季節外れの台風が来たような奇妙な天気の朝だった。風は生暖かく、朝7時を過ぎても辺りは暗い。ただ、南の空は明るく光っている。
出かける支度をしながら、つけっぱなしにしているテレビを見る。
BBCがガザ地区からの映像を伝えている。大写しにされた10歳ぐらいの少女は、両親がどこにもいない、家族はどこに行ったのだと強い調子で訴えている。
記者がどこにいたのかと聞くと、家の中にいたら天井が落ちてきたのだ、という。
髪は埃で白くなり、左側は血で固まっている。顔と着ている服にも血がこびりついている。目の周りが痛々しいが、目そのものはけがをしてはいないようだ。
通訳の声がかぶっているから本人の肉声は聞こえてこないが、少女は記者の問いかけにはっきりと答えているようだった。憤っているようにも思えた。