顎鬚仙人残日録

日残りて昏るるに未だ遠し…

秋の七草…万葉集で詠まれた歌

2024年10月23日 | 季節の花



秋の七草は、今から約1300年前に編纂された万葉集にある山上憶良(やまのうえのおくら)の和歌2首がもとになり、後世に知られるようになったといわれます。

    秋の野に 咲きたる花を 指(および)折り 
        かき数(かぞ)ふれば 七種(ななくさ)の花
    ※指のことを古語では「および」といいました。
                  巻8の1537  山上憶良

    萩の花 尾花葛花 なでしこの花 
        女郎花また藤袴 朝貌(あさがお)の花
                  巻8の1538  山上憶良 

凄まじい夏の暑さの余韻もやっと覚めて秋真っ盛り…万葉の時代に思いを馳せて、秋の七草の写真を在庫から探し出し、万葉集で詠まれた七草の歌と一緒に並べてみました。


萩の花



萩の花は万葉集で詠まれた一番多い花で141首もあるのは、どこにでも手軽に眼にする花だったからかもしれません。マメ科の落葉低木、花と実を見ればマメ科というのが納得できます。宮城野萩、丸葉萩などいろんな種類がありますが、秋の七草で詠まれたのは「ヤマハギ(山萩)」という説が多いようです。

    我が宿の 一群萩を 思ふ子に
        見せずほとほと 散らしつるかも   大伴家持 巻8-1565

    ※私の家の一群れの萩を恋しい人に見せないうちにあやうく散らしてしまうところでした。
    ※ほとほと:もう少しで(…しそうである)

この歌は巻8-1564に載っている日置長枝娘子(へきのながえおとめ)の歌に対する大友家持(おおとものながもち)の返歌とされています。

  秋づけば 尾花が上に 置く露の
      消ぬべくも我は 思ほゆるかも   日置長枝娘子 巻8-1564

   ※秋らしくなると尾花の上の露のように、身も心も消えてしまいそうなほどあなたを思っています。

このような恋の歌のやり取りは「相聞歌」とよばれ、万葉集全体の約半数を占めています。今放映中の大河ドラマ「光の君へ」は、万葉の時代より約300年後の平安の貴族生活を描いていますが、やはり「相聞歌」が出てきました。
宮廷文化が熟したこれらの時代には、一夫多妻や通い婚が認められ、恋愛は物語や和歌の題材として頻繁に取り上げられていました。貞操観念も厳しくなく恋愛に対するおおらかな時代であったと言えるかもしれません。


尾花 



尾花はススキのことで、尻尾のような花穂の形からよばれ、茅(かや)、萱(かや)とも呼ばれ41首も載っています。

   人皆は 萩を秋と言ふ よし我は
        尾花が末を 秋とは言はむ    作者不詳 巻10-2110

   ※人は皆、萩こそ秋の花だという、いいや私は尾花の穂先こそもっとも秋らしい  といいたい。

万葉の時代にも大多数の意見に逆らって自分の意思を述べる軟骨漢がいたようです。


葛花



葛はマメ科クズ属の蔓性植物で、荒地や廃屋などすさまじい繁殖力で蔓延っているので、現在では歌のイメージには程遠いものがありますが、根は葛根湯など薬用、また葛粉(くずこ)として使われます。21首の歌が詠まれています。

    真葛延ふ 夏野の繁く かく恋ひば
        まことわが命 常ならめやも    作者未詳 巻10-1985

    ※真葛の蔓延る夏野のようにこれほど恋い焦がれたなら、本当に私の命はどうかなってしまうかもしれな

なでしこの花



七草の撫子の花は、「ヤマトナデシコ(大和撫子)」とよばれ日本女性の美しさをたたえるときに使われる「カワラナデシコ(河原撫子)」のことです。本州以西に自生するお馴染みの植物ですが、最近では自然破壊などで減少しているそうです。
万葉集掲載の「撫子の花」は26首、そのうち11首は万葉集編纂の中心人物とされる大伴家持の恋の歌です。

    朝ごとに 我が見る宿の なでしこの
          花にも君は ありこせぬかも   笠女郎 巻8-1616

     ※私が毎朝庭で見るナデシコの花があなたであったら、毎日顔を見ることができるのに…

笠女郎(かさのいらつめ)が大伴家持(おおとものやかもち)に贈った歌で、家持は、正妻や妾の他にも、何人かの女性との間に恋のやり取りがあり、交わした相聞歌が万葉集に多く載っています。女性にモテた平安のプレーボーイ家持に笠女郎が出した歌は29首、でも返された歌はたった2首だったと伝わります。

