(写真は中国・大理で出会ったかわいい子ども)
シュウシュウの季節
満足度 ★★★★★+おまけ★★
感動度 ★★★★★+おまけ★★
お勧め度 ★★★★★+おまけ★
色彩美 ★★★★☆
遊牧民生活の描き方★★★★★
話の展開 ★★★★★
1998 アメリカ
監督 ジョアン・チェン
キャスト ルールー(シュウシュウ)
ロプサン
ガオ・ジエ
シャン・チェン
リー・チチェン
ガオ・シャン 他
感想を記録するよりもう一度みたいと思わせる素晴らしい映画。
原題は『天浴』。『XIU XIU 』や『The Sent-Down Girl』、『シュウシュウの季節』などのタイトルを付けられているが、シュウシュウとかかわりあう中年のチベット人牧夫ラオジンの存在感を考えると、『天浴』が一番ふさわしいと感じる。
1975年 プロレタリア文化大革命末期の中国・四川省、成都に住む仕立て屋の娘シュウシュウ。
下放政策により辺境の地で中年のチベット人牧夫ラオジンと半年間 放牧生活を強いられる。高原の不住な生活。
ラオジンは若かりしこと、ある事件で男性のそのものを切り落とされていることが、後々になってこの話を自然に流れることも付け加えておきたい。
シュウシュウは帰ることを待ち望みながらも暖かに見守ってくれるラオジンと懸命に奥地の生活を送る。
半年後、軍から迎えは無い。
文化大革命は終止符を打ち、下放学生達は既に故郷に帰りはじめていた。そしてシュウシュウの存在は忘れられていた。
あせるシュウシュウ。
突然現れた、行商人の若い男に恋心を抱く。一方男はシュウシュウの体目当ての男に紹介、次々と違った男が高原のテントに通う。故郷を思い役人に縋るように男に身を委ねてしまい、堕落の一途をたどる。
愛する男に送り込まれた中年男は顔に赤いスカーフををかぶせ、女を道具のように扱った。
やがて妊娠。
シュウシュウは病院で騙されていたことと事故と偽って足を銃で打てば早く故郷に帰れることを知る。
シュウシュウはテントに戻り自分の足先をう撃とうとする。
できない・・・
シュウシュウは甘え続けていたラオジンに
「私にはできない。あなたしか頼めないのよ・・・」
と銃を渡す。
ラオジンは足を見据えて銃を向ける。
「待って・・・」
シュウシュウはお下げの三つ網をくくりなおし、赤いスカーフを取り出し、首に巻く。
先の見えないシュウシュウの未来に自分の置かれた身体的精神的不住を重ね合わせ、同時に押さえ込んでいたシュウシュウへの愛情は一気に爆発する。それはシュウシュウに対する思いやる心そのものでもあり、そういった表現しかすることのできない男の切なさは、シュウシュウを巡って二度ばかり靴を隠した感情の上昇とも共通点がある。
ラオジンはシュウシュウの胸をめがけて銃を撃つ。
以前にシュウシュウにわがままを言われた風呂(天浴)にシュウシュウを横たわらせ、銃の音が鳴り響く。
やがて冬。
雪が降り始め二人の姿は消えているが、風呂の際から赤いスカーフの端が見えていた。
悲しい・・・あまりにも悲しすぎる。
後半になってこの重い内容が作品を重厚且つ上質にする。
私の静かに流れ出る涙は止まらない。
シュウシュウの話は消して個人的なものではなく、多くの人々が悲しい運命をたどっていた。
日本人はプロレタリア文化大革命末期の裏の実態も知らずして、上野のパンダに喜んでいたことを思い出す。
シュウシュウやラオジンを追い詰め、悲劇の運命をたどる以外に道の無意一部とが甘いにも多い文化大革命って一体なんだったのだろうか・・・
釈然途しない歴史の流れをアメリカが上手くとらえた秀作。素晴らしい映画だった。
『この映画は中国で放映されたのだろうか』という興味と疑問点の残る作品でもあった。