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82; 『地獄絵を旅する 残酷・餓鬼・病・死体 (別冊太陽 太陽の地図帖 20)』
加須屋誠
平凡社
2013-06-27
地獄とはどのような場所か?全国の「地獄絵」で見せる一冊。細かい情報も豊富で面白い!
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「地獄草紙」「餓鬼草紙」「病草紙」「北野天神縁起絵巻」や絵巻物や長岳寺(奈良)の絵解きで拝見させていただいた地獄絵の掛け軸などを思い出す。
本書はそれらのダイジェスト版の用で、一目瞭然。たいへん炭素に細切れに要点を記されている感じ。
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皆様、ご来場頂、見てくださいまして誠にありがとうございます。
データーベースより ▼
日本各地の「地獄」を紹介したムック本。地獄絵の名品を紹介するのがメインですが、東京のえんま堂マップがあったり、それを辛酸なめ子さんが巡ったり、地獄のイメージを生み出した恵心僧都源信の地元(奈良県の二上山の麓です)を紹介したりと、なかなか充実しています。冒頭に細野晴臣さんのインタビューが入っているのも豪華ですね。
説明文:「「地獄草紙」「餓鬼草紙」「病草紙」「北野天神縁起絵巻」など、地獄絵の名品をふんだんに紹介しつつ、恐ろしくも魅惑的な「地獄」の世界を旅する一冊。文=細野晴臣、辛酸なめ子ほか。」
本書で取り上げられているのは、「地獄草紙」「北野天神縁起絵巻」「聖衆来迎寺本六道絵」(すべて国宝)など。いずれも有名な地獄絵で、それぞれの一部を拡大し、時代ごとにどのように地獄が描かれてきたのかを伝えています。
その内容は、火炎・痛み・暴力・糞便・鳥獣・刃物・禁食など、人間を苦しめるありとあらゆるものが登場し、地獄に落ちた者たちを苛んでいます。説明を読むとただただグロテスクなんですが、古典的なタッチで描かれるとどこかユーモラスにも感じられます。庶民の前にこんな作品を吊るして絵解きしていたのですから、昔は地獄の存在がリアルだったでしょうし、より恐ろしいものだったでしょうね。
この他、身近に潜む餓鬼を描いた「餓鬼草紙」、ふたなりや肥満などの病気と考えられたものを描いた「病草紙」、美女の死体が次第に朽ち果てていく姿を描いた「九相図」なども紹介されています。日本人は昔から不思議なものを描き、見て来たんだと感心してしまうほどですw
また、奈良の矢田寺所蔵のものも紹介されていますし、長岳寺の北川和尚による絵解き講座が10ページにわたって掲載されているのも嬉しいですね。「三途の川は三通りの渡り方がある」など、意外と知らないことが多くてためになりました。
メモ代わりに書いておきますが、埼玉県春日部市にある浄土宗寺院「圓福寺」では、折りたためる3面形式の浮彫りの地獄絵「木彫閻魔王宮と八大地獄図」なんてものが現存しているのだとか!中興の光世上人による1700年くらいの作品で、他にも浮彫りの「木彫立体當麻曼荼羅」などもあるそうです。毎年4月の第1日曜日に開催される「圓福寺まつり」で公開されるとか。いつか観てみたいですね!
そんな有益なプチ情報なども掲載されていますし、地獄絵やえんま堂などに興味がある方は必読でしょう。面白かったです!
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