活版印刷紀行

いまはほとんど姿を消した「活版印刷」ゆかりの地をゆっくり探訪したり、印刷がらみの話題を提供します。

『花子とアン』を見ながら

2014-07-21 17:08:26 | 活版印刷のふるさと紀行

 最近、印刷人の集まりで「村岡印刷」がよく話題になるのです。ご存知の方が多いと思いますが、村岡花子の生涯をテーマにしたNHK朝ドラ『花子とアン』に登場するのが村岡印刷です。ドラマの舞台に印刷屋は地味ですが、ご同業ということもあってドラマの筋立てよりも昔の印刷会社の仕事ぶりに興味があるようです。

 例えば「あの時代、スーツにネクタイの正装でキチンとしていたんだね」 村岡印刷のコーヒー好きの社長、脇をかためる長男、次男みんなスーツ姿で決めています。時代は大正の終わり近く、銀座という場所柄もあるでしょうが、明治時代は羽織、はかま、急ぎの時は二人曳きの人力車で得意先に乗りつけたといいますから、まだ、印刷業のステータスが高かったと思われますから時代考証的には合格。 印刷会社のステータスがダウンし始めたのは関東大震災による不景気、改造社の1冊、1円の『現代日本文学全集』を皮切りにした円本ブームからでした。

 また、こんな意見もありました。「あの時代に印刷会社があそこまでやっただろうか」と。つまり、村岡印刷が創刊される雑誌の表紙のデザインを提案したり、挿絵を描いたりしていることが不思議だというのです。確かに印刷屋さんは印刷を頼むところで、出版社は編集業務は全部自社でというのが定番でした。印刷会社が出版社に企画提案をしたり、編集を手伝うようになったのは1950年代になってからでしたから。

 ただ、『花子とアン』のモデルが教文館、印刷会社が傍系の福音印刷だといわれておりますからいわば身内、当時でもこういう仕事の進め方があったとしても不思議ではありません。それよりも、当時の印刷所の「印刷風景」が出てきたら面白いのにという意見もありました。それは無理です。大正から昭和の初めの活版印刷風景の再現はさすがNHKでも無理。時代と技術の変化がロケ現場そのものを消し去ってしまっています。時は過ぎてゆくです。

 蛇足ですが、昨日7月19日の朝日新聞夕刊のトップ見出しが「活版印刷 再び脚光」もはや郷愁ですか。

コメント
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