活版印刷紀行

いまはほとんど姿を消した「活版印刷」ゆかりの地をゆっくり探訪したり、印刷がらみの話題を提供します。

活字と書体、書体は生きている

2014-07-13 11:33:49 | 活版印刷のふるさと紀行

 昨年の秋に出た『一〇〇年目の書体づくり』、サブタイトルが「秀英体 平成の大改刻」の記録という本をようやく読み終えました。とっくに発行元の大日本印刷の広報室から送っていただいていたのに半年も向き合う時間を持てずにいた理由は、こうした時間をかけたプロジェクトの記録を右から左に読み飛ばしてはバチが当たると思ったからです。

 ここで、あまり「印刷」と縁のない方のために申し添えますと、「秀英体」とは大日本印刷の前身、秀英舎が100年前に開発した活字の書体の名前、改刻とは書体をリニューアルすることだとおもってください。印刷業は明治はじめから企業化されはじめ、本や雑誌の印刷は鉛を鋳造した「活字」を組んで行われました。その活字の書体としては築地活版の「築地体」と少し遅れて開発された「秀英体」が代表的でした。

 しかし、100年以上続いた活版印刷もほとんど姿を消し、秀英体の大日本印刷も127年間続いた活版印刷部門を2003年(平成15)に閉鎖しています。それなのになぜリニューアルが必要かといいますと、印刷技術が変わっても活字書体の美しさ、読みやすさ、種類の多さは本や雑誌の出来上がり、印刷物としての優劣を左右します。

 とくに紙メディアでの印刷効果もさることながら、文字が電子メディアで読まれるケースが多くなって、こんどはそれに対応した書体が求められるようになりました。そこで、7年間の歳月をかけ、10書体、12万文字の秀英書体の改刻がされたというわけです。読み終わってサブタイトルの「平成の大改刻」、帯のキャッチコピー「書体は生きている」に、私は改刻に携わったスタッフたちの自負を感じ、敬意を表せずにはいられませんでした。





 

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