永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(405)

2009年06月02日 | Weblog
09.6/2   405回

三十四帖【若菜上(わかな上)の巻】 その(14)

 一方、蛍兵部卿の宮は、髭黒の大将に玉鬘を奪い取られて後、いい加減な結婚はするまいと、選り好みをしてこられましたので、この女三宮に対して御心の動かぬ筈はなく、夢中になっておられます。先の籐大納言も朱雀院がご出家後のお世話先として、自分をもお考えに入れて頂きたいと、頻りに御内意を伺われているようです。

「権中納言も、かかる事どもを聞き給ふに、人伝にもあらず、然ばかりおもむけさせ給へりし御気色を見奉りてしかば、(……)」
――権中納言(夕霧)も、朱雀院ご自身、あれほど気を引かれたご様子で、私をご覧になられたこととて、自然何かのついでに、自分の意向をお耳に入れたならば、(まさか、知らぬ振りもなさるまい、と胸の躍る気もしたに違いないのですが)――

 雲井の雁が、今こそ自分を頼りにしているのに、今さら他へ心を向け、心配をかけられようか、それに、

「斜めならず、やむごとなき方にかかづらひなば、何事も思ふままならで、左右に安からずば、わが身も苦しくこそはあらめ」
――姫宮ほどの高貴な方と縁組したならば、何事にも不自由で、どちらを向いても窮屈で不安ならば、自分としても苦労に違いない――

 などと、元来浮気のご性分ではない夕霧は、胸に抑えて口にはお出しになりませんが、それでも女三宮が他の人に定まってしまわれるのは気がかりで、女三宮の噂には注意しております。

 東宮からは、「源氏に親代わりのようにお預けなさってはいかがでしょう」とのお言葉添えもあり、朱雀院はいよいよ源氏にとお定めになります。先の左中弁をやって、とりあえず源氏にご意向をお伝えさせ申されます。
 源氏も以前から、朱雀院が女三宮のご処遇にお悩みの事をお聞きし、ご存じではありましたが、

「心苦しき御事にもあなるかな。(……)いとかなしくし奉り給ふ御子なめれば、あながちにかく来し方行く先のたどりも深きなめりかしな。ただ内裏にこそ奉り給はめ。」
――なんとも心苦しいことですね。(私にしても、どれ程長生きできるでしょう。院に続いて私が世を去る際にはお気の毒なことになりましょう。夕霧は行く末も長く、朝廷の柱ともなるだろうから、不都合ではないが、妻が定まった今、朱雀院はご遠慮なさったのでしょうね)大層大切な姫君ですから、院も過去未来のご心配が深いのでしょう。いっそ、帝にお差し上げなされてはいかがでしょう――

 6/3~4日 お休みします。
 では6/5にまた。