感想:七人の鬼ごっこ

2023-11-13 20:18:06 | ミステリ




七人の鬼ごっこ 三津田 信三 2011年作品



なんとなくホラー調のミステリが読みたくなって手に取ったのがこの本。



「いのちの電話」にかかってきた一本の電話。
人生に絶望したその男は自殺をほのめかして電話を切る。
居場所を特定した相談員たちが密かに駆け付けたが、
そこにいたはずの男は行方をくらましていた。
そして、男が直前に連絡を取っていた30年前の友人たちが次々と殺害されてゆく。




30年前に遊んだ「だるまさんがころんだ」にもとづいて起こる殺人事件。

各章にはさまれた幕間で「あの日」のだるまさんがころんだの情景が描写され、
幕間を重ねるごとに同じ文章が繰り返されるが、
その文末に少しずつ文章が付け足される形で何が起こったのか明かされていく。



事件のカギとなる当時の友人たちが揃って「あの日」の記憶を失っているのは
さすがに物語として都合がよすぎるだろう、と思わずにいられないが、
暗くなりかけた夕刻の田舎の描写を繰り返すことで
作品全体の蒙昧とした気怠い雰囲気を常に醸し出しているのがとてもいい。



捜査自体は全編を通じて行ってはいるものの、終盤の捜査で一気に情報が入り
その情報をもとにクライマックスの推理が行われる。

しかし、それまではサスペンス調で一貫していたのに
急に"推理小説"的な突飛な謎解きをコチョコチョ進めるのは
少しセコかったかな、とは思う。
全体に伏線を敷いておけば、さらに密度の高い作品になっていたかと思うと惜しい。

推理小説としての「犯人はだれか」という点において
消去法で考えながら読んでいたらかなり早い段階であっさり的中してしまったが
物語の組み立て自体がなかなかに骨太で面白かった。



粗も多いけれど、自分が読みたかった小説とマッチした作品に出会えて満足。
似たような作品をもういくつか読みたい。



満足度(星5個で満点)
文章   ★★★
プロット ★★★★
トリック ★★☆


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