記録だけ
2008年度 109冊目
『新潮日本文学アルバム 安部公房』
新潮日本文学アルバム 91
安部公房
株 新潮社
1994年4月1日発行
111ページ 1262円+税
久しぶりに安部公房氏の周りを彷徨う。
ああ、この感覚。
高校生の頃、この作家の小説にものめり込んだな。
彼のとぎすまされた感覚が、今再びよみがえる。
新聞に姿隠した浮浪者の路上の寝姿の写真と たった二行の光り輝く文をこどもに見せる。
こどもは、
「安部公房はすごいとは思うよ。でも、興味は無いな。」
たたみ込んで、
「お母さんが就活の際、好きな小説の記入欄に安部公房を書かなかったのは、正解だな。」
あはは・・・、そんなことも話してたっけ。
その昔 親方日の丸に近い企業に対しては、彼の作品は書けなかった。
無難な夢のある作品を記入して、見事パスってか。
馬鹿げた人生だな。
来年は二十巻の方を読んでみるとするか・・・。
分岐点をとうに越したこの年で読むと、また違った感覚にとらわれるだろうか。
楽しみだな。
安部公房氏にはレモンティをごちそうになったことがある。
楽しかったな・・・。
喫茶店内には安部公房スタジオの方々が多くいらっしゃって、
「先生、先生・・・。」
と、私たちのテーブルの周りで 頭を下げて挨拶されていた。
何だか体育界系の乗りで、一瞬だが安部公房のイメージが少しずれた些細な悲しみを覚えている。
公演と公演の中休みの出来事・・・。
不思議だったな。
いろいろとお話を聞かせていただいたが、関西と関東の観客の違いについて話されたことは、特に印象に残っている。
高校大学と 何度も何度も読んだ安部公房だが、そうだ、来年はもう一度ゆっくりと読んでみよう。
そう思わせる秋の夜長よ・・・。
時差のあがきは 今夜も続く・・・、乱鳥の戯言。