東京多摩借地借家人組合

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貸主が死亡し、共同相続になったとき、相続人の持分の割合で賃料を支払うのか

2006年12月26日 | 借地借家の法律知識
(問)建物や土地の所有者が死亡し、複数の相続人による共同相続により、単独所有から共同所有によって建物や土地が共有に変わった。その場合、借主は賃料を各人に分割し、それぞれの相続割合に応じて各人にそれぞれ支払わなければならないのか。

(答)土地や建物の貸主が死亡した場合、相続人は土地や建物の所有権を相続すると同時に貸借関係についての貸主の地位を承継する。相続人が数人あるときは、相続財産は、共同相続人の共有に属する(民法898条)。

  最近は、不動産小口化商品の1つとして投資者等が細分化された建物の共有持分を買受けるケースが多くなっている。

 共同相続人や共有持分取得者が貸主人の地位を承継した場合貸主が複数になる。その場合、借主は相続割合に応じて賃料を各人にそれぞれ分割して支払わなければならないのか、それとも、貸主の内の1人に賃料を全額支払えば、それで全員に弁済したことになるのかが問題になる。

  この問題に対して、共有物件の賃料は「不可分債権」であるという判例(東京地裁1972年12月22日判決)がある。

  家賃・地代は金銭で支払う債務であるから一見したところは分割債務とするのが素直なように思われる。即ち分割が出来る可分債権に思える。しかし、共有賃料を可分債権とみなすと色々不都合が生じる。

  例えば貸主の各自は自分の共有持分の賃料しか請求・受領が出来ないし、借主からすれば、複数貸主の各人に別々に賃料を支払わなければならず、どちら側からも不便である。

 そこでこの不都合を避けるために判例は、共有賃料はその性質上不可分債権とみなした。①不可分債権には性質上不可分給付と意思表示による不可分給付がある。②不可分債権においては、債権者の1人が債務者に履行を請求すると、総ての債権者が履行を請求したのと同様の効果が生じる。③債務者が債権者の1人に履行すると、総ての債権者に履行したものと同様の効果が生じる(①②③は民法428条)。

  このことから、共有賃料は共同貸主の内の1人に賃料の全額を支払えば、それで総ての貸主に弁済したことになる。

 弁済供託を行う場合も同様に考えればよいことが判る。

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