在イタリア、ソムリエワインノートとイタリア映画評論、他つれづれ appunti di degustazione

ソムリエ 20年、イタリアワインのテイスティングノートと、なぜか突然のイタリア映画評論、日本酒、日本茶、突然アートも

Tre baci di Hayez

2015-11-23 15:35:16 | 何故か突然アート
Tre il bacio di Hayez
三つの接吻 アイエツ



ミラノで待望のアイエツの展覧会が始まった。スカラ座前の広場にあるギャラリー・イタリアにて2月までの開催である。アイエツに絞った展覧会は初めての開催とのことで、嬉しいことにかなりの入り。
アイエツは日本ではほとんど知られていないと思うが、イタリアではまずまず、ミラノではかなり根強い人気のある画家である。

(なお、アイエツには「三つの接吻」という作品はないので悪しからず)

1791年、ベニスのあまり裕福ではない家庭の5人兄弟の末っ子に生まれ、裕福な叔父夫婦のところに里子に出された。叔父の趣味が美術品収集、彼自身も絵の才能に恵まれ、絵画を勉強、アカデミーに入学、18歳(1809年)でコンテストに入賞したという経歴を持つ。
その後は、ミラノのブレラ絵画館のディレクターを務めたこともあり(1850年)、生涯のほとんどをミラノで過ごした。1882年、91歳で没。

そのアイエツの作品が、間仕切りで作った部屋も含め、10の部屋に分かれて展示されている。これだけの作品が一堂に会したというのは迫力があり、感動ものである。
展示の目玉は3つの「接吻」。しかし、その他の作品も素晴らしい。
アイエツは、面白いことに、似たような作品、関連した作品を残しているが、それが一堂に見られるというのは美術好きにとっては至福である。
くだんの「接吻」もそうだが、「ロミオとジュリエット」、「接吻」と「抱擁」と、10年の違い(接吻が1823年、抱擁が33年)で描かれたものが隣に並んでいる。



「復讐の誓い」と「密告の手紙」も。復讐の方は、よくわからないと思うが、黒いベールがまあそれは本物のようで綺麗。人物の心理描写が半端ではなくうまい。



なお、まるで3Dかと思ったのはヴィーナスのお尻。女の私でも触りたくなるくらい。


しかし、そこまで当時の人を魅了したアイエツも、いくらコンクールの入賞するほどの腕があったとはいえ、初期の作品はちょっとかわいい。うーん、若干人体のバランスが悪いかも?と思う作品もある。

さて、目玉の3つの「接吻」。「キス」とも呼べるが古式豊かに「接吻」と呼びたい。
ブレラ絵画館の最後の方の目玉作品であるが、それが3つあるとは知らなかった。なるほど調べると2つまでは出てくるが、3つは出てこない。
見比べると面白い。さて、まず、青い服と白い服のバージョンがある。
ちなみに、アイエツがこれらを描いたのはほとんど70歳で、若者が描いたものではない。おじいさんが描いたものである。おじいさんがこれだけロマンチックな、ロマンチシズムの代表作を描くのは信じられないとも思えるが、これだけ高名なアーティストであったということは相当持てただろうし、本人も年齢よりかなり若かったはず。
しかし、さらには政治的な意味も含まれているとのこと。
最初に描かれた(ブレラの作品)のは1859年はイタリア独立戦争の真っ最中で、フランス(青い服の女性)とイタリア(赤い服の男性)の密約を描いたものとのこと。
1861年版は女性の服が白に変わっているが、イタリア王国が成立し、国旗(白と赤、緑は、男性の袖口など)を暗示したものだそうだ。
67年版は再び女性の服が青になっているが、ドレスのでスカートのデザインが若干違うからか、微妙にバランスが変わってきているし、階段には白い布が落ちている。
もちろん影も違うし、左にいる人物の影も違う。



上から 1861年、1859年、1867年

どれが一番良いか、好きか。うーん、困るのだが、一番最初のブレラのものがいちばん緊張感があるような気もする。




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