東京多摩借地借家人組合

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大家さんに遺体搬入を断られた

2007年12月01日 | 借地借家の法律知識
(Q) 元気そうだった叔父(72)がガンで他界しました。叔父の住まいは賃貸マンションなのですが、その大家さんから「遺体を部屋に入れるな。葬儀を自宅でするな。遺骨も帰宅させるな。法事関係は全てお断り」と言われました。

 入院から1カ月足らずで急逝したので、大家さんと前もって話し合う時間も無く、叔父の死に直面した私達には、大家さんと交渉する気力もなく言われるままに従いました。

 叔父の遺体は約20年以上、住み慣れた家に戻ることも叶わず、病院から直接葬儀場に運ばれ、翌日には、火葬、告別式、納骨、49日と慌ただしく執り行いました。もう、葬儀も済んでしまったので、今回は大家さんと揉めるつもりはないのですが、残された叔母が「私も、帰って来れないのね」と言うのを聞いたら、なんだかとても納得が出来なくなりました。

 賃貸の場合、部屋で死人が出ると次の人が入らなくなるという事情もあるのはわかりますが、叔父のように高齢で病院で病死しても、大家さんに断られたら借りている部屋での葬儀は執り行えないのでしょうか?



(山形県 30歳代 主婦)



(A) 住宅は人が死ぬ場所でもあります
 住宅は、人が住む場所であり、かつ、人が死ぬ場所です。病院で死を迎えるようになったのは最近のことで、戦前は病院で死ぬのはごく少数です。将来についても、可能な限り本人の望む場所で死を迎える権利が認められるようになることでしょう。

 アメリカの健康保険組合(民間で運営しています)の統計でも、自宅で終末を迎える人が9割ぐらいと、あるセミナーで聞いたことがあります。もちろんそのために、ターミナル・ケア(自宅で家族を看取ること)に対する保険のケアは厚くなっているとのことです。日本でもターミナル・ケアを奨励する医師も増え始めています。

 大家の発言は人権蹂躙で、個人的にはまったく聞き入れる必要がなかったと思います。むしろ、頑張って戦ってほしかったと思います。

 法律的にも、大家に説明することはあっても、許可を得る必要はまったくありません。賃貸借契約書に使用目的という項目があると思いますが、おそらく「乙は居住を目的として本物件を使用する」という内容が記載されていると思います。この項目の趣旨は、住宅を営利目的に使ってはいけないということです。

 宗教上の行為は、信教の自由が憲法で保障されている以上、また、大半の国民が仏壇を持つ、あるいは神棚を持つように、慣習として住宅の一部として認められています。

 死はタブーではなく全ての人に訪れるわけで、幸せなターミナル(終末)を迎えられる賃貸住宅が「良い物件」だと思います。

(住宅ねっと相談室カウンセラー 税理士 松下 明夫)


コメント
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