活版印刷紀行

いまはほとんど姿を消した「活版印刷」ゆかりの地をゆっくり探訪したり、印刷がらみの話題を提供します。

あれは秀吉の茶羽織だったか

2014-12-07 11:17:21 | 活版印刷のふるさと紀行

 3日目は名古屋の徳川美術館の蓬左文庫で催されている『古典文学の世界 大名文化と古典』が訪問目的でした。、国宝の源氏物語絵巻はもちろんのこと、おそらく江戸時代の大名家で大事に収蔵され大名家子女の学習対象になったはずの古典作品が見られるというので張り切って入館しました。

 最初に尾張徳川家の蔵書目録に「サスガー」と感心してから、四書五經、白氏文集、三国志など中国古典の世界を見てまわりました。いつか印刷博物館の勉強会で「本場の中国や韓国よりも日本の方に保存状態の良い渡来蔵書が残っている」と聞いたことがありましたが、朝鮮王朝時代の『五経大全』などを見ると「なるほど」と思った次第。

 次が日本古典の展示です。『古事記』や『続日本記』など歴史書に始まって、『竹取物語』、『伊勢物語』から『土佐日記』や『方丈記』など室町から江戸にかけての時代物がズラリと並んでいました。おもしろかったのは姫君たちの調度本として絵本風の『源氏物語』や『つれづれ草』がかわいらしい書棚箪笥とともに展示されていました。おそらく、テレビの時代ものには姫君の読書シーンなど出て来ませんが、調度とあるからには絵本がアクセサリーだったのでしょうか、それともこれで勉強したのでしょうか。

 個人的には徳川美術館本館の企画展示『装いの美』が印象に残りました。-大名のおしゃれーというサブタイトルがついていましたが、古くは大名が身に付けた直衣や狩衣のような装束から子女の小袖や化粧道具、明治初期の大礼服やイブニングドレスまで「よくぞ保存されていたものだ」と感心しました。

 とくに記憶に残ったのは、たしか秀吉が着たという「辻ケ花染」の茶羽織の美しさでした。案内してくださったが学芸員の方が、布地物、とくに絹物の修復が難しいのは、「繭のちがい」にあると説明されていました。宮中で皇后陛下がなさっている養蚕でとれるような日本古来の在来種からとった絹糸でないとだめだという話でした。辻ヶ花染のような染色技法すら途絶えてしまったこうした名品が是非、いつまでも残ってほしいものです。


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