女郎花



14首詠まれたおみなえし(女郎花)は、昭和の野山でよく見かけましたが、最近では園芸店で購入して庭に植えている方も多くなりました。
「女郎」を意味する「オミナ」と、「圧(へ)す」という意味の「エシ」から、美人を圧倒するほど美しいという命名由来説があります。

    をみなへし 咲きたる野辺を 行き巡り
       君を思ひ出 たもとほり来ぬ  大伴宿禰池主  巻17-3944

     ※女郎花の咲いている野辺をめぐり歩きながら、あなたを思い出してはあちこちと女郎花を求めてさまよって来ました。
      ※たもとほる:廻(めぐ)って行く 行きつ戻りつする

大伴宿禰池主(おほとものすくねいけぬし)は、大伴家持の親族で越中国守として家持が赴任した地に、越中掾として在任しており互いに歌を詠みあった仲でした。この歌も着任後に催した宴の主人家持が詠んだ歌に対する返歌とされます。

藤袴



フジバカマ(藤袴)の万葉集の歌は冒頭の1首だけです。

    萩の花 尾花葛花 なでしこの花 
        女郎花また藤袴 朝貌(あさがお)の花  
                     山上憶良 巻8の1538 

フジバカマの葉には桜餅を思わせるような芳香があり、平安時代の貴族の女性は乾燥した藤袴の葉を入れた匂い袋を身に付け香りを纏ったそうです。

朝貌の花



万葉の時代には朝に咲くきれいな花を朝貌の花と詠んだようで、現在のキキョウ(桔梗)のことだとする説が有力です。5首詠まれています。

    展転(こいまろ)び 恋ひは死ぬとも いちしろく
          色には出でじ 朝貌の花  作者未詳  巻10-2274

    ※転げまわるほど苦しむ恋で死んでしまおうとも、はっきりと顔には出しません、朝顔の花のようには。
     ※展転(こいまろ)び:転げまわること  いちしろく:はっきりと(古語)

ところで万葉集の作者不詳の歌は約半分もあります。
7世紀から8世紀後半にかけて朝廷によって収集されてきた歌を、大伴家持が中心になって約4500首を20巻にまとめた万葉集には、天皇や皇族、貴族だけでなく、防人(さきもり)や農民まで、幅広い階層の人々が詠んだ歌が収められているとされています。しかし当時の識字率は5%という説もあるので、恐らく作者不詳の歌は、下級の貴族や官人、僧侶など身分が低くても文字の書ける限られた階層の人たちの歌だったのではないでしょうか。
いずれにしても1300年以上前の我らが祖先の、いまよりもずっと激しい恋の歌に圧倒されてしまいます。

一気に季節が進む…身の回りの秋の気配

2024年10月11日 | 季節の花
秋の長雨が数日続き、あの殺人的な夏の残像からやっと解放された気がしました。人間は何とも我儘なもので、今朝は寒いなぁと愚痴ってしまいました。


秋を告げる清楚なシュウカイドウ(秋海棠)は、中国などに自生していた山野草で、園芸種として渡来し日本各地に定着した帰化植物です。春咲くカイドウ(海棠)に似た美しい花を咲かせるので付いた中国名をそのままに音読みにして和名にしました。


同じ株に雄花と雌花がある雌雄異花同株で、上に向かって花が開いているのが雄花、垂れ下がってまだ開いてないのが雌花です。
一緒に写っている花はアカミズヒキ(赤水引)、祝儀などに使われる紅白の飾り紐に似ているので名付けられました。


秋の花で好みのホトトギス(杜鵑草)、鳥のホトトギス(杜鵑)の胸の模様のような斑点が花についていることから名前が付き、俳句などでは油点草という名で詠まれることもあります。ホトトギスのイラストは、サントリー「日本の鳥百科」よりお借りしました


初秋に咲くヒマワリとして最近人気のシロタエヒマワリ(白妙向日葵)がまだ咲いていました。原産国のアメリカではsilverleaf sunflower、直訳して銀葉ヒマワリともよばれます。


