活版印刷紀行

いまはほとんど姿を消した「活版印刷」ゆかりの地をゆっくり探訪したり、印刷がらみの話題を提供します。

印刷史のなかの活字の話

2015-03-23 15:22:56 | 活版印刷のふるさと紀行

 めぐりあいとでもいったらいいのでしょうか、思わぬときに思わぬ形でめぐり合った本の紹介です。著者は鈴木広光さんタイトルは『日本語活字印刷史』、版元は名古屋大学出版会、奥付けの発行日が2015年2月15日とありますから、まだ出たばっかりといえます。

 帯に書字の論理、活字の論理とあって一瞬、「むずかしそう」と思ったものの、ちょうど秀英体活字の講演を聴いたばかりだったし、キリシタン版活字の国字について探偵まがいでああでもない、こうでもないと考えている折から勉強させてもらうことにしました。それに鈴木広光先生は10年前の印刷懇話会スタートのときとか、昨年、八木書店の『キリシタンと出版』の記念講演会でも持論を拝聴しているのでぜひにと思った次第です。

「漢字と仮名による多様な書字活動は、いかにして活字化されたのか。技術のみならず文字の性質や書記洋式・言語生活等に注目し、嵯峨本など古活字版から、宣教師らによる明朝体活字鋳造を経て、近代日本の活字組版まで、グローバルな視野で描き出す」。と帯にありましたが、印刷出版とミッション・プレスの関わり合いから筆をおこし、はやくも序章で日本イエズス会の活字製作に触れているのがうれしかったのです。

 とくに、嵯峨本『伊勢物語』の活字と印刷技法をキリシタン版との関連については、私が敬愛している森上修先生の学説と重なっているので味わい深く読みました。但し、同じ章で紹介されている国字がリスボンでという豊島正之先生説の方はまだ、納得できないで首をひねっているところです。

 正直にいいますと、まだ、全部を読みおえておりません。ただ、鈴木広光先生がこの本のなかで活字と印刷についてどのような視角で論じられているか、その論理が少しずつわかって来るような気がしています。同好の士にぜひともお勧めしたい本です。




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