永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(408)

2009年06月07日 | Weblog
 09.6/7   408回

三十四帖【若菜上(わかな上)の巻】 その(17)

 源氏は、考えれば紫の上がお気の毒で、女三宮のご降嫁を知ったなら、どう思われるだろう、お互いに一層睦び合う御仲で、一時的にせよ心の隔てを持つのは気がかりなことだと、そのようなお気持ちのまま、その夜はお休みになりました。

 次の日は雪模様で、空の気色もものあわれに沈んでおります、そのような時分に、お二人は過ぎて来た日や、これからのことをお話になりますうちに源氏は、

「院のたのもしげなくなり給ひにたる、御とぶらひに参りて、あはれなる事どもものありつるかな。女三宮の御事を、いと棄て難げに思して、しかじかなむ宣はせつけしかば、心苦しくて、え聞こえいなびずなりにしを、ことごとしくぞ人はいひなさむかし。(……)
――先日、朱雀院のご病気がお悪くおなりになりましたので、お見舞いに参上しましたが、いろいろとご同情に堪えないことがありましてね。女三宮のことをひどくご心配なさって、これこれのことを仰せつけられましたので、お気の毒でご辞退することもできなかったのですが、世間ではさぞ大袈裟に言いふらすことでしょう――

 「今はさやうのころもうひうひしく、すさまじく思ひなりにたれば、(……)深き御山住みにうつろひ給はむ程にこそは、渡し奉らめ。あちきなくや思さるべき。」
――今はもう結婚などとは気恥ずかしく不似合いに思っていましたので、(人づてに仄めかされた時は何とか言い逃れをしたのですが…)朱雀院が山寺にお籠りになりますと同時に、ここへ女三宮をお迎えしようと思っているのです。あなたは味気なくお思いでしょうが――

「いみじき事ありとも、御為あるよりかはる事はさらにあるまじきを、心なおき給ひそよ。かの御為こそ心苦しからめ」
――どんなことがあっても、あなたの事では私の心が変わることなど決してありませんから、私をお疑いなさるな。むしろ女三宮こそお気の毒でしょう――

「それもかたはらならずもてなしてむ。誰も誰ものどかにて過ぐし給はば」
――女三宮にも体裁よく待遇をいたしましょう。どなたも穏やかに暮らしてさえくだされば――

 などと源氏は一気におっしゃる。紫の上はどう思われたでしょうか。

◆写真:雪模様の朝  風俗博物館

ではまた。


源氏物語を読んできて(六条院の調度品・大殿油)

2009年06月07日 | Weblog
大殿油(おおとなぶら)

 高灯台は、直径30cmほど、厚さ3cmほどの半球形の(つちい)という台座の中央に、1メートルほどの中央部がくびれた竿を立て、上に灯械(くもで)と称する台を置く。灯械の上には、油盞(あぶらつき)と称する金銅製の皿を置いて中に油を入れ、灯心を浸して使う。灯台の下には、床を油で汚さないための打敷(うちしき)(油単ゆたん)を敷いた。

絵と参考:風俗博物館