顎鬚仙人残日録

日残りて昏るるに未だ遠し…

年の暮れ、花を求めて… ②

2017年12月30日 | 季節の花

散歩道の林の中にマンリョウ(万両)の赤い実、千両との違いは、実が葉の上にあるのが千両で、葉の下に垂れるのが万両。光沢のある実と緑の葉は正月の縁起木として親しまれています。

葉も枝も幹も緑色をしているのにアオキ(青木)というのは、青信号というのと同じ。奈良、平安時代は、色を表す形容詞が、白、赤、青、黒の4つしかなく、緑色は青に分類されていたという説があります。信号機も最初は緑信号という正式名称でしたが、慣習的に青信号と呼ぶのが定着し、現在のようになったと言われています。

通りかかった庭先のカンボケ(寒木瓜)の鮮やかな色が冬景色の中でいちだんと目立ちます。炎のような緋色をしているので、緋木瓜とも言うそうです。

少し足を伸ばして茨城県植物園、梅より早く春を告げる花、ロウバイ(蝋梅)が満開です。これはソシンロウバイ(素心蝋梅)、花被片全部が淡い黄色で、名前の通りの蝋細工のような半透明な花です。

いわゆる原種のロウバイ(蝋梅)は開花がやや遅れまだ数輪が開いているだけです。花の中心部が暗紫色の花をうつむき加減に咲かせています。
臘梅のいろの溶けゆく山日和  板谷芳浄
臘梅を透けし日差の行方なし  後藤比奈夫

生垣や公園に植栽されるトベラは、扉と書きます。悪臭がある枝を扉に挟んで邪鬼を追い払う風習があったため、名前が付きました。球形の果実が熟すと3裂して紅い実と種子が出てきます。

2,3輪咲き出したボケ(木瓜)、果実が瓜に似ており、木になる瓜で「木瓜(もけ)」とよばれたものが「ぼけ」に転訛(てんか)したとも言われます。庭木や盆栽、生け垣、切り花として観賞され、また果実は香りもよく果実酒やジャムになるそうです。

早春の花ミツマタ(三椏)は、枝が三つ叉に分かれるので名前が付きましたが、写真で見てもなるほどその通りです。和紙の原料としてよく知られ、また蕾のうちは蜂の巣のように見える小さな花は筒状の萼で、花弁はありません。

寒椿は椿と山茶花の交雑種で、特に山茶花の性格を多く引き継ぎ、区別が難しいようです。名前からくるイメージの方が強い花で、検索してみると、宮尾登美子、永井路子など10人の作家がこの題名で小説を発表しています。
今生の色いつはらず寒椿  飯田龍太
一度死ぬための生なり寒椿  佐藤火峰


今年も一年間、つたないブログにアクセスいただきありがとうございました。
どうぞ良いお年をお迎えください。


年の暮れ、花を求めて…

2017年12月26日 | 季節の花
気忙しい年の暮れ、屋外で花を見かけることは時期的にも難しいし、気分的にもそんなゆとりはないかもしれませんが、身の回りの花を探してみました。

ウインターコスモスの1種、黄色いヒデンスと、ベリッサムの白い小花を寄せ植えにした鉢、寒さに強い園芸品種で、マイナスになる屋外でも健気に咲き続けています。

キルタンサスは南アフリカ原産ですが、この寒さの中で咲いています。生育サイクルから夏咲きと冬咲きの2種があり、今咲いているのは冬から春に開花して夏には休眠します。

ネリネは光があたって輝く様子から、別名ダイヤモンドリリーとも呼ばれていますが、さすがに花期も終盤でしかも寒さで元気がありません。

茂みの下でスイセンが顔を出しました。いろんな種類があり、我が家でも7種類くらいが花を咲かせますが、これは日本水仙でしょうか、かすかに芳香がします。
仄(そく)と咲く水仙背信ばかりの世  楠本憲吉
水仙の僅に咲て年くれぬ  正岡子規

白い侘助です。粘土質の土壌のせいか椿類の育ちが悪く、青息吐息で毎年小さな花を咲かせています。
もつるるは白侘助の心の緒  長谷川秋子
白侘助遺言二十七行半  塚本邦雄

蕗の薹が大きくなっています。前から植えてあった野生の蕗と一緒に、少し大きめの蕗を貰って植えたものです。図鑑ではアカフキとか出ていますが、同じように食しています。
十二単とまで襲(かさ)ねずに蕗の薹  阿波野青畝
母に兆す苦汁の余生蕗の薹  上田五千石

冬の偕楽園…いろんな竹垣を見る

2017年12月23日 | 水戸の観光
偕楽園の日々の園内管理は造園会社の方々が行っています。普段気がつかない竹垣にも、よく見ると細かい造園の技術が施されおり、四季の自然に調和して景観を盛り上げているのが分かります。
専門知識はありませんが、さながら竹垣の見本展示場のような園内を一周りしてみました。

偕楽園の名前がついている「偕楽園垣」、またの名を笠四つ目垣というそうです。縦の竹(立子)が一直線に並び、横の竹(胴縁)が交互に付き、その胴縁側に結び目が来るのが特徴で、真横から見た感じがすっきりとします。2014年2月の施工なので約4年でこれだけ自然に馴染んでしまいました。

一般的に見られる「四つ目垣」は、縦横に丸竹を組んで、交差した形が四角形になる透かし垣です。

偕楽園を創った9代水戸藩主徳川斉昭公の諡号が付いた烈公梅を、六角形の柵で囲っているのは「金閣寺垣」、丈の低い四ツ目垣風のつくりで、上部を割竹でおさえているのが特徴です。

