新・本と映像の森 8(推理2) 森博嗣『Χ(カイ)の悲劇』講談社ノベルス
森博嗣さんのGシリーズ、第10作で、「Gシリーズの転換点、後期三部作」の第1作。
もちろんエラリー・クイーンの『Xの悲劇』を尊敬する著者のオマージュです。
今回の主人公はプログラマー島田文子(あやこ)、香港で会社のチーフ・エンジニアをしている。前に何回も出てきましたね。
人工知能のエキシビションの初日、島田に接触してきた遠田(おんだ)という男に、むかし愛知でおきた飛行機事故の質問をされる。
その事故に、島田が勤めていた「妃真加島」の真賀田研究所の同僚とその妻が関わっていると遠田は言うのだった。
その直後の、昼食場所へ向かう路面電車の密室のなかで遠田が殺され、島田の人生軌道はおおきく狂い始める。
遠田を殺したのは誰か?
島田の部家にカードを残した「X」とは誰か?
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物語の中間、プログラマーとしての島田文子が、ネット世界を自由自在に探索する場面は、興味深い。
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森博嗣さんの推理小説は、① S&Mシリーズ ② Vシリーズ ③ Gシリーズ (なお別巻「四季」があります)の順に読むことを、お勧めします。
一つひとつは独立していますが、つながりのある一連の大長編小説として読むことも可能です。その方がおもしろいです。
ただし ②と①は逆転も可です。執筆時期は①が先ですが、時期的には②がさきで、①が後です。