新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

3つ体があれば:切実に思う

2008-05-08 21:46:09 | Weblog

今日の最後の記事です。

今日の帰りにバスの中で考えていました。

僕はこれからどっちの方向に進むのだろうか? と。

 

僕は昔から「生物学」→「医療」、「教育」「兵法」に興味があり、このような分野の勉強をしていました。

今現在では「医療」「教育」に興味が集中していますが、今の政治の体制にもすごく疑問があって、何か出来ないかと思ったりします。

 

医療に関しては・・今現在、医師として活動していますが、僕は「医療」が楽しいのでやっています。研究も臨床も、興味の中から選んだ職業ですし、最期までやり通したいと思っています

また、後世を教える事は「将来」への投資の一つであり、未来の日本・世界に対してできることをしているようなものなので、非常に興味があります。 いや、教育システムというものではなくて「教える」と言う行為そのものに、興味があります。

 

ですから、今日も職場のほうから「ICLS」のブース長をやって~という話が来たのですけど、そういう話は断りません。

また、何かためになるような何かをしてほしい・・・といわれれば、現状で最良のものを何とか、できる範囲で教えます(準看護学院で感染症・膠原病も教える事になりましたw 好きなのでw)。

 

僕は誰かのためになれるなら、それは「僕の時間」は無駄にならないと思っているので、「教育」と言う分野にはどんどん参加したい。

 

ところが日本を見ていると、僕が好きであり、一番将来のために重要だと思っている「二つの分野」が非常におろそかになっていると思う。

 

医療や福祉に関しては、毎回書いていますが「経済活動」などをする上で「安心」を保障するものの一つです。家族が何かあった際に、まともな「介護福祉」制度があれば・・・経済の担い手が減る事もないかもしれません

 

医療制度がしっかりしていれば、突発的な事故だとか、病気だとか・・そんな事に心配しなくて良いでしょう?もし、医療システムが・・このまま破綻したら、「医療・介護」のために「貯蓄」しなくてはならず(購買力低下)、最終的に経済活動は低下していくと思います

それにまともに働けなくなるかもしれません。 ・・・逆に、一生懸命働かなくては「将来が不安」と言って働くかもしれません。それが幸せな事でしょうか?

将来の事故などにあったときのために、一生懸命働いている途中で・・・事故にあって、結局「健康な間に楽しめたこと」が楽しめなくなったり・・・。

 

僕はそういう心配をしなくて良いようにしたい。 日本中の人が「健康」の問題で、「将来」を不安に思い貯蓄するだとか、日常生活を楽しめなくなるなんて「真っ平ごめんだ」と思う

 

だから、医療福祉・介護と言う問題は「経済」にも直結するし、人の活動に直結するから・・・経済活動第一に考えていたとしても・・・更に優先されるべき問題だと思っています。

 

教育に関しては更に大きな問題だと思う。

教育と言うものは「一人一人の子供たち」の未来につながり、更に日本や世界の未来に繋がる問題だと思う。 何故、それがこんなにも手を抜かれているのか?

文科省の人が問題だとは言わないが、日本の官僚システム全体には問題があると思う。

 

教育ついでに子供の問題として、少子化対策。よく書いていますが、子供の数は「未来の日本の税金」に繋がるわけで、日本国全体として「将来」を考えるのであれば早急に実効性のある対策を練らなくてはなりません。

その一つとして、先日書きました「移民」の問題もありますが、あれが「コメント」にも書かれていたように「2~3年」で実施するつもりであれば・・間違いなく失敗します。 移民庁(http://blog.goo.ne.jp/amphetamin/e/4d49427fb05fca4d9cec5800fc2ce9f5) の記事で書きましたが、言葉の問題は大きいのです。

GW中に北海道で起きた「ネパール人」の方が奥さんを殺害した件も「言葉の壁」があったといわれていますが、言葉の壁を感じるような日本の「日常」に「移民」がやってきたとしても、ストレスを感じて事件を起こしたりするだけです。

その問題だけではなくても・・・一つの誘引になりえます。

 

今、様々な問題があり・・・自分でも「少しでも何か役に立てる事はないか?」と思っています。

しかし、医療は捨てるには惜しいほど「面白すぎる」のです。

 

僕は医者として生きて、医者として死ぬのでしょうけど・・・医療を中心に「政治」の問題にも、国民全体のためにできることはないかと考えています

 

こういうときに「体が3つあれば」と思います。

 

