活版印刷紀行

いまはほとんど姿を消した「活版印刷」ゆかりの地をゆっくり探訪したり、印刷がらみの話題を提供します。

ヴェネツィアは本の都だった

2014-05-27 15:44:34 | 活版印刷のふるさと紀行

 この二,三日夢中になって読んだ本が『そのとき、本が生まれた』(柏書房)でした。実はもう一年も前、書名に惹かれて購入したまま、積ん読してあったのですが、なにげなく手に取って読み始めたらもっと早く読むべきだったと後悔するような箇所に次々と引き込まれた次第です。

 著者はアレッサンドロ・マルツォ・マーニョというヴェネツィア大学でヴェネツィア史を専攻したイタリア人で週刊誌の編集者、翻訳者は清水由貴子さん。

 16世紀前半、ヨーロッパで出版されていた本の半分以上を出版していたとされる本の都ヴェネツィアをいきいきと愛情をもって書いているのです。まず、書き出しが素敵でした。いま、リアルト橋からサンマルコ広場へ通じるメルチェリ通りには靴、ハンドバック、アクセサリー、フェラーリーのスポーツカーまで並んでいます。それが16世紀だったらどうだったろう、ヴェネツィア特産の織物や皮革の店はもちろんですが、断然多かったのが書店だったというのです。

 この書店に並ぶ本の大半が印刷者兼発行人の作品だったといい、著者は当時の書店の店内の様子まで活写しています。たとえば、書棚に陳列してある本は背でなく、小口が見えるようにしてあって、小口に著者名と書名が刻印されていたそうです。 こういう出版、印刷についてのおもしろいエピソードが山積みなのです。そうはいっても私があまり内容を紹介してはいけません。ただひとつ、この本には書写本から印刷本に移行したときの印刷工、印刷能力、賃金、印刷機などについてかなり書き込んであり、印刷技術史・印刷文化史としても興味深いのでぜひ、印刷関係のみなさんにもご一読をお奨めします。

 ところで、今年も東京国際ブックフェアが近づいてきました。併催の電子出版EXPOも18回を数えるといいます。私は「電子出版」に興味がありますので、次回その件を書きます。

 

 

 

 

 

 

 

 

コメント (1)
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