永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(438)

2009年07月07日 | Weblog
09.7/7   438回

三十四帖【若菜上(わかな上)の巻】 その(47)

 さて、大将の君(夕霧)は、もともと気になさっていました女三宮でしたので、六条院には何かの折に出入りなさっては、宮のご様子を見聞きしておりまして、お感じになるには、

「いと若くおほどき給へる一すじにて、上の儀式は厳めしく、(……)女房などの、おとなおとなしきは少なく、若やかなるかたち人の、ひたぶるにうち花やぎ、ざればめるはいと多く、数知らぬまでつどひ侍らひつつ、(……)」
――女三宮はたいそう若くおおようなばかりで、源氏はご立派に御もてなしなさっていらっしゃるが、(宮は余り目立って奥ゆかしくもない)女房たちも経験の深い人は少なく、ただ若々しく美人で、華やかでお洒落な人がたくさんおいでになる。(このように万事子供っぽい雰囲気の中で過ごされていらっしゃる女三宮ですが、源氏は人それぞれという御心境に達しておられますので、大目に見ておられるのだろう。ただ女三宮ご自身については、ご教育の甲斐があって大分よくなられたようだが)――

 さらに夕霧は思います。

「げにこそあり難き世なりけれ、(……)」
――なるほど、完全な女は稀なものだ。(紫の上のお心掛け、ご態度とも人に非難されるようなところがなく、静かにもてなされる方だと、あの野分きの朝お見上げした面影が、忘れ難く思い出される)――

 「わが御北の方も、あはれと思す方こそ深けれ、いふかひあり、すぐれたるらうらうじさなど、ものし給はぬ人なり」
――わが北の方の雲井の雁は、情愛こそ深いけれど、お話相手としての甲斐があるとか、人に優れて才気があるという方ではない――

「穏しきものに、今はと目馴るるに、心ゆるびて、なほかくさまざまにつどひ給へる有様どもの、とりどりにをかしきを、心ひとつに思ひ離れ難きを、まして(……)見奉る折ありなむやと、ゆかしく思ひ聞こえ給へり」
――(結婚して自分のものとなれば)今はもう安心して油断し、このように様々に暮らしている女方の様子の美しいのに愛着を感じるのに、ましてや(宮は尊い御身分ながらも、源氏から特別の御寵愛がないとしたなら、うわべの見栄ばかりと分かってみれば、大それた気持ちではないにしても)いつかは、あの宮にお逢いしたいものと恋心が募るのでした――

◆写真:女三宮のお部屋の御簾からこぼれ出る衣裳の端ばし。

    風俗博物館

ではまた。