※後でよく見ると、縦の竹(立子)と横の竹(胴縁)の並べ方は、背は低くても「偕楽園垣」の変形のようでした。

「矢来垣」も、竹を斜めに組合せ交差部を棕櫚縄などで結ぶ、竹垣でよく見かける形です。

矢来垣の上部を割竹で押さえたものが「竜安寺垣」、棕櫚縄の止め方に特徴があります

「建仁寺垣」は、京都の建仁寺に由来する代表的な目隠し垣の一種。割り竹の表を外側に向けて並べ棕櫚縄で結びますが、飾り結びが見られます。

「鉄砲垣」は、鉄砲をたてかけて並べた様子から名が付きました。棕櫚縄の結び方が作り手によって異なるため、その結び目が鉄砲垣のひとつの特徴にもなるそうです。

木の枝で作る柴垣の最高級は萩垣です。なかなか材料が手に入らないのが悩みですが、偕楽園では150群もある萩の大きな群落が、冬には刈られてこの萩垣になります。

茶室何陋庵の袖塀は、竹枝穂で編んだ竹穂垣で、それも両側で違っています。茶室側の竹穂垣は、「松明垣」というのでしょうか、細かい作業と棕櫚縄の結び方にこだわりを感じます。

茶室のアプローチ側の竹穂の形はネットで調べると「蓑垣」と出ていました。京都嵐山にある宝厳院の枯山水庭園「獅子吼の庭」にあるものが有名だそうです。雨樋の縦樋に見立てた棕櫚縄が下がっていて、ワビサビの雰囲気を出しています。

中門の袖塀は、「萩垣」と「鉄砲垣」の合体したもの、作った方の意気込みが感じられます。

偕楽園開設の精神を斉昭公が記した偕楽園記碑の左側上下はさすがに「偕楽園垣」、右手には「矢来垣」が見えます。
今まで見過ごしてきた園内の竹垣…、そこに残る伝統の技をじっくりと鑑賞して作った方々の労に報いたいと思いました。

※後で知ったことですが、竹垣には基本型ではなく、遊び心を入れて竹の配置を崩したものがあるそうです。日本の中世以来、書の世界から始まって、いろんな芸道に様式や空間の価値概念を表す「真」、「行」、「草」があり、基本型の「真」に対し、基本を踏まえながら異なるものを取り入れる「行」、型破りなもの「草」とされる形が、竹垣にも、特に四ツ目垣に多く見られるそうです。

弘道館シンポジウム

2017年12月17日 | 水戸の観光

藩校時代の弘道館をCGによる復元で考える催しが、弘道館の至善堂で行われました。今の弘道館は明治元年のいわゆる弘道館戦争と昭和20年の水戸大空襲により、当時日本一の規模を誇った藩校の諸施設が消失し、奇跡的に残った正庁と至善堂、それに正門が消失を免れて現存しており、国の重要文化財に登録されています。

教育遺産として現存している数少ない施設のため、近世日本の教育遺産群として日本遺産にも登録され、その敷地32000坪という当時の全容を視覚的に捉えることはとても意義あることで、携わった方々に敬意を表したいと思います。
北側にある現在の梅林付近には文館があり、居学、講習、句読、寄宿の4寮と編集局、系纂局、講習別局、教職詰所などがありました。

今回は茨城大学熊澤研究室の方々により文館のほか、武館、医学館などの建物もCGで復元され、しかも動画によってあたかも当時の学生が構内を歩いているような視点で体感することができました。
三の丸小学校付近には武館があり、剣、槍術などいろんな武術の道場がありました。

医学館は現在の三の丸市民センターあたりで、居学寮、蘭学局、本草局、製薬局、養牛場などを備えた本格的なものでした。

ただ、現存以外の建物の詳細は、弘道館全圖という平面図と玄関式台に掲示の鳥瞰図しか残ってないため、CG制作には苦労を重ねたようで、今回も中間発表という形になりました。今後新しい資料が見つかればその都度手が加えられ、植栽なども含めてより忠実な再現が期待されるところです。

外に出ると正庁前の蝋梅の蕾が大きくなっています。あと1か月ちょっとで春一番の香りを176年前の学び舎に振りまいてくれることでしょう。

梅の剪定見学会  (偕楽園)

2017年12月11日 | 水戸の観光

12月9日に偕楽園で、造園の名工と言われる方々による梅の剪定見学会が行われました。今年で2度目の開催、お天気にも恵まれ多くの参加者で賑わいました。

3グループに分かれ、それぞれの梅の木の前で名工の方が、実際の剪定の仕方を見せてくれ、質問も多く飛び交いました。NHKのカメラも来ており、早速お昼のニュースで放映されたようです。

参加者には、剪定された梅の枝がプレゼントされました。花瓶に挿し時々水を替えながら、1日2,3回水をスプレーしビニール袋などで湿潤を保つと正月には開花するようです。

配られた梅の管理の資料によると、古木の多い偕楽園では、①発育枝を全て切り取り樹形を整える剪定でなく、発育枝を活かして樹勢の強化を図る剪定、②病虫害に対しては環境にやさしい方法で最小限の防除とする、③雑草を生やして草が土を耕す働きを利用する、④購入苗は未知の病害虫が侵入する危険があり園内の母樹から後継木を接ぎ木する、⑤施肥は園全体でなく必要な木だけに表層散布する…などが特徴として書かれています。

梅の街水戸を歩いていると庭先の梅の木があちこちで見られ、それも樹形が決まっているという情景を思い浮かべるだけでも楽しくなります。
今後もこの企画が成功することを祈ります。

庭の花と野の花散策記の12月8日のブログに、園内の南崖で一番梅が咲いたという記事がありその近辺を探したら、白梅(多分、冬至梅)が咲いていました。高所だったのでブレてしまい載せる写真ではありませんが、開花の証拠に左隅の方に顔を出させました。