コスモス(秋桜)も名前のように秋を代表していますが、原産地はメキシコで明治時代に渡来した外来種というのを最近知りました。


偕楽園公園に咲いていたヒヨドリバナ(鵯花)、鳥のヒヨドリ(鵯)が鳴く頃に咲くという命名説が一般的です。


こちらもヒヨドリバナ属で万葉の時代から親しまれてきた秋の七草、フジバカマ(藤袴)です。葉に桜餅を思わせるような芳香があるという情報で試してみたら微かにそのような匂いがしました。平安時代の貴族の女性は乾燥した藤袴の葉を入れた匂い袋を身に付け香りを纏ったそうです。


偕楽園公園で咲いていたノハラアザミ(野原薊)です。


アキノタムラソウ(秋の田村草)はシソ科アキギリ属、同じ属で春に咲くハルノタムラソウもありますが、どちらも命名諸説の真偽は不明のようです。


この時期山野で目にするアキギリ属の総本家、キバナアキギリ(黄花秋桐)です。アキギリ属の属名は英語ではSarvia、まさしくサルビアそっくりです。


ワレモコウ(吾亦紅)も公園の一角に毎年顔を出してくれます。地味な花ですがカラオケでよく歌った杉本真人のメロディーが浮かんできます。


北米原産のヨウシュヤマゴボウ(洋種山牛蒡)は大きくなる多年草で、空き地などに繁茂しています。ブドウのような実ですが有毒で、果実や根の誤食事例が結構あるそうです。


小さな実がぶら下がっているのはスズメウリ(雀瓜)です。果実は熟すと灰白色になりますがカラスウリ(烏瓜)と比べるとスズメの名の通り直径1〜2cmの可愛い球形です。


偕楽園公園の旧桜川で見つけたアキアカネ(秋茜)、「夕焼け♪小焼け~の」と親しまれたいわゆるアカトンボですが、農薬などの影響で個体数は激減しているのが現状です。


旧桜川で見つけた鯉の昼寝でしょうか、倒木の陰の凹みに三尾揃って休んでいました。厳冬の水中でじっと動かずに春を待つ準備はできているようでした。

いま野に咲いている花…どんな実が生る?

2024年09月11日 | 季節の花
朝晩が涼しくなりやっと酷暑もひと段落、初秋を迎えた身の回りではいろんな野の花が目に付くようになりました。いま咲いているこの花たちは数か月後にはどんな実が?…在庫写真を探してみました。

センニンソウ(仙人草)

センニンソウ(仙人草)はキンポウゲ科センニンソウ属、学名:Clematis ternifloraとあるようにクレマチスの仲間です。


十字型に開いた4枚の白い花弁状のものは萼片で、雄しべが数多く並んで芳香を放っている姿は上品ですが、全草が有毒で葉や茎の汁に触れると皮膚炎を惹き起すこともあるそうです。そのため「ウマクワズ(馬食わず)」 「ウシノハコボレ(牛の歯毀れ)」ともよばれています。


さてセンニンソウの名前ですが、花が咲いた後の実にヒゲのような綿毛がつき、それが仙人のヒゲにみえるので付いたとされます。この綿毛で風に乗り遠くまで飛んで行って子孫を殖やします。
顎鬚仙人としては何とも親しみを感じてしまう名前の植物です。


クサギ木(臭)

クサギ木(臭)は、葉や枝を傷つけた時に独特の臭いがするので命名されましたが、花は芳香がします。日本全国に分布するシソ科クサギ属の落葉低木です。赤い萼の中から花が飛び出して咲く様子は賑やかでなかなか豪華な花です。


このクサギの臭さは茹でると消えるため若葉は山菜として食用にされるそうです。また万葉の時代からクサギを焼いた灰で色付けした「黒酒(くろき)」は宮中の祭祀に欠かせないものでした。

天地と久しきまでに万代に仕へ奉らむ黒酒白酒を   
智奴王 (万葉集 巻19-4275)


花が終わると赤い萼は星型に開き濃い青色のきれいな実を付けます。この実は古くから青色の染料に使用され、藍以外で青に染まる唯一の植物ともいわれます。


カラスウリ(烏瓜)

カラスウリ(烏瓜)の花は夜暗くなってから咲きます。ずいぶん前ですが懐中電灯持参でストロボ撮影した写真では、花弁の縁が糸状に裂けてレースのように見える白い5弁の花…、繊細、妖麗、まさに自然の神秘を見る思いです。

通常目にするのは、夜が明けて萎んだこの花です。
真夜中にこんな艶やかな花を咲かせる理由は、夜行性のスズメガを呼び寄せて受粉させるためだとされていますが、自然界の営みの奥深さにいつも驚かされます。

