術家を示す「キュレーティングアーティスト」(CA)だ。
都は「海外での活動用の名刺。国内では使っていない」と説明する。延啓氏は今村参与らと6月にフランス、9月に韓国に渡航した際に使った。名刺の印刷代や旅費に公費は使われていない。
ただ、延啓氏が都からCAに委嘱されたのは03年6月から04年3月まで。今村参与は「私の判断で印刷させた。(公費渡航が発覚してからは)誤解を生むので、名刺を使わないように指示した」と話す。
●参与に知人
今村参与と延啓氏とは、TWSが立ち上がる以前から知り合いだった。石原知事も、今村参与が延啓氏の知人と知りつつ都参与に任命したことを認めている。
延啓氏は01年12月、文京区内に開館した1号館「TWS本郷」のステンドグラスの原画を制作した。別の画家らが描いた候補の中から今村参与が絵を選んだという。03年3月には、今村参与が延啓氏を、CAとは別の外部委員の職に推薦し、一緒に公費でドイツ、フランスに渡航した。
TWSの副館長を務めるのは今村参与の妻。石原知事の孫は、今村参与の妻が開く私塾に通っているという。
石原知事は今村参与と妻についても「余人に代え難い」と言い切る。一方、TWSに出展した作家の関係者は「個展の打ち上げでも主役の作家は隅っこで、スタッフは今村夫妻にばかり気を使う。誰のための事業なのか」と話している。
●予算は4年で8倍
TWSの予算は増え続け、06年度の当初予算では、施設改修費を除いても3億7000万円。4年前の8倍になった。一方、他の都立文化施設は、06年度予算では一部増えたところもあるが、全体的には支出は減少傾向だ。
渋谷区にオープンした「TWS青山」は、芸術家が滞在しながら作品制作に打ち込むための施設。都の休眠施設を使ったため、石原知事は「廃物利用の最たるもの」と言うが、家賃だけで年間9000万円。TWSには、07年度も4億円余の予算が組まれる見込み。
今月7、8日に開かれた都議会本会議では、共産党や民主党がTWSを批判。石原知事は「必要とあらば身内をも使う」と応戦した。ただ、知事の海外出張で規定以上の宿泊費が支出された問題では「何が悪い」と激しくヤジった自民党も、延啓氏の問題では一転、静かになった。
12日までに、TWSや延啓氏に関して都に寄せられた苦情や批判は314件にのぼるという。 (アサヒコム12月13日)
都立美術館の予算、決算の推移
●名刺を注文
朝日新聞の請求で公開された公文書などによると、延啓氏は今年6月と9月、TWS館長でもある今村有策・都参与(47)らとともにTWSのロゴ入り名刺を注文していた。肩書は、事業を企画する芸術家を示す「キュレーティングアーティスト」(CA)だ。
都は「海外での活動用の名刺。国内では使っていない」と説明する。延啓氏は今村参与らと6月にフランス、9月に韓国に渡航した際に使った。名刺の印刷代や旅費に公費は使われていない。
ただ、延啓氏が都からCAに委嘱されたのは03年6月から04年3月まで。今村参与は「私の判断で印刷させた。(公費渡航が発覚してからは)誤解を生むので、名刺を使わないように指示した」と話す。
●参与に知人
今村参与と延啓氏とは、TWSが立ち上がる以前から知り合いだった。石原知事も、今村参与が延啓氏の知人と知りつつ都参与に任命したことを認めている。
延啓氏は01年12月、文京区内に開館した1号館「TWS本郷」のステンドグラスの原画を制作した。別の画家らが描いた候補の中から今村参与が絵を選んだという。03年3月には、今村参与が延啓氏を、CAとは別の外部委員の職に推薦し、一緒に公費でドイツ、フランスに渡航した。
TWSの副館長を務めるのは今村参与の妻。石原知事の孫は、今村参与の妻が開く私塾に通っているという。
石原知事は今村参与と妻についても「余人に代え難い」と言い切る。一方、TWSに出展した作家の関係者は「個展の打ち上げでも主役の作家は隅っこで、スタッフは今村夫妻にばかり気を使う。誰のための事業なのか」と話している。
●予算は4年で8倍
TWSの予算は増え続け、06年度の当初予算では、施設改修費を除いても3億7000万円。4年前の8倍になった。一方、他の都立文化施設は、06年度予算では一部増えたところもあるが、全体的には支出は減少傾向だ。
渋谷区にオープンした「TWS青山」は、芸術家が滞在しながら作品制作に打ち込むための施設。都の休眠施設を使ったため、石原知事は「廃物利用の最たるもの」と言うが、家賃だけで年間9000万円。TWSには、07年度も4億円余の予算が組まれる見込み。
今月7、8日に開かれた都議会本会議では、共産党や民主党がTWSを批判。石原知事は「必要とあらば身内をも使う」と応戦した。ただ、知事の海外出張で規定以上の宿泊費が支出された問題では「何が悪い」と激しくヤジった自民党も、延啓氏の問題では一転、静かになった。
12日までに、TWSや延啓氏に関して都に寄せられた苦情や批判は314件にのぼるという。 (アサヒコム12月13日)