阪口直人の「心にかける橋」

衆議院議員としての政治活動や、専門分野の平和構築活動、また、趣味や日常生活についてもメッセージを発信します。

テロとの闘いの本当の相手は?-後藤健二さん殺害報道に思う

2015年02月01日 12時07分28秒 | 政治

 今朝、後藤健二さんが殺害されたとの報道が流れました。『イスラム国』が作ったとされる映像を見ましたが、後藤さんが着ていたオレンジ色の服の上に置かれた生首は後藤さんに酷似しているように見えます。一方、斬首のシーンそのものはこの映像には映っておらず、私はこの映像が加工されたもので、後藤さんがまだ生きている可能性もある。0.1%でもその可能性を信じたいとの思いを捨てきれません。

 どちらにしてもこのようなテロ行為は断じて許すことはできず、国際社会は連携してテロと闘う強い意志を示さなくてはなりません。では、テロとの闘いの本当の相手は何か。私はテロリストを生み出す根本原因になっている不公平、不公正な社会構造そのものだと思います。

 私は『イスラム国』のようなテロ組織に持続可能性があるとは思えません。『イスラム国』を軍事的に壊滅させることは不可能ではないでしょう。しかし、その過程で殺された人々の存在が生み出す憎しみの連鎖が第二、第三のイスラム国を生む結果につながることは、米国によるイラク、アフガン攻撃で実証された通りだと思います。従って、グローバリゼーションが結果的に作り出す様々な不公平な現実を、持たざる側の視点を忘れずに是正するための努力の先頭に立つことが日本ができる最大のテロとの闘いだと思います。

 具体的には経済活動によって得た利益を社会の最も貧しい人々の自立にまわせるような制度の構築や、政治、行政の腐敗を是正するための法整備構築を含むガバナンス支援、選挙制度などを公正に機能させる民主化支援などに大きく踏み込むことが必要だと思っています。そしてこのような役割を担う人材を育てることです。

 テロには屈しない断固とした意志を示すことは重要ですが、相手を挑発するようなリーダーの言葉は日本人を攻撃する口実を与えることになりかねません。イスラム国自体、グローバル組織としてアメーバのように各地で増殖する組織でもあります。今後、あらゆる国で日本人がターゲットにされる可能性があることを危惧します。東京オリンピックもターゲットになる可能性が高いでしょう。

 紛争地域、戦闘地域の定義は困難です。(かつて小泉純一郎首相は「自衛隊が展開している地域は非戦闘地域だ」と答弁していました)。外務省が危険情報の対象にしている国は日本にいると全てが危ない場所であるように錯覚しますが、実際には現地の人々による日常の営みがあり、様々な人間関係の構築や現地情報によって危険を軽減することは可能です。そのようなギリギリの状況で「弱い立場の人々に寄り添いたい」という後藤さんの心情、私は共感します。一方、現地の人々の気持ちに添わない『人道援助』は、新たな混乱、問題の原因になる危険があります。『人道援助だから感謝される』発想は現実的ではありません。

 私自身が最初に活動した紛争地であるUNTAC(国連カンボジア暫定統治機構)統治下のカンボジアも、紛争4派によるパリ和平協定合意によって建前上は平和であることになっていましたが、実際にはポル・ポト派の離脱によって内戦状態にありました。『平和維持』活動のために派遣された自衛隊は、治安が日に日に悪化する中、日本人の命を守るどころか、自分たちの安全を確保することさえ他国に依存する状況でした。

 自分自身が再び紛争地域にいる、自分自身が後藤健二さんのような状況に遭遇することを今朝からイメージし続けています。自己責任での活動であることは前提とはいえ、実際に武装集団に拘束されていたら政府が国民の命を守るために最善を尽くして欲しいと感じるとは思います。そのために必要な法整備を行うこと、一方で、テロとの闘いはあくまでも平和的手段で行うこと、この二点をベストな形で行うための徹底的な国会の議論は不可欠だと思います。私自身が国会の議論に入れないことは無念の極みですが、国会議員であったことで制約があった現場との接点をより多く作り出し、少しでもこの議論に貢献したいと決意を新たにしています。



写真上:国連統治下のカンボジアで私が運転していた国連の車の上で遊ぶ子供たち。銃声や迫撃砲の爆音がやまないの中でも子供たちの日常生活は展開されていました。この子たちが大人になっていく過程を追うことができたのも大きな喜びでした。


 下記の写真も内戦状態のカンボジアでの日常のシーンの数々です。(1992~1993)


選挙人登録の様子を外から覗き込む子供たち


屋台の手伝いをする女の子


投票の秘密など、制憲議会選挙を自由公正に行うためのルールについての小冊子を子供に読む母親


車に上れず泣いていた小さな女の子の写真も撮りました!


朝、目を覚ました時に子供たちがいつものように迎えてくれる様子