博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『中国映画のみかた』

2010年07月25日 | 中国学書籍
応雄編著『中国映画のみかた』(大修館書店あじあぶっくす、2010年7月)

日本人にとってノスタルジーの対象であり、また現代中国社会を写す鑑として見られてきた中国映画。でも一旦こんな見方から離れてみようということで、日本在住の中国人研究者の論考を集めたのが本書。

本書で面白かったのは張芸謀(チャン・イーモウ)に対するツッコミ。

○張芸謀映画でよくある見せ物としての女性の身体表象(例:『王妃の紋章』での鞏俐(コン・リー)のバストアップ)や東洋的な記号の生産は、視覚的効果を狙ったにすぎず、政治的な狙いなどない。……要するに単なる監督の趣味ってことですね(^^;)
○真のイーモウ・ガールは、年寄り役など不様な役柄もやった鞏俐のみ。きれいな所しか撮ってもらってない章子怡(チャン・ツーイー)など論外。

あとは、

○『内モンゴルの春』が『内モンゴル人民の勝利』として作り直された諸々の事情。
○大陸で正月映画というジャンルが登場したのは90年代半ば以降と、意外と歴史が浅い。
○『山の郵便配達』は中国では全く注目されず、日本で脚光を浴びた作品。以後、同作の監督霍建起の作品は日本市場を意識した作品づくりをせざるを得なくなった。

といったあたりでしょうか。『内モンゴルの春』については、1947年の内モンゴル解放を描いた作品で、1950年に公開されたものの、モンゴル人民が共産党と協力して国民党と結ぶモンゴルの「王爺」を倒すという展開が問題視され、上映禁止措置を取られた後、シナリオを大幅に変更して『内モンゴル人民の勝利』として作り直された作品。

周恩来・郭沫若をはじめとするお偉方が集まって会議を開き、直々に作品の問題点を指導したということで、当局が少数民族に関わる問題に対しては妥協をしなかった例であるととされていますが、これは現代でもあまり状況が変わってません…… 歴史ドラマの検閲でも少数民族というか漢族以外の民族(例えば匈奴やウイグルなど)が関わると、途端に指導が入って数年間のお蔵入りを余儀なくされたりしますし。
コメント (2)
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