青山花しょうぶ園(城里町)に行って来ました。地元の愛好家のグループが保存会を立ち上げ休耕田に苗を植え約70種8000本の花しょうぶ園を開いたという情報を得たからです。
どこもそうですが、花しょうぶ類は群生を撮ってもなぜか華々しさが出ないというのが個人の感想です。
農村風景の中の手作り感いっぱいの花しょうぶ園は、それはそれで好感が持てましたが…。
ところで一番知られている「あやめ」、そして「花しょうぶ」との関係について調べてみました。
近在では有名な水郷潮来あやめ祭りでも植えられているのは、「花しょうぶ」です。
潮来市のホームページにも「約500種100万株のあやめ(花菖蒲)が水郷潮来あやめ園に植えられており…」と出ています。つまり「あやめ」と「花しょうぶ」、そんなに区別しないで総称として「あやめ」で通すようです。Wikipediaにも「アヤメの仲間に含まれる厳密なハナショウブも「アヤメ」の名称で広く呼ばれている。(あやめ園、あやめ祭り、自治体の花名など)」と載っています。
水戸黄門こと水戸藩2代藩主徳川光圀公が晩年隠居した常陸太田市の西山荘入り口の西山の里桃源も「花しょうぶ」で知られていますが、10年以上前は「あやめ」として通っており、いつの頃からか「花しょうぶ」に変わりました。
どちらもアヤメ科アヤメ属の植物でその違いがよく話題になるのは下記の3種です。
一番多い「花しょうぶ(菖蒲)」は湿地などに生育し、紫色の他にピンク、白、ブルーなどいろんな色があり、花弁の根元の模様は黄色です。
「あやめ(菖蒲、文目、綾目)」は、山地や草原など乾燥した地を好むことから生育場所が他と違います。花弁の根元に網目模様があることから、文目(あやめ)とよばれるようになったといわれています。
「かきつばた(燕子花、杜若)」は湿地や水の中でも生育し、花弁の根元の模様は細く白い線です。句会に誘われた初めの頃に、杜若が読めずに冷や汗かいたことがありました。尾形光琳の国宝「燕子花図屏風」が有名です。
以上の3種、花弁の根元にある模様での区別をまとめてみました。
この他に、よく見かけるキショウブ(黄菖蒲)は、ヨーロッパ原産で明治中頃に渡来しましたが、今ではほぼ全国で野性化し、要注意外来生物に指定されています。
この仲間で一番早く咲くので名前にもなったイチハツ(一初)は、中国原産で室町時代に渡来しました。
※我がストック写真にはなかったので、“花の写真集”のフリー素材をお借りしました。
このイチハツは、古来より茅葺屋根の棟に植えると強風や乾燥から屋根を守ると伝わってきました。
光圀公の隠居所西山荘を10年以上前に撮った写真です、その屋根に写っていました。光圀公は領民にも植えるよう薦めたともいわれています。
端午の節句に菖蒲湯や屋根に吊るして邪気を払うのに使う「ショウブ(菖蒲)」は、ショウブ科ショウブ属の別種で、ガマの穂のような黄色い穂状の花です。古くから「あやめぐさ(菖蒲草)」といわれ万葉集にも登場しています。
現在の「花しょうぶ」は、アヤメ科の「ノハナショウブ(野花菖蒲)」の園芸種で、江戸時代から栽培が盛んになり数千種もの品種があるようです。菖蒲の漢字は「あやめ」とも読むので、話がややこしくなってきますが…。
旅かなし紫あやめ野に咲けば 富安風生
はなびらの垂れて静かや花菖蒲 高浜虚子
湿原に水の道つく燕子花 上田五千石
黄菖蒲に暮れなむとする水の色 高澤良一
一八やはや程ヶ谷の草の屋根 泉鏡花
あやめ草足にむすばん草鞋の緒 松尾芭蕉