本と映像の森51 小松左京さん『闇の中の子供』新潮文庫、1975年発行
なんせ1975年(昭和50年)、つまり35年前に買った文庫本なので、いま発行されているかどうかは保障できません。
文庫本は、ほんとに「生もの」で、すぐに品切れ・絶版にされてしまうので。
小松左京さんは、私の大好きなファンタジー(=SF(サイエンス・フィクション))作家の一人です。
他の日本人ファンタジー作家としては、たとえば平井和正さん(誤解をしないように、私は「宗教オタク」ではないですからね)、筒井康隆さん、などでしょうか。
この『闇の中の子供』の最高傑作は、やはり表題作の「闇の中の子供」でしょうね。
語り手のたぶん小松左京さんの若い頃という設定でしょうか、「売れないSF作家」の上の「玄関のドアが、ほとほととたたかれた。」
語り手の男性の自宅、妻と2人の小さな子供が眠った時間に玄関をたたく音。語り手が玄関を開けると、雨の中に立っていたのは、江戸時代の紋付きのような衣装を着た小さな男の子。
その子が「おじさん、助けて下さい。私は殺されます」と言い「おそろしいおとなです」と必死に語り手に訴えるところから、幕が開きます。
その江戸時代風の、おびえる男の子は、語り手の2人の男の子といっしょに、異次元の奥へ逃げてしまいます。
そこへやってきた語り手の悪友が、隣町でやっている歌舞伎芝居「菅原伝授手習鏡」のことを思い出し、何か関係がありそうだと、その小屋へ向かいます。
これは悲しい、子殺しの物語です。もちろん、現代の子殺しのように、ノイローゼでとか子育てに悩んでとかではありません。
主人公と悪友がまごれこんだ時空に現れるのは、飢饉による子殺し、中世ドイツのヘンゼルとグレーテル、戦争による子殺し、ナチスドイツやモンゴル軍による、日本の江戸時代の飢饉時代の子殺し…。
それらの惨劇を背景に、語り手と悪友は、「菅原伝授手習鏡」の謎を解明します。
現代は、生産力とエネルギーの過剰に悩む時代で、地球温暖化も過剰によるのですが、人類史の大部分は生産力とエネルギーの大幅不足に悩んできました。
「グリム童話」が、本当は悲惨な話というのも、そういうことかなと思います。
小説の終わりのシーン、印象的です。
「 五色の短冊、私が書いた…
子供たちの歌声は、森のむこうから、まだ聞こえてくる。」
こういう子どもたちの声に、耳を傾けたいと思います。
「闇」も。
そこからすべてが始まるのではないでしょうか。
「笹の葉さらさら
軒端に揺れる
お星様きらきら
金銀砂子
五色の短冊
私が書いた
お星様きらきら
空から見てる」
ほかに、現代の小泉民営化を徹底的に茶化したような「第二日本国誕生」も思考実験をリアルに小説家した傑作です。
蛇足ですが、「七夕(たなばた)」って何?っていう謎もありますね。あと少しで7月七日です。考えていきたいと思います。
もう七夕の星、こと座のヴェガ(織り姫)とわし座のアルタイル(牽牛)が夜には天空に、高く輝いています。
雲の向こうで。
なんせ1975年(昭和50年)、つまり35年前に買った文庫本なので、いま発行されているかどうかは保障できません。
文庫本は、ほんとに「生もの」で、すぐに品切れ・絶版にされてしまうので。
小松左京さんは、私の大好きなファンタジー(=SF(サイエンス・フィクション))作家の一人です。
他の日本人ファンタジー作家としては、たとえば平井和正さん(誤解をしないように、私は「宗教オタク」ではないですからね)、筒井康隆さん、などでしょうか。
この『闇の中の子供』の最高傑作は、やはり表題作の「闇の中の子供」でしょうね。
語り手のたぶん小松左京さんの若い頃という設定でしょうか、「売れないSF作家」の上の「玄関のドアが、ほとほととたたかれた。」
語り手の男性の自宅、妻と2人の小さな子供が眠った時間に玄関をたたく音。語り手が玄関を開けると、雨の中に立っていたのは、江戸時代の紋付きのような衣装を着た小さな男の子。
その子が「おじさん、助けて下さい。私は殺されます」と言い「おそろしいおとなです」と必死に語り手に訴えるところから、幕が開きます。
その江戸時代風の、おびえる男の子は、語り手の2人の男の子といっしょに、異次元の奥へ逃げてしまいます。
そこへやってきた語り手の悪友が、隣町でやっている歌舞伎芝居「菅原伝授手習鏡」のことを思い出し、何か関係がありそうだと、その小屋へ向かいます。
これは悲しい、子殺しの物語です。もちろん、現代の子殺しのように、ノイローゼでとか子育てに悩んでとかではありません。
主人公と悪友がまごれこんだ時空に現れるのは、飢饉による子殺し、中世ドイツのヘンゼルとグレーテル、戦争による子殺し、ナチスドイツやモンゴル軍による、日本の江戸時代の飢饉時代の子殺し…。
それらの惨劇を背景に、語り手と悪友は、「菅原伝授手習鏡」の謎を解明します。
現代は、生産力とエネルギーの過剰に悩む時代で、地球温暖化も過剰によるのですが、人類史の大部分は生産力とエネルギーの大幅不足に悩んできました。
「グリム童話」が、本当は悲惨な話というのも、そういうことかなと思います。
小説の終わりのシーン、印象的です。
「 五色の短冊、私が書いた…
子供たちの歌声は、森のむこうから、まだ聞こえてくる。」
こういう子どもたちの声に、耳を傾けたいと思います。
「闇」も。
そこからすべてが始まるのではないでしょうか。
「笹の葉さらさら
軒端に揺れる
お星様きらきら
金銀砂子
五色の短冊
私が書いた
お星様きらきら
空から見てる」
ほかに、現代の小泉民営化を徹底的に茶化したような「第二日本国誕生」も思考実験をリアルに小説家した傑作です。
蛇足ですが、「七夕(たなばた)」って何?っていう謎もありますね。あと少しで7月七日です。考えていきたいと思います。
もう七夕の星、こと座のヴェガ(織り姫)とわし座のアルタイル(牽牛)が夜には天空に、高く輝いています。
雲の向こうで。