少なくとも一つの体は「政治家」になっていますね、きっとw

一つは医者

もう一つは教師かも知れません。

 

他の趣味をエンジョイするタイプになっているかもしれませんがw

 

医療の問題に関して、僕は経済にも直結すると思っています。是非とも厚生労働省をはじめとした、官僚のかたがたに「医療の重要性」を再認識してほしいと思います。

 

「医療の重要性」に関して、経済・安心・幸福・・・あらゆる面で重要ではないかと思われる方、応援をよろしくお願いいたします

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なかのひと 

こんなとき、もう一つ「いいな」と思うのは、マスコミの皆さん

記者さんや・・・テレビのディレクターさん、作家の方は・・・現場の人は医者に劣らず忙しいようですが、それでも多くの人に発信して、「国を変えていける力」があります

 

医者もプライドを持って「国民の、患者さんのために身を粉にして働いている」と思うのですけど、実際に接する患者さんには限界があります。ま、だから研究もしたいのですけど・・・。

 

だから、国民全体を相手にできるマスコミの方がうらやましい!

 

今更ですが、マスコミの皆さんに「医療」の重要性を、経済活動や国民の幸福などに絡めて、報じてもらえればとか、思っています。

「医療」に興味がなくても「経済活動」とか「国民の幸福」というKey wordに反応してくれるかもしれませんしね・・。

う~ん、マスコミの記者さんと言うのも「国のため」に活動できる大きな存在なんだけどな~

コメント (2)
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ちょっとした記事:一言コメントをつけていきます

2008-05-08 21:02:46 | 複合記事

さて、先ほどの長文のすばらしい文章のあとに、細かい記事をいくつか載せたいと思います

まず、CBから

ミャンマーに緊急支援-世界の医療団http://www.cabrain.net/news/article/newsId/15919.html;jsessionid=60B03D5B14D1B1D58BA1ED4D478814A1  

医師、看護師などの医療スタッフを世界各地に派遣し、人道医療支援に取り組んでいる「世界の医療団」(メドゥサン・デュ・モンド、本部パリ)はこのほど、ミャンマーを直撃したサイクロンで被災したヤンゴンの住民に対する第一次の緊急支援と救援医薬品の輸送を開始したと発表した。

【関連記事】医師の海外流出、加速するか(http://www.cabrain.net/news/article.do?newsId=11431)  

「世界の医療団」によると、被災地のヤンゴンでは1995年から、医師や看護師、ボランティアなどから成るチームがエイズ対策のために活動している。チームは、5月2日から3日未明にかけて発生したサイクロンで被災した住民に対し、救急治療のための無料診察を5日から開始している。  

チームは「飲料水の入手が困難で、電気も切断された状態にある。特に首都近郊の被災者への支援は非常に困難な状態にある」と報告している。ミャンマーでは昨年、物価上昇などで治安が不安定となり、暴動も起きている状況で、今回のサイクロンによる被害で食料品価格はますます高騰しているという。 このため「世界の医療団」では、支援物資や医薬品などを積んだチャーター便の派遣を検討している。 更新:2008/05/08 11:49 キャリアブレイン

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ミャンマー政府はまだ派遣を拒否しているのでしょうか? しかし、派遣OKになったら・・・日本も出るんだよな・・・などと思いながら、記事を読んでいました。

次もCBです 一応Dailyアクセスランキング1位ですw

全国医師連盟 6月8日発足へ

http://www.cabrain.net/news/article.do? newsId=11431  

患者と医療従事者の権利の確立や適正な診療環境の実現などを目指す「全国医師連盟」が6月8日に発足する。行政や司法、メディアに医療の在り方を提言し、真の社会貢献につなげるのが狙い。また、個人加盟制の労働組合「ドクターズユニオン」を創設して医師の労働環境改善などを目指す。

全国の医師らが昨年8月に設置した「全国医師連盟設立準備委員会」が発足に向けた活動を展開。今年1月に開いた総決起集会には、医療関係者ら約110人が集まった。4月末現在の会員数は713人で、このうち64%を病院の勤務医が占めている。  連盟発足後には、ドクターズユニオンの創設のほか、医療費抑制政策の転換に向けた国への働き掛けなどを展開する。また、医療記事の誤報を防ぐため、記者向けの医療事案解説サービスなどの取り組みも視野に入れている。  

