永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(450)

2009年07月19日 | Weblog
09.7/19   450回

三十五帖【若菜下(わかな下)の巻】 その(4)

 左大将殿の北の方(髭黒大将の北の方・玉鬘)は、ご自分のご兄弟である太政大臣家の君達よりも、右大将(夕霧)の君を、昔と同様に親しく思っていらっしゃいます。玉鬘は今風で才気のある方で、夕霧も、実の御妹君の明石の女御よりも気安く感じられて、一風変わった親しさで交わっていらっしゃる。

 「男君、今はまして、かの初めの北の方をも、もて離れはてて、並びなくもてかしづき聞こえ給ふ」
――髭黒の大将は、今では初めの北の方(式部卿の宮のご長女君)ともすっかり縁を切られ、二人と並ぶ者のないほど、玉鬘を大切にしておられます――

 ただ、お子様は男君ばかりで寂しいので、あの真木柱を引き取って養育したいものと
思うのですが、御祖父の式部卿の宮は断固としてお許しにならず、

「この君をだに、人わらへならぬさまにて見む」
――真木柱だけでも、みっともなくないように育てよう――

 この式部卿の宮という方は、世間のご声望も結構高く、帝もこのことには同情をお寄せになっておられます。

「大将も、さる世のおもしとなり給ふべき下形なれば、姫君の御おぼえ、などてかは軽くはあらむ」
――髭黒の大将も、将来、世の柱石ともなられるお立場ゆえ、真木柱への執着が軽い筈はございません。(姫を政略として使い、外戚の身分を固めたい)――

 真木柱への求婚者は大勢おられるようですが、式部卿の宮は快いご返事をなさらない。

「衛門の督を、さも気色ばまばと思すめかめれど、猫には思ひ貶し奉るにや、かけても思ひよらずぞ、口惜しかりける」
――(式部卿の宮は)柏木を、もしこの人が申しこんで来たならば、許しても良いとお思いのようですが、柏木は真木柱を猫より低い者と思い貶していると見えて、夢にもそんなことは考えてもいないらしく、残念でならないのでした――

 真木柱は、母君が矢張り妙に変わった人で、今も気がおかしいのが悲しく、継母の玉鬘を慕わしく思っておいでの、現代風なお方です。

ではまた。