阪口直人の「心にかける橋」

衆議院議員としての政治活動や、専門分野の平和構築活動、また、趣味や日常生活についてもメッセージを発信します。

「ベルリンの秋」

2006年11月17日 23時37分30秒 | 日常
 今回はベルリンにも立ち寄りました。

 私が「民主化支援」という分野に関わるきっかけ、それは、1989年11月9日、共産党独裁政権の打倒と民主化を求める人々が起こしたうねりによって、ベルリンの壁が崩壊するプロセスでした。人生の大きな転機を生み出したベルリンという街を知っておきたいと思い、コソボでの制憲議会選挙監視(2001年11月)や、ドイツでの妹の結婚式(2002年11月9日)の後に、友人を訪ねて滞在しました。

 3度目の今回も11月。春江一也氏が書いた「ベルリンの秋」の舞台を巡って歩きました。私は、前作『プラハの春』以降、春江氏の作品に心酔し、どちらも3回ずつ繰り返し読みました。「プラハの春」は、筆者が在チェコスロバキア大使館に勤務した経験をもとに、「プラハの春」と言われた1967年の民主化運動に伴って展開する人間ドラマを描いた作品です。人々の希望がソ連軍の軍事介入によって無残につぶされる過程が、日本人外交官と旧東ドイツの反体制活動家の女性との禁断の恋を交えて綴られています。

 一方、「ベルリンの秋」は、1969年からベルリンの壁崩壊までの約20年間を、東西ベルリンを中心に、モスクワ、日本、さらにアフリカのアンゴラやモザンビークまでも舞台として壮大に描いた本です。社会主義が崩壊するまでのプロセスを、人々の熱い思いや権力の恐ろしさともに克明に描きながらも、資本主義社会の哀しい現実にも触れ、広い意味で考えさせられる作品です。

 マルクス・レーニン主義によって生まれた共産党一党独裁が、いかに独善的で人間性を奪うシステムであったか。しかし、そんな中でも、前作「プラハの春」のカテリーナをはじめ、自由と尊厳を守るための闘いに身を捧げた人たちが大勢いたことに、何よりも勇気づけられました。「マルクス・レーニン主義はペテンなのだ!」と看破し、ソ連の近い将来の崩壊を歴史的必然! と断定する秘密警察「シタージ」のベーナー次官の言葉は、日本における政権交代の必然とオーバーラップして私の心に響きました。

 このシリーズは、私にとっては、プラハとベルリンを歩く特別なガイドブックでもあります。幼いシルビアと亮介が待ち合わせをしたカレル橋のフランシスコ・ザビエル像、そしてカテリーナが悲劇の死を遂げた旧市街広場に、時代に翻弄された彼女たちの面影を感じました。また、ベルリンでは、シルビアと亮介が再会したアレクサンダー広場や、ベーナー次官が非情な体制に挑む孤独な闘いの拠点にもなったペルガモン博物館、さらにベルリンの象徴であるブランデンブルグ門周辺を歩きながら、現実の町並みと交錯する登場人物の鼓動に思いを馳せました。おかげで町を歩く楽しみは何倍にもなったように思います。

 私も、このような作品をいつか書いてみたいものです。

 
 写真:ベルリン・ブランデンブルグ門を背景に(ちょっと暗くてごめんなさい)

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