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経財会議 「労働ビッグバン」 労働法制の全面改悪がもたらすもの

2006年12月07日 | 政治経済
ビッグバンは宇宙の始まりと考えられている大爆発です。御手洗冨士夫キヤノン会長(日本経団連会長)ら経済財政諮問会議(議長・安倍首相)の民間議員が提唱する「労働ビッグバン」は確かに労働法の大爆発です。その結果、生まれる宇宙は大企業の天下です。

 偽装請負を合法化

 11月30日の会議で民間議員が出した文書の表題は「複線型でフェアな働き方に」。働く者のことを考えているかのように装っています。しかし実際は、労働者を安く効率的に使うために現行の労働法を全面的に変えてしまおうという考え方で貫かれています。

 戦後、制定された職業安定法は、請負などの間接雇用が労働者の無権利状態を生んだことへの反省から、雇用主が労働者に直接責任を負うことを原則にしました。労働者派遣法はこの原則からの逸脱を合法化しました。不十分な歯止めが派遣期間の制限と、期限に達したときの直接雇用の申し入れ義務でした。

 それすらなくなれば、社会問題化している偽装請負が合法化されます。大企業はこれまで以上に正社員を減らして派遣で置き換えることができます。

 諮問会議の民間議員、八代尚宏・国際基督教大学教授は会議のなかで「(派遣期間を)三年に制限されるということは、その企業でもっと働きたいと思う人が、法律によって首を切られることになる」と発言。派遣労働者のためを思っているかのように述べました。しかし、派遣労働者を使い捨てるのは法律でなく企業です。期間制限をなくせば、企業は雇用責任を負わずにいつまでも派遣労働者を使い続ける自由を手にするだけです。

 労働時間についても、民間議員は提出文書のなかで「時間に縛られない働き方」を求めました。八代氏は「ベルが鳴ると一斉に働き、一斉に休むという工場のような働き方をベースにした法律がホワイトカラーをも縛っている」と一日八時間、週四十時間制の撤廃を主張しました。

 現行の労働基準法のもとでも違法な不払い残業が横行しています。労働時間の法的規制をなくせば、際限ない長時間労働が合法化されます。

 基本的権利を覆す

 厚生労働省の労働政策審議会では、八時間労働制の規定をはずす「自律的労働時間制度」(ホワイトカラー・エグゼンプション)や労働条件の切り下げをしやすくする労働契約法制、解雇の金銭解決制度の導入が審議されています。いずれも労働者の基本的権利を根底から覆すもので、労働側委員が反対しています。

 民間議員は「労働ビッグバン」を諮問会議に専門調査会を設けて議論することを提案しました。労政審と違って諮問会議には労働側代表はいません。会議ではさすがに柳沢厚労相が「最低限の労働者保護規定を設けることは労働法制の一番の基本」「労使と中立な公益委員の入った三者(労政審)の間で実際の法制度が整備されていく」とクギを刺さざるをえませんでした。

 財界の要求に沿って労働法制改悪を進める担当大臣すら一言いわざるをえないほどの財界主導で自らの利益をはかろうというのが、諮問会議を舞台にした「労働ビッグバン」です。(山田俊英)


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