土曜日、品川でこちらのセミナーを聴講してきました。午前中から夕方5時までやっている、長いセミナーなのですが、朝は別の用があったため、午後の第二部、第三部を聴講。
なにしろ、竹中平蔵氏、吉崎達彦氏、宮家邦彦氏という、当代一流の論客によるフォーラムですから、面白くないはずはない。
竹中氏は黒田日銀の功罪というテーマで1時間公演されました。マイナス金利については、自然利子率、貯蓄と投資の関係など、オーソドックスな説明。日銀については「専門性が高く、即断即決を求められる為独立性は重要。しかし目標設定については政府の政策と一致を図らねばならない」とし、過去にはいくつもの失敗を繰り返してきた、という批判も。
黒田総裁はこれまでの日銀首脳と違い、目標と時期を明示した点で画期的、金融政策としてやるべきことはしているが、政府側が歩調を合わせて構造改革等を進めることができなかった。消費増税も失敗だった。ただしそれは前政権の負の遺産だ、と。
年内にあるかもしれない、米利上げが、黒田日銀にとって挽回のチャンスになるのでは、として締めくくりました。
第三部では竹中氏をモデレーターに、吉崎氏、宮家氏が持論を展開するという構成。ちょっときちんと要約する自信がないのですが。
- 米大統領選について、両氏とも酷い戦いだと酷評。勝敗はほぼ見えているが、票差が小さかった場合「トランプ現象」は尾を引くだろう。米国に限らず、保護主義、ナショナリズムの流れは、世界の分断を招きつつある。
- TPPについて、クリントン氏は本心では賛成であり、1~2年後には実現させるだろう。
- かつての常識がいまでは通用しない。米ロはともに資源国(米は世界一の産油国)となり、原油価格の下落は必ずしも米景気を刺激しない。米の製造業は活況を呈しているが、雇用を伴わない。日本の貯蓄率はいまや極めて低い。。
- 米利上げは、年内1回、来年も数回はあるかも。景気後退の可能性について、吉崎氏は現状それほど過熱感がないと楽観視。
- 欧州。英国のBrexitと同様の流れ、ナショナリズムとポピュリズムは欧州全体に蔓延している。来年にかけて伊仏独蘭で選挙があり、これがどう表れてくるか。さらにこれが中国に広がっていくと?
- 宮家氏、かつては東西冷戦がナショナリズムを封印し、世界は安定していた。これからは冷戦以前の状態に戻る。冷戦後に出た楽観論、フランシス・フクヤマ氏などを暗に批判。人の本質はそんなに変わらないと。
- 吉崎氏、グローバル化と民主主義と国家主権は、両立しない(トリレンマ)。→お二人とも、だいぶ悲観的、と言うか・・。「新しい中世」も、天安門もアラブの春も、今は昔。。
- 竹中氏は今後のCityの地位について関心が強い。吉崎氏は、イギリスは市場主義なので、多少振れがあってもいずれは、と楽観。むしろEUに不安感。
- 中国。2020年までは6%成長で行けるだろう。問題はその先。国有企業改革はとん挫するだろう。ことによると中所得国の罠に陥る恐れも。
- 一人当たりGDPは2001年の1000ドルから昨年8000ドルに増えた。ので、消費側は良いのだが、生産側には問題がある。粗鋼生産量8億トンをどうさばくというのか。
- 習近平は権力を掌握しきれているか。宮家氏は掌握はしていると思う。外交政策のブレは、常務委員ほかの政権中枢に外交への関心がなく、国内ばかり気にしているから。強硬派は軍を握っている。それが問題。
- 中東。宮家氏、「オスマン帝国はまだ壊れていない」。シリア、イラクはもう壊れてしまった。ヨルダン、レバノン、サウジは大丈夫か?
- アメリカは中東から手を引くことはない。中東からの撤退は、アジア太平洋地域からの撤退を意味する。その選択肢はないはずだ。
- 中印の成長ピークは2010年。翌年から石炭、鉄などの一次産品価格が下がり始めた。石油はアラブの春などの影響で高止まったが、14年ごろから下がり始め、今年初めに底を打ったと思う。
- ロシア。アメリカの横槍が入らない、この時期に訪日のシナリオは予測できた。双方とも、なにか考えがあるはず。結果次第で政局に。
- 吉崎氏。民主党は下院を取れず、ヒラリー氏はしばらくは慎重運転をするだろう。
- 宮家氏。中露は米新政権を試すだろう。時期は就任後数か月のあいだ。中国は南シナ海。ロシアはバルト三国か。欧州と中東の状況に注目。
- 竹中氏。日本はオリンピックのある20年までは勢いを保てる。その先を見る必要がある。構造改革を進めるべき。
というわけで、やはりまとめきれなかったですね。。
帰り道。何人かのひとが写真を撮っていたので見ると、大きな月。
写真に撮ると、小さくなってしまいますが、肉眼ではけっこうインパクトがありました。
今日が満月かと思ったら、これは「14番目の月」だったようです。