『近松浄瑠璃集上』より 「大経師昔暦 (だいきょうじ むかしごよみ)」 近松より門左衛門 岩波古典文学大系より
おさん・茂兵衛で有名な、 「大経師昔暦 (だいきょうじ むかしごよみ)」 を読む。
「大経師昔暦 」は、近松の人形浄瑠璃。
のちに歌舞伎化された。
天和3年(1683年)に京都で発生したおさん茂兵衛の姦通事件に取材したもの
(この事件は井原西鶴『好色五人女』(1686年刊行)巻三の題材にもなっている)。
近松作品の三姦通物の一つ
『鑓の権三重帷子』
『堀川波鼓』
『大経師昔暦』
登場人物
以春 大経師の主人
さん 以春の妻
茂兵衛 大経師手代
助右衛門 〃 手代
玉 〃 女中
赤松梅龍 玉の伯父
道順夫妻 さんの父母
東岸和尚
あらすじ
京の四条烏丸に門を構える暦の元締め大経師
来る丑年の新暦の売り出しに主の以春をはじめ番頭、手代衆達が目まぐるしく働いていた。
そこへ以春の妻おさんの母が訪ねてきて、実家で物入りが続き、利子の返済に父道順が困っているので、主に内緒で一貫目調達してくれないかとおさんに泣きつく。
おさんは、その事情を番頭の茂兵衛に話し、金策を頼みこむ。
茂兵衛は、旦那の印判をつけばすぐに用意できると安請け合いする。
茂兵衛はこっそり白紙に印判をつくが、それが番頭の助右衛門にみつかり、盗人の疑いをかけられ、問い詰められる。
その窮地に女中の玉が、実は私が頼んだことで、茂兵衛様に罪はないとかばう。
以前から玉に気のあった以春は、さらに立腹し茂兵衛を納屋に閉じ込める。
おさんは、玉に礼を言うため玉の寝所を訪れる。
そこで玉から、以春が夜毎夜毎、言い寄って忍んで来ると聞かされ、おさんは懲らしめのために寝所を代わってくれと頼み、夫が忍んで来るのを待ち構える。
一方、茂兵衛は自分を助けようとしてくれた玉に礼を言うため、玉の寝所へ忍び入る。
そこでおさんと茂兵衛は勘違いしたまま肌と肌を触れ合ってしまう。
以春の声に、二人はお互いの過ちに気づき、たちまち不義密通の濡れ衣を着せられ、二人の逃避行が始まる。
道中、たまたま出くわしたおさんの親道順夫婦から施しをもらい、ふたりは丹波の柏原に逃げのび、ひっそりと身を隠す。
家主の裏切りから追っ手が駆けつけ、二人はついに捕らえられてしまう。
京へ送り帰され、いよいよ処刑というその時に、道順が懇意にしていた菩提寺の東岸和尚が走りこんで来て、仏の名にかけておさんと茂兵衛の命を助けよと熱弁をふるう。
その声に群集はどよめき歓喜して、道順夫婦の喜びの声は尽きることなく、めでたくこの年の初暦を開き始めるのであった。
芝居では見たことのある 「大経師昔暦 (だいきょうじ むかしごよみ)」だが、小芝居では「おさん茂平」の演目の名で知られる。
小芝居では演歌があるようだが、詳しくは知らない。
地下松浄瑠璃の 「大経師昔暦 (だいきょうじ むかしごよみ)」では最後に『おさん茂平こよみ歌』が書きつけられている。
この部分は祭文にあたるようだが、「大経師昔暦 (だいきょうじ むかしごよみ)」という演目の名になったゆえんであろうと思う。
引き続き、近松作品を読み進めていきたい。
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