6月8日午後1時から、連盟の発足を記念してTOKYO FM HALL(東京都千代田区)で設立集会を開く。集会では、医療関連訴訟や医師の長時間勤務などに関する講演を予定している。

更新:2008/05/07 12:37 キャリアブレイン

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先日も紹介しましたが、6月8日発足です。 これからどう発展していくのか。可能ならば、様々な団体と手を取り合って「同じ目的」達成のために頑張ってほしいです

続いて、産経新聞

疲れ果てる勤務医の実態 医師不足、低月給…国は“特効薬”示せず

5月2日22時39分配信 産経新聞  

医療の最前線に立つ勤務医が疲れ果てている。現場からは医師不足による過重労働が原因との声が上がっているが、国は負担軽減を図る“特効薬”をいまだに示せていない。 医師への過度な負担が医療行為の「質」に影響を与えるのは必至で、医療崩壊につながるとの懸念は絶えない。 

厚生労働省によると、日本の医師数は推計25万7000人(平成16年)。内訳は病院の勤務医が16万4000人、開業医(診療所勤務の医師を含む)が9万3000人となっている。 世界保健機関(WHO)が平成18年に発表した報告書では、人口10万人当たりの日本の医師数は198人。 

これに対しフランス337人、イタリア420人、スペイン330人、ロシア425人-など。 日本は経済協力開発機構(OECD)に加盟する30カ国中27位(2004年)と圧倒的に少ない。 

日本は総数で加盟国平均の38万人に約12万人も足りない。 

日本の大学医学部の入学定員は約7500人で、引退や死亡した医師を差し引くと、毎年約4000人の増加にすぎず、加盟国平均に達するには30年以上かかると試算されている。 

医師不足が特に深刻なのは産科と小児科だ。産科医は6年に1万1400人だったが、16年は1万600人と減少した。 

小児科医も6年に1万3300人だったのが16年に1万4700人とわずかに増えただけで、現状の勤務実態に比べ、あまりに貧弱だ。 

医師不足顕在化の背景には、国が長年にわたり医療費抑制策を推進してきたことがある。 しかも16年に始まった医師免許取得後2年間の臨床研修必修化に伴い若い研修医が都会の病院に集中、大学病院の医師確保が難しくなり、大学から各地の中核病院に派遣されていた医師の引き揚げが相次ぎ、医師の「偏在」という新たな問題も生まれた。 

厚労省によると、病院常勤医の勤務時間は、労働基準法による法定労働時間(40時間)を大幅に上回る週平均70・6時間。 

社団法人日本病院会が実施したアンケートでも、宿直を除く一週間の勤務時間は「44時間以上」が83・4%で、「40時間未満」は4・1%にとどまった。 

また1カ月の宿直回数も「3~5回以上」が57・9%に達した。 

一方、厚労省が昨年10月に公表した医療経済実態調査によると、勤務医の平均月収は国公立病院などが102~119万円で、民間病院は134万円。 

これに対し開業医は211万円と勤務医の平均月収の約1・6倍も高かった。 

こうした現状を踏まえ、国は今年度の診療報酬改定で、医師不足が深刻な病院診療科に対し、計1500億円の重点配分を決めた。 

「医師の偏在が原因」とした従来の見解も改め、「絶対数が不足している」と軌道修正した。 福田康夫首相は5月中にも医師不足の緊急対策をまとめる方針を打ち出している。

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ま、政策はまとめられないでしょうけど・・・。

 

勤務医の平均・・と書くと、全員が給料良いと思われるかもしれませんが、無給の大学院生とかをカウントしてないと思いますね。医師ではなくて学生としているかも・・・?

あと・・・見出しで「低月給」と書いてありますが、医者は恐らく反感を買いますね。 生活が苦しい人たちがいる中で、お前らは十分もらっているだろう・・・って。

これは僕の後輩が言っていた事ですけど、良くわかります。

もちろん、勤務状況や「医療技術・医療知識」などというスペシャリストと言う考えで行けば・・・・ある意味では当然の求めかもしれませんけど・・・。

 

そもそも、日本の国全体がおかしいのですけど。国策なんでしょうねw

 

