開花期間が長く、開花時期が早咲き中咲き、遅咲きと違う梅が次々と咲き競い約40日間の梅まつりを彩ってきましたが、園内はいま満開になり豪華なフィナーレを迎えようとしています。
遅咲きの梅には大輪が多い気がします。「白牡丹」は李系豊後性、スケールを並べて撮ってみました。約4センチもの大輪です。明治時代の梅銘花三牡丹(玉牡丹、紅牡丹)の一つです。(偕楽園)
同じく4センチちかくの大輪の「江南所無」は遅咲きの代表、杏系豊後性、写真の通り雌しべの退化が多く見られ、結実しません。江南とは揚子江の南、中国伝来の古い品種とされています。(弘道館)
「滄溟の月」も李系豊後性の大輪です。滄溟とは大海原のこと、大きな月が上がっている情景が浮かびます。大きな実が生ります。蕾のうちは紅色で開くに連れて白くなる“移り白”です。(弘道館)
「駒止」は李系豊後性、“移り白”(蕾のうちはピンクで、開花すると白色)の遅咲きで大輪、3m~6mの樹高になるので、馬上から思わず見とれたのが命名の由来かと勝手に想像しています。(弘道館)
紅色の蕾と白い花弁で“移り白”という咲き方がはっきり分かる「蓬莱」は李系難波性、不老不死の仙人が住む山の名にふさわしい気品があります。(偕楽園)
「佐橋紅」は李系紅材性(木質部が紅色をしている)で、本紅という濃紅色の丸い花弁と長い蕊に特徴があります。天保年間に旗本、佐橋氏邸の実生が佐橋紅と名付けられたという説もありますが…。(偕楽園)
「白滝枝垂」は枝垂系野梅性、弘道館正庁を背景に白い滝のように流れています。(弘道館)
「八重唐梅」は李系紅材性、花弁の裏のほうが紅色が濃く、縁が白くなる裏紅覆輪の豪華な衣装を纏っています。(偕楽園)
「紅加賀」は実梅で、花は野梅系の「白加賀」に似ていますが、こちらは李系豊後性です。明治35年静岡県興津試験場で収集された品種だそうです。(偕楽園)
「八重西王母」偕楽園東門前の人気品種です。杏系紅筆性で裏紅ぼかし、花弁の裏が紅色で濃淡のぼかしが入っています。西王母とは中国の神話に出てくる崑崙山に住む仙女の女王のことです。(偕楽園)
見れば驚くほど素晴らしいと名前がついた「見驚」、野梅系の大きな花ですが、実はほとんど生らない花梅の代表種です。(弘道館)
「座論梅」には雌しべが数本見えます。これが受粉して4,5個生った様が座って議論している様子に見えるのが命名の由来といわれます。
宮崎県にある国の天然記念物の湯之宮座論梅は、樹の下で領地問題を議論した故事から名付けられた梅で、しかも一株の枝が垂れて地に着きその枝から四方に約80株も増えていった臥龍梅としても有名です。(偕楽園)
花弁の裏が紅い裏紅の綺麗な「内裏」は李系紅筆性、咲きかけの蕾は薄紅色の筆型になります。内裏とは御所のこと、雅な雰囲気が漂います。(偕楽園)
「鹿児島紅」も李系紅材性で本紅色の代表的な人気品種です。雄しべが多い反面、雌しべには退化が見られます。花弁に波がないので平べったく見える花です。(弘道館)
「無類絞り」は李系難波性、類を見ないほど綺麗な絞りという命名でしょうか、薄く紅を引いたような絞りが何とも上品です。裏紅、吹き掛け絞りと花色の説明文も優雅です。ほとんど結実しません。(偕楽園)
梅の花についてはまだ学術的にも完全に確立してなく、また永年の交雑により純粋な原種が特定できぬこともあり、専門家でも品種確定が困難だという話を聞いています。そんな梅花を臆面もなく、名札頼りの上辺だけの記述で梅まつりの花の一部として紹介させていただきました。(満開の烈公梅の写真左上には、花弁6枚の花も見えます)