活版印刷紀行

いまはほとんど姿を消した「活版印刷」ゆかりの地をゆっくり探訪したり、印刷がらみの話題を提供します。

父型から母型、そして活字づくりの大作業

2009-06-27 11:35:35 | 活版印刷のふるさと紀行
 さて、『どちりいな・きりしたん』は信者にキリスト教の教義をわかりやすい問答形式で説く本です。日本人の信者獲得には必要欠くべからざるものですから、かなり前から、刊行順序の最初の方にあげられてたはずです。

 それは、写真に見られるように、「印刷」以前に信者たちが一生懸命に書き写した書写本に似ていて、1字が1cm角の大きめな日本文字の活字が使われております。
 
 私は、この『どちりな』の日本文字活字がそう簡単にできるものではないと申しあげます。 ドラードたちがリスボンで習ってきた活字の作り方はこうです。
 まず、硬い鋼材にハンコと同じような凸字を彫って焼き入れした「父型」をつくります。次にこの凸型の「父型」を柔らかめの銅材に打ち込んで「母型」にします。この「母型」こそ活字の字面のもとになる原型で凹型に仕上がっています。つぎにその母型に活字のボディになる部材を加えて、鉛・アンチモン・錫を配合した活字の地金にあたる液体を流し込むと1本の活字ができあがるというわけです。

 『どちりな』は漢字と仮名がまじっています。日本文字の活字作りはそれぞれの文字の版下を作るところから始めねばなりません。これには文字書きの達者な人がかなりの人数必要ですし、あとにつづく父型、母型づくり、活字の流し込みと各工程を考えると大内田先生の「書物の編纂、出版にも関係ある古くて経験ある」肩書きをもった「十名の日本人神弟」なる技術集団ぐらいではとても収まりそうにありません。


 

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1 コメント

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『どちりいな・きりしたん』 (Folio)
2009-06-29 10:30:13
大変興味深く読みました。
お願い『どちりいな・きりしたん』の掲載画像はせめて判読できるくらいのサイズが望まれますが。
それと、現行の読みとを併せて掲載していただけるとありがたいのですが。

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