やがてウリ科の真っ赤な実がぶら下がり、晩秋の野山ではいちだんと目立ちます。未熟な緑色の実は、イノシシの子供の背模様に似ているのでウリボウとよばれています。

クズ(葛)

クズ(葛)は、荒れた土地や廃屋を覆い尽くして蔓延っているので、秋の七草なのに現在ではあまりイメージはよくありませんが、マメ科の花は大きくて見応えあります。若かりし頃の飲み会では、よくこの新芽を天ぷらにしたのを思い出します。

マメ科クズ属のつる性多年草なので、秋にはマメ科独特の実が生ります。この根からは食材の葛󠄀粉や漢方薬「葛根湯」が作られるのはよく知られていますが、本くず粉は生産量が少なく高価なため、現在市販されている葛粉はほとんど小麦や芋類のデンプンで作られているそうです。

ヤブラン(藪蘭)

日本各地で普通に見られるヤブラン(藪蘭)は常緑性の多年草で、一年中同じ姿を保ち、丈夫で手のかからない植物のため、古くから緑化の植栽としても広く利用されています。


実は緑色か黒色に変わり、秋が深まるごとに一つ一つ実を落としていきます。

ヤブランは万葉集でも古名の山菅(やますげ)で、13首詠まれています。

ぬばたまの黒髪山の山菅に 小雨降りしきしくしく思ほゆ
柿本人麻呂   万葉集 巻11-2456


見慣れている植物も調べてみると、我が先人たちの暮らしや歴史にも結び付くのでいろいろと空想も広がり、毎日が連休の仙人を飽きさせることはありません。

酷暑を耐えた花…やっと秋の気配が

2024年08月29日 | 季節の花
あまりにも暑い日が続いて花に目を向ける余裕もない日々でした。やっと秋の気配を探して山の中の道をドライブしてみましたが、目に付いたのはタマアジサイ(玉紫陽花)だけでした。


退避所が続く狭い道路わきに群生がありました。


蕾は大きな丸い玉状で、パラリとはじけるように開くと両性花と装飾花からなる花が現れます。


つぼみから花への大きな変化が楽しめる紫陽花です。

エアコンの車内を出て山中に入る気にもなれず仕方がないので、我が狭庭で暑さに耐えて健気に咲いている花を探しました。


ユーパトリウムはキク科ヒヨドリバナ属で秋の七草フジバカマの仲間、青色フジバカマという和名もあります。南米原産でも耐寒性があり我が家では増えすぎて困っています。


まだ数本残って咲いていたミソハギ(禊萩)、最近まで味噌萩だと思っていました。萩に似ていて禊に使ったのが名の由来ですが、萩ではなくサルスベリの仲間です。


垂れ下がった枝を近くで撮れました。サルスベリ(百日紅)は、ミソハギ科サルスベリ属の落葉小高木です。百日紅といわれるだけあって、花期が長く次々と花を咲かせるので実と花が同居しています。


紫色の葉を愛でる観葉植物、ムラサキゴテン(紫御殿)はムラサキツユクサの仲間でセトクレアセアの名でも知られています。


フウセントウワタ(風船唐綿)は、やがて大きく奇怪な実がなり、それが弾けると綿のような実が飛び立っていきます。甘い香りに誘われて蟻やアブラムシがいつも付いています。
この植物の一生は、拙ブログ「フウセントウワタ(風船唐綿)…風船の中に綿毛」で紹介したことがあります。


ベゴニアにはいろんな種類があります。間もなく咲き始めるシュウカイドウの仲間というのが良く分かります。これは木立ベゴニア・リッチモンデンシスでしょうか、googleレンズで調べました。


ペチュニア類も種類が多く覚えきれませんが、それをサントリーが品種改良したのがサフィニアで、この花はgoogleレンズで検索すると「暑さに強いサフィニアサマー」と出てきました。


こちらはペチュニアの仲間カリブラコラ属のスーパーベル・ハニーヨーグルトとgoogleレンズが教えてくれました。最近このアプリが大体正解率80%くらいで教えてくれるのでとても重宝しています。


ショウジョウソウ(猩々草)は最上部の葉が赤いのを伝説の動物にたとえました。猩々はマントヒヒに似て赤い顔をした動物で酒が大好き、よく仲間同士で「あいつは猩々だ」とか言いましたが、最近では通じなくなりました。
偕楽園公園では、光圀公が園内の丸山に陶淵明を偲んだ堂を建て壁に猩々の絵を掲げたことから、近くに猩々梅林、猩々橋などの名前が付いています。


