東京多摩借地借家人組合

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連帯保証人に突然3年分の滞納家賃の督促が

2008年04月17日 | 借地借家の法律知識
(Q) 連帯保証人に突然家主から滞納家賃の請求が 貸し店舗の連帯保証人になっていましたが、先日、賃借人が店舗を明け渡した際に、家主から私に3年分の滞納家賃の請求が来ました。それまで、一度も保証人である私に請求の連絡はありませんでした。保証金は300万円で、契約時に私が出しています。請求額は580万円で、差し引くと280万円の請求です。支払う必要はあるのでしょうか?

兵庫県尼崎市 sansan(無職)


(A) 信義誠実を著しく欠いており、連帯保証人は金額保証をする必要はありません 一般に、貸し店舗などの事業用賃貸借契約に連帯保証人を立てることは少ないと思われます。賃借人の事業採算が悪化した場合に、負債額が巨額になる懸念があり、保証人の負担が著しく膨らむことがあるからです。そのため、連帯保証人を立てるかわりに、保証金の額が一般賃貸借契約の保証金や敷金に比べ、高額になっています。

 その上で、今回のように連帯保証人を立てた場合の問題を考えてみましょう。

 連帯保証人の保証債務の範囲は「主たる債務に関する利息・違約金・損害補償、その他すべてその債務に従いたるものを包含する」(民法第447条)とされていて、賃借人の債務と同等の責務を負うようになっています。また、通常の保証とは異なり、「催告の抗弁権」と「検索の抗弁権」(主たる債務者への督促や、財産に強制執行するように要求する権利)を有していません。ですから、連帯保証人は非常に厳しい保証債務を負っているといえるでしょう。

 また、保証契約は、賃貸人と保証人の直接の契約関係にあり、両当事者は保証契約を誠実に遵守する責務を負っています。このことから、賃貸人は連帯保証人に対し、賃借人の経営状況や滞納状況を定期的に報告する義務を負っているといえるでしょう。

 今回のケースでは、それを怠って一度も滞納状況を報告せず、また、賃借人の契約解除などの対策を打たずに3年間も放置していたのです。このように、いたずらに連帯保証人の保証債務を拡大した上で、解約退去時に滞納金額(保証金を除いたもの)を請求することは、著しく信義誠実を欠いています。むしろ賃貸人は損害を拡大した責を負うべきであり、連帯保証人は金額を保証する必要はないものと考えます。

 その点を説明し、賃借人と話し合って納得の上で支払いに応ずべきで、話し合いがつかなければ、裁判所へ訴えを起こすとよいと思います。


財団法人 日本賃貸住宅管理協会

http://www.jpm.jp

(2008年4月11日 読売新聞)



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法定更新された場合は契約書で特約した更新料を支払う義務があるのか

2008年04月17日 | 契約更新と更新料
(問)前回の更新の際、更新料支払いが一方的に書き込まれた借地契約を呑まされた。今回法定更新を選択した場合でも更新料を支払わなければならないのか。


(答)更新料支払の理由として多くの裁判例で指摘されるのは、(A)賃料の不足を補充する趣旨(例えば賃料の前払い)(B)賃貸人の更新拒絶権・異議権放棄の対価(C)合意更新された期間は明渡を求められず、法定更新の場合の、解約申入れの危険を回避出来るという利益の対価、以上3点である。(A)は、最近余り強調されず、中心は(B)と(C)に移っている。

 更新料支払特約があって法定更新した場合の裁判例で検討すると、(1)「肯定説」更新料特約は契約自由の原則によって合意したのであるから合意更新は勿論であり、法定更新にも有効である。即ち更新料特約が有る場合、賃借人は更新料支払の義務がある。(2)「否定説」更新料特約は合意更新の場合にのみ有効であり、法定更新になった場合は効力を有しない。即ち法定更新した場合、賃借人に更新料支払の義務はない。

 江東借地借家人組合の組合員(借地人)の実際の裁判例で検討してみたい。
 裁判では、法定更新した場合、契約更新料の支払義務の有無が争点となった。借地人は裁判で前記(2)説の立場から更新料支払理由の前提となっている(B)と(C)の事実を欠くので地主の更新料請求は根拠がないと主張した。
 だが東京地裁は更新料支払合意が法定更新の場合を除外するものとは認められないとして(B)と(C)を否定し、(1)の立場から更新料支払を命じた(2000年3月13日判決)。

 それに対して、東京高裁は借地人の主張を認め、(2)の立場から借地人に更新料支払の義務はないと判示した(2000年9月27日)。借地に関してはこの見解が裁判例では有力になっている。最高裁は(2)の見解に立つ東京高裁の判決を是認し、地主の要求を棄却した(2002年2月22日)。既に、(2)の見解に立つ同趣旨の借家に関する最高裁の判例(1982年4月15日)がある。相談者は法定更新を選択すれば裁判例から更新料の不払いは可能である。但し実行する場合は組合の顧問弁護士とよく相談する必要がある。(東京借地借家人新聞4月号)



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