記録的な猛暑が初秋まで続いた2023年、やっと過ごしやすい季節の到来です。
今年の暑さはいろんな植物にも影響を与えたようですが、身の回りではいつものように秋の気配が濃厚になってきました。
ホトトギス(杜鵑草)は、ユリ科の多年草、花弁の斑点が鳥のホトトギス(時鳥)の胸の模様に似ていることから名づけられました。俳句では油染みの斑点のようだという「油点草」でも詠まれていますが、鳥のホトトギスの漢字は他にも杜鵑、杜宇、郭公、蜀魂、田鵑、子規などがあります。
シュウメイギク(秋明菊)は、キク科ではなくキンポウゲ科の植物です。楚々とした花姿ですが大型の多年草で、地中の根は太く長く伸びて、わが狭庭でも大きな顔で増えています。白い花弁のように見えるのは、萼の花弁化したものだそうです。
西日本の海沿いの岩場に自生するというダルマギク(達磨菊)の園芸種です。丸い葉を達磨にたとえたという説などがありますが、ずんぐりむっくりの様子が何となくぴったりです。
散歩道の野菊の群生です。秋の季語にある、まさに「花野」です。
この辺りの野菊はほとんどカントウヨメナ(関東嫁菜)です。若菜を食用とし山に生えるシラヤマギク(白山菊)の「婿菜」に対し、人里にあり女性にも摘みやすいので嫁菜と名付けたという説もあります。
花野の中に混じっていたアザミ(薊)、日本では約100種類ほど見られるそうですので種名は分かりません。秋に咲く代表はノハラアザミと出ていましたが…。
同じく花野の中のヒヨドリバナ(鵯花)、こちらも鳥の名が付いていますが、いたって素直にヒヨドリ(鵯)の鳴く頃に咲くという命名由来です。
秋といえば、キノコ…キンモクセイが匂う頃には初茸が出るとよく聞かされましたが、いつもの散歩道に今年も出ていました。
古くから食用キノコとして知られるハツタケ(初茸)は、芭蕉や一茶の句にも詠まれ名前の通り初秋の早い時期に採れます。特にいい出汁が出ることで知られています。
ハナイグチ(花猪口)は海沿いの松林などにごっそり出ますが、最近この辺ではあまり食べないようです。きのこ蕎麦の店では「ジコボウ」という名で出ていて、我が地方では「アワモチダケ」といっていました。美味しいキノコですが、傘の裏側が管孔状になっているキノコは、食べ過ぎると消化不良を起こすということを体験したことがあります。
公園でも色付いた葉と秋の実を見かけるようになってきました。
ハナミズキ(花水木)はアメリカ原産、今や公園や街路樹として春に咲く花や紅葉、紅い実が好まれているようです。
ナツハゼ(夏櫨)は、「日本のブルーベリー」ともよばれるツツジ科の落葉低木で、紅葉が美しく盆栽などにも人気です。我が少年時代は「はちまきぼんぼ」という名で、山歩きのおやつでした。今摘まんでもまったくその味、酸味は強くてもまさしくブルーベリーです。
油点草紫出過ぎても居らず 中谷楓子
紫の斑の賑しや杜鵑草 轡田進
杜鵑草手にし座興に啼かせみぬ 高澤良一
朝よりも昼の暗さの時鳥草 後藤比奈夫