花期過ぎてヨレヨレのタマスダレ(玉簾)、玉のような白い花と簾のような細い葉が名前の由来ですが、なんともしっくりきません。


セイヨウニンジンボク(西洋人参木)の実がびっしり付いていました。葉の形が朝鮮人参に似ているのが命名由来とか、そのせいか実はローマ時代から薬用として、また料理の香料などに利用されているそうです。

年々夏の暑さの新記録が出ています。7月から8月20日までの累積猛暑日地点数は、今年度は7572地点に達し最も暑かった去年の5378地点を大きく上回る結果となりました。
我が子孫たちはやがて気温40度や45度に対応できるように進化するのでしょうか、南極や氷河の氷が解けて縄文海進がまた現れるのでしょうか。
我ら生産性のない年金老人は、個人で出来る地球温暖化対策のほんの小さな取り組みを守ることしかできませんが…。

梅雨どきの花…ネムの花など

2024年07月03日 | 季節の花
公園の林の中にギボウシ(擬宝珠)の蕾を見つけました。

芽やつぼみを覆って花を保護する苞が大きく、花のイメージからかけ離れているので、一瞬名前が出ませんでした。

やがてこの苞と苞の間が長く伸びて見慣れた花になります。花になると蕾を抱えていた苞はほとんど目立たなくなります。

ギボウシの名は、蕾状態の花序の先端が、寺院や橋などの欄干の飾りの装飾「擬宝珠(ぎぼし)」に似ていることから付きました。(異説あり)

ギボウシの仲間は20種以上ありますが、この辺の山野に自生するオオバギボウシの新芽は特に山菜として珍重され、季節には里の物産店でも並んでいます。


庭のハンゲショウ(半夏生)はすでに花期を過ぎています。

季節の移り変わりの言葉として使われてきた「半夏生」は、二十四節気の夏至をさらに細かく分けた雑節の一つですが、今ではカラスビシャク(烏柄杓))という薬草が生える頃の季節や、半夏生(別名カタシログサ (片白草))という薬草の葉が半分白くなる頃の季節といわれています。


写真はこの後者の説の「半夏生」、ドクダミ科ハンゲショウ属の多年草です。これは葉の半分くらいが化粧したように白くなることから「半化粧」とも書かれ、こちらの方が親しみやすいかもしれません。白くなるのは葉の付け根の方からですが、同じように葉が白くなるマタタビ(木天蓼)は葉の先端からです。


花期が終わると、葉が目立つように白くなって昆虫を呼び寄せる役目が終わるので、再び緑色になりますが、これはマタタビと同じです。写真は以前に撮ったマタタビの白くなった葉です。


象潟や雨に西施がねぶの花  芭蕉 (奥の細道)

※西施とは中国の春秋時代に、戦いに敗れたため敵の王に献上されたという絶世の美女です。


ネム(合歓)の木はマメ科ネムノキ属の落葉高木で全国の山地や河岸に生え、ふわっとした淡い紅色の繊細な花は初夏を告げる代表的な花です。

花びらは見えず紅い刷毛のようなオシベと少し長めの白いメシベだけで花をかたどり、根元の緑色の筒状のものが花弁と萼です。

一つの花は30数本のオシベ、1~数本のメシベで構成され、これが10数個集まって1個の花のように見えます。真ん中に背の高い花(頂生花)があり、そこだけに蜜が含まれていて甘い香りを放ちます。

まず、つぼみの先から寝起きのようなじゃもじゃ髪のオシベが出てきて、やがて美容院に行ったようにストレート髪の花の形になってきます。

秋になると実が生りますが、マメ科独特の形の実が頂生花だけに付きます。

茨城県立歴史館の蓮池では、今年はハスの花がいつもより数少なく葉も疎らな生え方です。

この蓮池には、もともと千葉県の遺跡から発掘された2000年前の古代ハスの種を発芽させた大賀ハスが植えられましたが、その後在来種との交配が進んで純粋の大賀ハスとはいえなくなってしまったそうです。

ハスの花の寿命は短く約4日、いちばんの見頃は2日目しかも半開き位の状態の早朝がいいそうなので、なかなか根性がないと撮れません。

疎らな蓮が良かったのか白鳥の親子がくつろげる場所ができていました。親のいうことを素直に聞いている子供たち、いいですねぇ。そっぽを向いている子もいますが…