作法というのは、
突き詰めて考えれば、他人への気遣いだ。
具体的な細かい作法をいくら知っていても、
本当の意味で、他人を気遣う気持ちがなければ、
何の意味もない。
その反対に、作法なんかよく知らなくても、
ちゃんと人を気遣うことができれば、
大きく作法を外すことはない。
駄目な奴は、この気遣いがまったくできていない。
人の気持ちを考えて行動するという発想を、
最初から持っていないのだ。
他人への気遣いで大切なのは、
話を聞いてやることだ。
人間は歳を取ると、
どういうわけかこれが苦手になるらしい。
むしろ、自分の自慢話ばかりしたがるようになる。
だけど、自慢話は一文の得にもならないし、
その場の雰囲気を悪くする。
それよりも、相手の話を聞く方がずっといい。
料理人に会ったら料理のこと、
運転手に会ったらクルマのこと、
坊さんに会ったらあの世のことでも何でも、
知ったかぶりせずに、
素直な気持ちで聞いてみたらいい。
自慢話なんかしているより、
ずっと世界が広がるし、
何より場が楽しくなる。
例え知っていたとしても、
一応ちゃんと聞くのだ。
そうすれば、専門家というものは、
きっとこちらの知らないことまで話してくれる。
井戸を掘っても、
誘い水をしないと水が湧いてこないように、
人との会話にも誘い水が必要なのだ。
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