顎鬚仙人残日録

日残りて昏るるに未だ遠し…

富士の見えない西伊豆の旅

2017年09月28日 | 旅行
今年の町内の旅行は、平均値で9月30日初冠雪の富士山を眺める一泊二日の旅…さりながら天気晴天なれど富士山付近には二日間とも雲が湧き出しており、初冠雪のニュースも出ず、善男善女43名の期待を見事に裏切ってしまいました。

駿河湾と富士の眺望で有名な達磨山(982m)から見下ろすと、富士山付近は積乱雲に覆われています。矢印の先に本来ならば初冠雪の富士山が見えるはずでした。

風化して黄褐色になった安山岩が、夕日を浴びて黄金色に輝く黄金崎…、ここでも富士山のシルエットがかすかに雲の間から覗いているだけでした。

一日目は諦めて、ホテルの部屋から駿河湾に沈む夕日を撮り、明日の快晴を祈りました。

翌日も晴天、1日4便の駿河湾フェリーの始発で土肥港から清水港まで、観光バスごとフェリーに乗り込んで出発です。

この区間の航路は、なんと県道223号線に指定されています。観光主体の粋な計らいで、富士山に語呂合わせの223号線、名前だけの海の上の県道表示です。

さて今回のメインイベント、65分間の航程は右側正面にドカンと富士山が居座るわけですが、なんとここだけ白い雲が湧き上がっています。

これは、駿河湾の水分を含んだ風が、長い稜線を経て高度を増して吹き上がり、急激に冷やされて雲となるので、当たり前の現象のようです。しかも富士山が全部見えた日数のデータでは、9月は24.9%、約8日ということです。
仕方ないので見える筈のところに、白い線で富士山を描いて哀れな紀行といたしました。

蕎麦処 楓の森 (茨城町)

2017年09月24日 | 食べログ

交通量の少ない道路から20mくらい引っ込んでおり、しかも小さな幟が2,3本立っているだけなので始めてでは見つけにくいかもしれません。

入り口を入るとアプローチはまさに楓の森の中の小径です。那珂市にある麦家も多分これに似た雰囲気でした。

ご主人の話では、40数年前に建てた家を自らリフォームし、アルミサッシ、襖などを外して木をふんだんに使って室内を仕上げたそうです。
楓の木を2年かけて探し、さらに2年かけて植え付け、丹精を込めての260本の木々、約10年で苔も一面に生えてきたという話です。ネット情報では、もと国体のスキー選手のご主人は、スキーの時期には尾瀬の民宿を営業するので、12月下旬から4月上旬までは休業するそうです。営業時間は11:30~14:00、木、金曜日定休で夜の営業は予約のみです。

室内は椅子席と座る席が合わせて7卓、囲炉裏席もあり、森の中にいるような雰囲気をどの席からも味わえます。

歯ごたえのある蕎麦と好みの少し辛めの汁は、まわりの涼し気な風情にピッタリの味です。盛られた皿は水分を吸収するものを使っていると、これもネットの情報です。

最近人気の落葉樹、アオハダに実がなっていました。株立ちや枝ぶりがすっきりして、秋の黄葉と実にも観賞価値があることなどから、雑木庭ブームの人気樹木です。

柴栗の一生

2017年09月23日 | 散歩
散歩コースに柴栗(山栗)がたまたま目の高さにあったので、その成長ぶりを撮ってみました。

5月27日、まだ蕾の段階では、あの独特の匂いはなく、可愛いらしいものです。雌、雄同株で長い花穂はほとんど雄花、下の方に短い雌花がつきますが、まだこの段階では区別が分かりません。

6月11日、花は黄色くなってきました。間もなく雄花だけの花穂は根元からとれて落花しますが、根元に出ている雌花の確認はまだできません。

6月23日、雌花の根元に小さな栗の実が顔を出しました。

6月25日、栗の実が着果した花穂は、着果部分から先の花穂は茶色になって離れ落ちます。

7月7日、だんだん成長する栗の実、もうすでに一人前の顔をしています。

8月11日、野生のものはこの時期になると、病気や害虫で落果するのが多くなります。

9月22日、イガの口が開いて栗の実が顔を出しました。イガはさらに開いて、栗の実も自らも地面に散らばせます。

落ちたところはアスファルト、これでは子孫を残すことはできません。拾ったら27個ありましたので、茹でてカチグリに挑戦してみます。約4ヶ月の柴栗の記録でした。

季語では、栗の花が夏、実は秋、緑のイガは夏に入れてもいいのでしょうか。

中年に中年の修羅栗の花  伊丹三樹彦
木曾仔馬青栗のいが道にでて  森澄雄
柴栗の破顔一笑野良着干す  今井茅草

【カチグリの報告10月5日】

約15分茹でてからザルに上げて、約2週間秋の太陽に干しました。確かにカチンカチンのカチグリです。渋皮をむくと細かい破片になり口に入れると歯が欠けそうな硬さです。かすかな甘味は残りますが、小さい頃糸で通して干したのとはまるで違う味です。保存食とはいえ、水で戻さないと使えないような失敗作でした。

