新・本と映像の森 240 小松左京「保護鳥」、『さらば幽霊 小松左京自選短編集』講談社文庫、1974年
同書、p108~135。
昨日、朱鷺のことを書いたので「関連」でSFの「保護鳥」を書く。
舞台はヨーロッパのどこか、英語とドイツ語とフランス語が通じる田舎町。
主人公の日本人カメラマンは泊まった宿で、その村の自然に生息する貴重な「アルプ鳥」のことを聞く。
話では保護鳥は敏感で2つがいだけ残っているという。
「アルプは繁殖力が弱いんですか?」
「繁殖期には特別の餌がいるんです。それがこのごろめっきりすくなくなって・・・」
主人公はカメラに500ミリ望遠レンズをつけて撮影していたのをとがめられ、宿からも追放される。
車で宿を離れた彼を、「工事中、迂回」の標識や、なぜかガソリン切れの「不運」が襲う。気がつくと彼は「保護鳥」のエリアに入り込んでいた。
彼はアルプの生息する森で鳥の叫びを聞いてしまう。
「ちなまぐさい、血と唾と腸の一部がとびちるような、恐ろしい叫びが・・・。
相かわらず、狂ったような呪詛の調子はこめられていたものの、今度は、そこに、毒々しい歓喜の色がこめられていた。
なにか、いいものを見つけた、という歓喜が・・・。
そして牙がガチガチふれあうような、あからさまな飢餓が・・・。
つづいて彼の背後から、もおう1つ別の叫びがあがり、前面の叫びとよびあった。
パサッ、パサッ、という大きな羽ばたきの音と、草をかきわける、ガサリ、ガサリ、という音が近づいてきた。」(p134)
終末まで、あと7行。