公園の湿地に大きな葉と奇妙な花のムサシアブミが咲いていました。
サトイモ科テンナンショウ属特有の仏炎苞が暗紫色にまくれ上がった様子が不気味です。仏炎苞は葉の変化したもので、仏像の光背にある炎の飾りに似ているのが命名の由来、この中に肉穂花序という多肉化した花軸が守られています。
ムサシアブミ(武蔵鐙)の名前は、仏炎苞の形が江戸時代に武蔵国で作られていた馬具のアブミ(鐙)に似ていることから付けられました。鐙は、鞍の両脇から馬の脇腹にたらして足を載せるもの、確かに仏炎苞を逆さにした形が似ています、名を付けた先人に拍手です。
太い葉柄を持つ葉は2枚で、その大きさにも驚きます。春に出てきたばかりの葉はもう40cmくらいありました。(カメラのバッテリーは約4cmです)
花が終わると肉穂花序にはトウモロコシのような青い実がびっしりと付き、秋の終わりころにはそれが真っ赤に色付いて、色彩の無くなった野でひと際目を惹きます。なお全草にシュウ酸カルシウムを含む有毒植物だそうです。
こちらは春によく見かける同じ仲間のマムシグサ(蝮草)です。
暗紫色の仏炎苞の下から顔を出している黄色の付属体の下に肉穂花序が隠れています。
同じくウラシマソウ(浦島草)は、仏炎苞の中の付属体の先端部が細く糸状に伸びて、浦島太郎が釣りをしている姿に似ることから名前が付きました。
似ているミズバショウ(水芭蕉)はサトイモ科ミズバショウ属ですが、白い仏炎苞、黄色い肉穂花序がよくわかります。
やはり季語としては一般的でないため私の歳時記には載っていませんが、属名の総称としての天南星(テンナンショウ)なども含めての例句が少し見つかりました。
女どち武蔵鐙を怪しみぬ 高澤良一
天南星火の棒かざし枯れにけり 堀口星眠
さらに奥へ道の通じて蝮草 正木ゆう子
龍宮も竪縞流行り浦島草 後藤比奈夫