湊公園(ひたちなか市)に吟行 

2017年09月20日 | 俳句

30年以上続いている俳句の会、月一回の例会は室内で行われることがほとんどですが、その月の当番さんの企画で外に出て吟行になることがあります。9月は顎髭仙人の当番で、湊公園に出かけました。

ここは涸沼川と合流した那珂川がすぐに太平洋と流れ込む北側の日和山(御殿山)という標高21mの台地で、水戸藩2代藩主徳川光圀公が別荘「夤賓閣」を建てました。建物は幕末の天狗の乱で焼失しましたが、当時の見事な松が数本残っています。

秋晴れの高台は暑いくらいの陽気ですが、さすがに海の風は秋の涼しさを運んでくれます。参加者は思い思いに園内を歩きながら鉛筆を走らせ、またお喋りにもつい花が咲いてしまいます。

句座は公園内のふれあい館2階の実習室、軽い昼食は手作りの栗ご飯、その後清書された投句を選句して、披講、相互に選評を行います。師のいない句会ですので各々唯我独尊的メンバーが、辛口評もあれば、作者の意図とまるっきり違った解釈もあったりして、楽しいひとときを過ごしました。


航跡を長くのこして秋の江  てる
水澄むや河の終わりは港町  やす
重陽や海の高さを見てをりぬ  多
涼風の吹き来る道あり湊公園  かつ
ハマギクの蕾は固し太平洋  阿
秋風に髪は乱れて御殿山  あん
息まけど秋声と覚ゆ風やさし  みち
鯊舟はここまで河は海に入る  よし

水戸藩の薬草…水戸市植物公園

2017年09月17日 | 水戸の観光
カツラ並木も色づいてきた植物公園…、水戸藩の薬草についての研修で西川園長のお話を伺ってきました

水戸藩の医学は、儒学の「仁(人を思いやる心)」にもとづき人の命を尊重する精神に貫かれており、2代藩主光圀公が医者にもかかれない領民のために、約397種の薬草用方を載せた日本最古の家庭療法の本「救民妙薬」を発行し、9代藩主斉昭公は藩校弘道館の医学館に薬園を設置、薬草の栽培、製薬をさせた歴史をもっています。
水戸市植物公園では、この歴史にまつわる薬草に絞った収集を続けており、また昨年養命酒製造㈱との協働事業で薬用ハーブ園も開設し、薬草の普及に取り組んでいます。

数多い薬草の中で、ほんの一部のご紹介です。
トウキ(当帰)はセリ科の植物で、血行改善、鎮痛解熱などの効能があります。藩医の原南陽の書にも「近時 松岡郡ニテ作リ出ス 至テ上品ナリ 江戸問屋ニテ 水戸当帰ト呼デ貨行ス」とあり、水戸藩で上質な当帰が採れていたようです。(松岡は現在の高萩市、付家老中山家の城下町です。)

チョウマメ(蝶豆)はマメ科独特な蝶形花ですが、旗弁が逆向きの下に位置しています。東南アジアではバタフライピー(butterfly pea)と呼び、染料として、また根,葉,花,種のそれぞれに便秘、下痢などの薬効があります。

ケツメイシ(決明子)という生薬は、このエビスグサ(夷草)の種子を乾燥したものです。便秘、胃腸、腎臓など広範囲の薬効で知られ、ハブソウからできるハブ茶の代用としても使われているようです。

アイ(藍)は、別名をタデアイ(蓼藍)というようにタデ科の植物、藍染めの材料で知られていますが、薬草としても葉、花、実など全草に抗菌、抗酸化、抗炎症作用の薬効があることが発表されています。

水戸黄門様の杖は、このアカザ(藜)という一年草の茎で作ったものといわれています。薬草としても、若葉を干したものを煎じて下痢止め、健胃、強壮薬として服用します。
杖は軽くて草からできたと思えないほど丈夫で、植物公園ではアカザの杖作り教室を計画しているそうです。

オトコエシ(男郎花)は、黄色いオミナエシ(女郎花)と対をなす秋の花、薬草園にあるのでびっくりしました。根茎を乾燥させたものを「白花敗醤」と呼び、はれもの、解毒、利尿に効くそうです。

なお、薬草園の花壇を仕切る瓦は、弘道館の東日本大震災復旧工事の際、使用できなかった古瓦です。広い敷地の中、右手最奥にある薬草園ですが、江戸時代からの歴史がここで受け継がれていることを感じることができます。



薬草園の外にマンジュシャゲ(曼珠沙華)のシロとピンクの花が咲いています。シロバナマンジュシャゲ(白花曼珠沙華)と リコリスアルビピンクというのでしょうか。
曼珠沙華は日本ではあまりよいイメージではありませんが、欧米では人気も高く園芸品種も多くつくられ、ホームセンターの園芸売り場にはいろんな色の球根がリコリスという名で並んでいます。
有毒植物ですが、鱗茎を生薬名で石蒜(せきさん)といい、すりおろしたものを患部につけ肩こり、浮腫などに薬効があるそうです。