博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『興亡の世界史18 大日本・満州帝国の遺産』

2010年06月06日 | 世界史書籍
姜尚中・玄武岩『興亡の世界史18 大日本・満州帝国の遺産』(講談社、2010年5月)

日本では日露戦争以後、満韓ブームが到来し、人々はフロンティアを求めて満州へと押し寄せた。一方、植民地朝鮮の人々にとっても満州は魅惑的なフロンティアであった。満州国では朝鮮人であっても高級官僚や軍人への道が開けていたのである。後の韓国大統領朴正煕も満州国で軍人としての栄達を求めた1人であった。一方、気鋭の官僚岸信介は満州国において計画・統制的経済政策を進行させようとしていた。

ということで、朴正煕と岸信介、この2人の満州国での経験が戦後の韓国・日本両国の政治にどのように影響していったのかを辿った本書ですが、岸信介の満州国時代の経験とその後の日本の政治への影響については、本書でも参考文献に挙がっている小林英夫『満州と自民党』(新潮新書、2005年)に既に詳述されおり、正直あんまり新味がありません。

となると、読みどころは朴正煕のパートとなるわけです。本書は彼の進めた防共政策・軍部独裁・重化学工業化・官僚主導による計画経済的資本主義政策・セマウル運動などはすべて満州国・朝鮮総督府の政策に倣ったものであり、戦後の彼の立身出世も満州国時代の人脈を生かしたものであることを指摘しています。

本書ではしばしば「帝国の鬼胎」という表現を用いていますが、あるいは戦後の日本・韓国のみならず、昨今の様子などを見てると中国も「鬼胎」の中に含めた方がいいのかもしれません。

ところで本書で笑ってしまったのは以下の部分。

朴正煕は三期目の大統領当選に成功するが、選挙による競争ではもはや政権維持は困難であった。この大統領選で朴正煕は「票を下さい、とお願いするのもこれが最後」だと約束するしかなかった。それは大統領選への出馬が最後になるということではなく、票を求めるような選挙を繰り返すつもりはないことを意味していた。すでに朴正煕には憲政中断のシナリオが描かれていたのである。 (本書256頁)

笑っちゃいかんところなんでしょうが、客観的にはギャグにしか読み取れんよな(^^;)
コメント (3)
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