阪口直人の「心にかける橋」

衆議院議員としての政治活動や、専門分野の平和構築活動、また、趣味や日常生活についてもメッセージを発信します。

民主化支援の戦略的実施についての考察-日本にとってもチャンスを生み出すために

2014年11月13日 15時03分35秒 | 政治

 先週の日曜日『国連フォーラム』において講演を行う機会がありました。テーマは民主化支援の戦略的実施について。私は日本にとって、周辺国の民主化-政治体制だけでなく経済の民主化を後押しすることは、大きなメリットがあると考えています。若い方々を中心に活発な議論ができたテーマだったので、私の問題提起を紹介したいと思います。

 なお、10月29日の衆議院外務委員会でも同様のテーマで質問をしています。

カンボジアへの選挙制度改革支援について外務委員会で質問 衆議院インターネットTV(10月29日) 


(1)公正な社会サービスの基盤は国民の意思が反映される政治
 日本政府は、民主化支援は『内政干渉』と受け取られることを憂慮し、当該国の政治体制の変更に直接つながるような分野に積極的に踏み込むことを避けてきた。国民の声が反映される政治・行政システムを機能させることは公平な社会サービスが実施する上での必要条件。自由公正な選挙を行う支援に日本として力を入れるべき。

(2)効果的な民主化支援の在り方
 民主化支援とは、選挙の実施だけに留まらない。公平で自由な生き方を選択することが可能で、恐怖によって人々の生活が支配されることがない国作りを行うための基盤作りにつながることが必要。従って、法整備支援やガバナンス支援などとセットで実施することで実効性が高まる。

(3)北京コンセンサスが変える民主化支援の在り方
 一方、中国は政治の自由は抑えつつ、経済開発を進める新しい開発モデルを構築しており、この『北京コンセンサス』へ支持が広がっている。その一方で、民主化すれば援助を得られ、経済的豊かを実現できるというこれまでのモデルは分岐点を迎えている。

(3)非民主国家と中国の親和性の高さ
 一般に、非民主国家は中国との親和性が高い。中国は大型インフラ整備をスピーディに、安いコストで実施するが、独裁政権にとっては好都合。一方、自由で公正な選挙が機能しない国家においては腐敗が生じやすく、環境への影響配慮、人道的配慮や文化や自然の多様性を尊重する発想は生まれにくい。従って、日本が持続可能な形でインフラ輸出を展開する上で、相手の政権が民主的で人々の意向を反映したものになれば、日本が公正な競争を行える環境の強化になり得る。

(4)民主化支援に必要な政治の強い意志
 行政による民主化支援には限界がある。政治が確固とした意思を持って行うことが必要。例えばインドネシアは、政治家のイニシアティブで民主化が進展した。ハビビ、ワヒド、メガワティ時代に民主化を推進する法律が相次いで制定されたことが民主化の流れを決定づけた。ミャンマーの民主化もアウンサンスーチー氏が中心に進めた民主化運動によって国民の意志、国際社会の共感が広く共有され、それを受け止めざるを得なかったテインセイン大統領の政治的意思によるものが大きいのではないか。

(5)民主主義を発展させるパートナーとしての日本を目指せ
 途上国に対する民主化支援を開発援助における日本の大きなテーマにして、広い意味での民主化支援を実施することで日本の影響力を高めるべき。特にアジアにおいては、押し付けではなくその国の文化、宗教、歴史を踏まえた民主主義の在り方を一緒に考えるスタンスで臨むことが重要。このスタンスで関わることで日本は欧米諸国に対する優位性も発揮し得る。

(6)ミャンマーへの民主化支援
 2012年1月にアウンサンスーチー氏と面談。日本による民主化支援を強く要望された。しかし日本は政権との関係に配慮するとともに、経済発展を重視し、民主化支援には積極的に踏み込むことなく現在に至っている。2015年末に予想される総選挙を1年後に控え、ミャンマーへの効果的な民主化支援の在り方を考える時期ではないか?

(7)カンボジアへの選挙制度改革支援を成功させなければならない意味
 カンボジアにおいては、昨年フンセン首相が安倍首相に対して選挙制度改革支援を依頼した。内政干渉とされずに民主化支援に踏み込む千載一遇のチャンス。カンボジアでの選挙制度改革支援を成功モデルにして、ミャンマーや他のアジア諸国への民主化支援に踏み出すべき。しかし、外務省は「あくまでもカンボジア側の要望に応じて」との姿勢。フンセン政権の本音は、不正が入り込む余地をなくしてしまう抜本的な改革は避けたいが、『日本のお墨付きを得た改革』によって国民と国際社会を納得させたいのでは?とも思える。UNTAC以降のカンボジア支援は日本の外交における成功物語のモデルであり、より進化させた選挙制度改革に貢献することはその集大成になり得る。国民の関心は不正の入り込む余地のない有権者登録にする抜本的改革。しかし日本政府は有権者教育などリスクの少ない技術的な支援を中心に行う意向。ここで積極的にイニシアティブを取る戦略で臨まなければ民主化支援を日本の開発援助の柱にするチャンスは再び得られないと危惧する。

(8)説得型アプローチの必要性
 従って、選挙制度改革に関わる主要アクターである政治家に会って民主化を進化させる意義を説得するアプローチを展開。カンボジアの与野党の政治家に説得型アプローチを試みて、抜本的な改革サポートを日本政府に要望するよう対話を継続している。



アウンサンスーチー氏と民主化支援について意見交換


外務委員会での質問(10月29日)


カンボジアのソー・ケーン副首相と選挙制度改革について意見交換


自由で公正な選挙を求める集会に集まったカンボジアの若者たち