活版印刷紀行

いまはほとんど姿を消した「活版印刷」ゆかりの地をゆっくり探訪したり、印刷がらみの話題を提供します。

暗くなるまでこの恋を

2014-07-01 13:12:39 | 活版印刷のふるさと紀行

 気になっていましたが朝日ホールでのフランス映画祭2014の最終日に、フランソワ・トリュフォー監督の『暗くなるまでこの恋を』を観て来ました。観客席に通じる通路で見つけたパンフレットによると制作されたのが1969年、日本公開は翌年だったとあります。してみると、私が前に見たのは気が遠くなるほどの昔というわけです。

 その割にはデジタル・リマスター版とやらのスクリーンに次々と蘇るカトリーヌ・ドヌーブの美貌はいささかも衰えず?大満足でした。そうです。昔も画面のドヌーブに圧倒されましたが、作品そのものには鬼才監督が思いつくままに筋立てしたようで、ミステリーと大ロマンが共存していてそのあまりにも荒唐無稽さが気になった記憶がありました。南の島でたばこ工場の経営者ジャン・ポール・ベルモンドが全財産をだまし取られ、彼が悪女のドヌーブを憎みながら惹かれ、やがて殺人までしてドヌーブにのめり込んでゆく狂気を「まさか」と思ったものでした。

 ところが、今回はベルモンドの狂気がなんとなく納得できたから不思議です。男が女を愛するとき、理性の上では環境だとか年齢だとかを考慮に入れるものの、気持ちが嵩じるとただ、ただ惹きこまれてゆくだけになります。この場合もドヌーブがやがてベルモンドの恋情に応えるようになります。なにもかもがかけ離れた男女が、お互いに相手を呑みこんでゆく、相手に呑み込まれていく。自分ではどう仕様もない狂気そのものが恋です。

 ラストシ-ンのスイスの雪山を国境越えしてゆく二人の後ろ姿にセ・ラ・ヴィと投げかけてやりたい気持ちでした。このフランス映画祭、私の知っている限りもう20年も毎年続いていると思うのです。あのころ文学界ではカミュやサルトルがブームでした。最近、フランスではカミュはまだしもサルトルは若い人には敬遠され気味とか。はたして映画はどうでしょうか。、少なくとも日本ではフランス映画ファンはまだまだシニュア世代には健在です。主催のユニフランス・フイルムズ,共催の朝日新聞にずっと続けてもらいたいものです。


 






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