借地法12条2項(現借地借家法11条2項)にいう「相当ト認ムル地代」とは何か (最高裁平成8年7月12日判決、判例時報1579号77頁)
(事案)
(1)本権借地の地代は、昭和55年8月に月額6万円に増額されて以来据え置かれてきた。
(2)一方、本件借地にかかる公租公課(固定資産税と都市計画税の合計額)は、平成元年11月現在、月額約6万1771円であり、地代額を上回っていた。
(3)そこで地主は、平成元年10月、地代を同年11月分より月額12万円に増額請求した。
(4)しかし、借地人は右増額請求後も依然として月額6万円を支払い続けてきた。
(5)そこで地主は平成2年2月、借地人に対し1週間以内に増額賃料の支払がない場合は借地契約を解除する旨意思表示したが、借地人は催告期間内に催告通りの賃料を支払わなかった。
(6)よって、借地契約は解除されたとして地主が建物収去土地明渡の訴えを提起した。
(大阪高裁の判決)
借地人が従前の地代額を支払う限り主観的に相当と認められる地代を支払ったものとして債務不履行の責任を問われることはない。これが借地法12条2項の趣旨である。よって本件は借地人が6万円の地代を支払っている以上契約の解除は無効である。
(最高裁の判決)
①借地人が従前の地代額を主観的に相当と認めていないときは、従前の地代額と同額を支払っても借地法12条2項にいう相当と認める地代を支払ったことにはならないと解すべきである。
②では、借地人が主観的に相当と認める額の支払えさえしていれば、常に債務不履行にならないのかといえばそうではない。借地人の支払額が地主の負担すべき公租公課の額を下回っていても、借地人がこのことを知らなかったときは、公租公課を下回るの額を支払ったという一事を持って債務不履行があったということはできないが、借地人が自らの支払額が公租公課の額を下回ることを知っていたときは、借地人が右の額と主観的に相当と認めていたとしても、特段の事情のない限り、債務不履行がなかったということはできない。
③大阪高裁は、借地人がその支払額を主観的に相当と認めていたか否かについても、また、借地人が公租公課の額を下回るという事実を知っていたか否かについても事実認定をしなかったのは法令解釈適用の誤りである。
(若干の説明)
地代の増額請求があった場合の借地人の対応としては、借地人が自分だけの判断でこの額でよいと思う額を支払らておけば、後で結果としてそれも上回る額で決まったとしても債務不履行の責任は問われないというのは、ご存知の通り。この判決の意義は特に②にあって、「だからといってそれが公租公課の額を下回っていて、しかもそれを知りつつ漫然と従前の額を支払っている場合には、借地人の義務を全うしていることにはならない」と警告している。 1997.05.
(東借連常任弁護団)
東京借地借家人新聞より
借地借家の賃貸トラブルのご相談は
東京多摩借地借家人組合
一人で悩まず
042(526)1094 
(事案)
(1)本権借地の地代は、昭和55年8月に月額6万円に増額されて以来据え置かれてきた。
(2)一方、本件借地にかかる公租公課(固定資産税と都市計画税の合計額)は、平成元年11月現在、月額約6万1771円であり、地代額を上回っていた。
(3)そこで地主は、平成元年10月、地代を同年11月分より月額12万円に増額請求した。
(4)しかし、借地人は右増額請求後も依然として月額6万円を支払い続けてきた。
(5)そこで地主は平成2年2月、借地人に対し1週間以内に増額賃料の支払がない場合は借地契約を解除する旨意思表示したが、借地人は催告期間内に催告通りの賃料を支払わなかった。
(6)よって、借地契約は解除されたとして地主が建物収去土地明渡の訴えを提起した。
(大阪高裁の判決)
借地人が従前の地代額を支払う限り主観的に相当と認められる地代を支払ったものとして債務不履行の責任を問われることはない。これが借地法12条2項の趣旨である。よって本件は借地人が6万円の地代を支払っている以上契約の解除は無効である。
(最高裁の判決)
①借地人が従前の地代額を主観的に相当と認めていないときは、従前の地代額と同額を支払っても借地法12条2項にいう相当と認める地代を支払ったことにはならないと解すべきである。
②では、借地人が主観的に相当と認める額の支払えさえしていれば、常に債務不履行にならないのかといえばそうではない。借地人の支払額が地主の負担すべき公租公課の額を下回っていても、借地人がこのことを知らなかったときは、公租公課を下回るの額を支払ったという一事を持って債務不履行があったということはできないが、借地人が自らの支払額が公租公課の額を下回ることを知っていたときは、借地人が右の額と主観的に相当と認めていたとしても、特段の事情のない限り、債務不履行がなかったということはできない。
③大阪高裁は、借地人がその支払額を主観的に相当と認めていたか否かについても、また、借地人が公租公課の額を下回るという事実を知っていたか否かについても事実認定をしなかったのは法令解釈適用の誤りである。
(若干の説明)
地代の増額請求があった場合の借地人の対応としては、借地人が自分だけの判断でこの額でよいと思う額を支払らておけば、後で結果としてそれも上回る額で決まったとしても債務不履行の責任は問われないというのは、ご存知の通り。この判決の意義は特に②にあって、「だからといってそれが公租公課の額を下回っていて、しかもそれを知りつつ漫然と従前の額を支払っている場合には、借地人の義務を全うしていることにはならない」と警告している。 1997.05.
(東借連常任弁護団)
東京借地借家人新聞より
借地借家の賃貸トラブルのご相談は
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