はちみつと青い花 No.2

飛び去っていく毎日の記録。

グレイソン・ペリー著『男らしさの終焉』

2024年04月08日 | 
2024/04/08


著者はイギリスのアーティストであり
キャスターでもあるグレイソン・ペリー。

彼は「トランスヴェスタイト」でもあります。

私は初めてこの言葉を知ったのですが
「トランスヴェスタイト」とは異性装者のこと。
自らの性役割に属するとされる服装をしないこと。

つまり彼は生物学的には男性ですが
女性の服装もする。

ネットを検索すると
ペリーがおじさん的風貌ながら
かわいいドレスやスカートを着た写真が
出てきます。

上のインタビュー記事もおもしろいですよ。↑

ですが彼はゲイというわけではないらしく
女性と結婚しているのです。

彼が女性の服装を好み
女性の服装をする中で見えてきたものが
あったことは確かなようです。

 
とても興味深い本でした。
イラストもおもしろくて印象的。

まず「デフォルトマン」という言葉が出てくる。
「デフォルト」とは「通常」とか「標準」の意味。

〈白人、ミドルクラス、異性愛の人物で
それはたいてい中年男性で権力を持った一握りの人々を 
デフォルトマンと呼ぶのだ。〉

社会のルールはデフォルトマンのルールで動いている。

客観は男性の主観

〈デフォルトマンたちは自分の感情的でバイアスの入った意見を
「理性的」で考え抜かれていて「誰より冷静」なものとして広めてきた。〉
 
〈男性性のイデオロギーが人々の常識に混ざることで
その姿が見えなくなるプロセスは
ロラン・バルトによって「名称末梢」
(常識とすることで言説の持つ意味を隠ぺいすること)
と名付けられた〉(p.51)

〈白人男性の権力は「名称末梢」されたのち
白人男性以外のすべてを評価するアイデンティティ
だとみなされてきた。
彼らは無数の特権が与えられていたことに気づいていない。〉
(p.54)


世の中の標準とされるものは
一部の男性が決めた標準なのですが
それがあまりにも一般的で空気のような
ものであるために
まるでないものと感じてしまうのです。

この「デフォルトマン」という言葉を読むたびに
私は日本の政治家たちの顔を
思い浮かべてしまうのです…。


男性の支配欲、権力欲。

〈男性と話していると「得点競争」が気になってくる。
会話はカードゲームに似ている。
他人をぶちのめすために切り札を持っていたいと
男性なら誰でも考えているのだ。
支配しようとしたり感銘を与えたいと思うのは男性の中核〉


著者は書いています。

〈暴力犯罪の90%は男性によるものだ。
この統計だけでも、政府はジェンダーを
政策の中心に置いてもいいかもしれない。〉(P.108 )

刑務所の収容者の95%は男性だ。
彼らが犯罪全体の75%をおこなっている。

〈暴力は若者がギャングから学ぶものではないし
ましてや学校で覚えるものでもない。
深いレベルでは自分の家で知るのだ〉

犯罪を犯すのはなぜ男性が多いのか。
暴力をふるうのはなぜ男性が多いのか。

私も昔から疑問に思っていて
ニュースで殺人事件やその他の犯罪を知るたびに
なぜ犯人はいつも男なのだろう?
と思っていました。


「深いレベルでは(暴力)は自分の家で知るのだ」という言葉。

著者は母親の再婚相手(継父)に
子どもの時から暴力を振るわれていました。

日本の家庭ではどうなんでしょうか。

子ども同士、友だち関係
学校の先輩後輩の上下関係のなかで
知ることも多いのではと思ったりします。

〈中等学校の男子生徒にアンケートを取ったところ
最も恐れているのは嘲笑されること。
男らしさは命にかかわる重荷なのだ。〉


しかし、男性が暴力的なのは
生物学的なものなのか
暴力をよしとする社会通念があるからなのか。

つまり、相手を打ちのめす男こそ
「男らしい」と思われるのか…。

ヒーロー戦士の漫画や映画を見ると
暴力が問題を解決する方法として
描かれていることがあります。

それに対して
〈若者の犯罪者たちを支援する慈善団体は
「男らしさは、個人の成長と発展を妨げ、
負の結果をもたらす可能性がある」。
暴力につながりかねない男性に対する固定観念や不安に、
犯罪者が抵抗できるようにサポートしている。〉
ということです。(p.112)


男性の中には
男らしくない感情を持ってはいけないと教わったり
自分の正直な感情がわからない場合がある。

しかし
〈私たちが他者と良好な関係を築くには
本当の自分でいなくてはならない。
自分の感情をよく理解し、
その感情が伝わる態度を取る必要がある。〉


〈心理療法士のジェリー・ハイドに
「男らしさとは何ですか」と質問したら、
彼はためらうことなく「優しさ」と答えた。
 穏やかな男性の優しさは非常に男性的なのである。
穏やかな男性は、何かを押しつぶす力を
肉体的にも感情的にも備えていても、
それは使わずに愛と優しさを選ぶ強さがあるのだ。〉
(p.191)

現代版の男性ロールモデルが
あらゆるレベルで足りないことが問題になっている
と書いています。

その中でも新しい男性のロールモデルとして
バラク・オバマは男性として素晴らしい人物だと
書かれています。

ディビッド・アッテンボロー(イギリスの動物学者)  
クリス・バッカム(イギリスの動物学者) 
ディビッド・ボウイ
ディビット・ベッカム
などの名もあげられています。

日本人だったら誰がロールモデルになれるかな?
大谷翔平君などはどうかしら。


最後に「男性の権利」として
上げているものを書いておきます。

・傷ついていい権利
・弱くなる権利
・間違える権利
・直感で動く権利
・わからないと言える権利
・気まぐれでいい権利
・柔軟でいる権利
・これらを恥ずかしがらない権利    
(p.197)




コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする