推理大戦 似鳥 鶏 2021年作品
一日に3店舗で1冊ずつタイトル買いして、
そのうち2冊が同じ作者なんてことある……?
そのくらい、タイトルのダイレクトさが秀逸な似鳥鶏の作品。
~~あらすじ~~
無限の情報に基づいた完全の分析を行うAIの使い手。
思考と身体能力を数十倍に引き上げるクロックアッパー。
野生をも超える五感を用いた現場操作と状況再現の能力者。
相手のあらゆる嘘を見抜く魔眼の持ち主。
常識を超えた能力を持つ探偵たちが世界から集結し
日本の北海道で開催される聖遺物争奪ゲームに参戦する。
「あーFateのパクリねー」と言うのは簡単なのだけれど、
推理小説にチートバトルを持ち込んだ度胸と発想力は評価すべき。
前半はそれぞれの探偵が起こった事件を華麗に解決してその能力を強く印象付け、
聖遺物ゲームへ参戦する過程が描かれる。
そして、聖遺物ゲームの開始とともに発覚する殺人事件。
探偵たちは己の能力を駆使して解決を目指す。
前半に各探偵が奇妙な事件の数々を独自の能力を使って華麗に推理していく様は
いかにもチートものといった感じで読んでいてとても気持ちが良いのだけれど、
肝心の決戦がなんともがっかり。
強引などんでん返しありきで作られた物語のレールに乗せられたせいで
常識外れの能力がまるで生かせないまま終わってしまう。
結局、チートものって演繹的にどんどんインフレするのが面白いわけで
最初から真実が決まっている推理小説とは根本的に合わなかったな。
後半で「すべてを司る」的な能力者が出てきたのは面白かったのに
それすら生かしきれなかったのも残念。
作者本人が自信作と言っているところ申し訳ないのだけれど
前半の探偵集結で高めていく期待感とは裏腹に
登場人物が揃ってからの後半の決戦部分はまったく面白くなかった。
けれども、個性豊かなキャラクターは魅力的だし、軽めの文章は読みやすいし
軽妙なボケツッコミも楽しかった。
もちろん、意外な真相とそこへ至るための伏線という
推理小説としての組み立てはしっかりできているので
刺さる人には激烈に刺さる作品になっていることもまた確か。
こういう意欲作に挑む作家は大好きだ。
満足度(星5個で満点)
文章 ★★★☆
プロット ★★★
トリック ★★