さて、続いて北海道の事なので・・・

 医師不足:道参事・田中光一さん、東京で医師探し 「道を切り開く」と懸命 /北海道

5月8日11時1分配信 毎日新聞  

◇配属1カ月 深刻な医師不足を食い止めようと、道は本年度から東京事務所に医師探しを専門に担当する幹部職員を配置した。課長級の田中光一参事(53)で、広報公聴課や保健福祉部で勤務経験があり、情報発信と医療事情の両方に通じている点が買われての起用。この1カ月、厚生労働省や都内の医師会、大学病院などを精力的に回った田中参事は「自分が道を切り開くつもりで頑張る」と張り切っている。 道が東京での医師探しに力を入れるのは、道内での臨床研修を希望する医学生が急激に減っているためだ。道は医学部卒業予定の学生を対象に03年度から毎年、東京で医療機関の合同説明会を開いているが、03年度に73人いた参加者が今年4月には30人を下回った。 

医療現場の医師不足は04年度から始まった新臨床研修制度をきっかけに大学病院が研修医不足に陥り、医局から地方病院への医師派遣が滞ったことが背景にある。道内では札幌や旭川など都市部への医師集中が地方の医師不足に拍車をかけており、自治体病院の経営悪化とともに深刻な問題になっている。 

田中参事は「地域医療に関心のある学生は必ずいるはず。北海道が医師を募集していることを多くの医学生に知ってほしい」と東京での情報発信に頭をひねっている。

【鈴木勝一】 5月8日朝刊

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北海道も含めて、どこも医師は足りないでしょうけど・・・。ただ、何かをしようと行動している事はすばらしいと思います。

すこしだけ、猫の手程度ですが・・・Blogで紹介させてください。

 

と、いうことで・・・・記事を絞りきれずに今日はいろいろな記事を紹介してみました。

 

最後の記事ですが、北海道も含め「医師」は足りていません。恐らく都会ですら、もうすぐしわ寄せが来て「崩壊」していくと思います

ただ、今から体勢を立て直せれば・・・日本の国は復活していけるかもしれません。

そのためには「政治家」や「医師・医療関係者」や「地方自治体」が頑張っても限界が来ていると思います

先日、「全国総柏原化」というスローガンで、記事を書きました。

「北海道と埼玉県:埼玉県は!そして全国総柏原化へ!」(http://blog.goo.ne.jp/amphetamin/e/f0cbb8e0a2fe2c025964f6ca100c0c15

国民全体で、医療や教育・・・そういったものを作っていくときが来ていると思います。

ひとりひとりがそういう気持ちでいければ、時間は少し稼げます。

その間に・・・医療や教育と言う問題を建て直せれば・・・と考えています。

医療や教育の問題に関して、「国民全体」が一つになって考えていかねばならないと思われる方、応援をよろしくお願いいたします

http://blog.with2.net/link.php?602868

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なかのひと 

本当に最近思うことがあります。次の記事は引用なしで手書きで書きます。

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第三次試案に対する学会の反応:救急医学会は反対姿勢

2008-05-08 20:26:39 | 医療

こんばんは

今日は一日実験三昧でした。恐らく、In Vitroで必要なDataはこの「のんびりペース」でも、5月末くらいまでにはでるのではないかと思っています。 今日の実験は成功ですね。とんでもない事が起きていない限りは、そのままDataは出せそうです。

さて、まず最初に、コメントもいただきましたが「救急医学会」の第3次試案に対するコメントを掲載します

http://www.jaam.jp/html/info/info-20080428_1.htm

 厚生労働省「医療の安全の確保に向けた医療事故による死亡の原因究明・再発防止等の在り方に関する試案」(第三次試案)について

--------------------------------------------------------------------- 会員各位 有限責任中間法人 日本救急医学会 代表理事 山 本 保 博 診療行為関連死の死因究明等の在り方検討特別委員会 委員長 有 賀 徹  この度、厚生労働省「医療の安全の確保に向けた医療事故による死亡の原因究明・再発防止等の在り方に関する試案」(第三次試案)について、本学会特別委員会「診療行為関連死の死因究明等の在り方検討特別委員会」において、見解がまとめられました。 この見解を厚生労働省のパブリックコメントに投稿いたしましたので、会員の皆様にご案内申し上げます。

---------------------------------------------------------------------日本救急医学会「診療行為関連死の死因究明等の在り方検討特別委員会」による見解

平成20年4月9日  

上記委員会においては、厚生労働省における「診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会」による「第三次試案」(平成20年4月3日)そのものには反対いたします。より大所高所からの視点を加えて、よりよい“試案”として作成し直されますよう希望します。以下に私どもが議論しました内容を記載いたします。

Ⅰ中立な第三者機関に対する国民の期待など 

医学の進歩・発展に伴い、わが国における医療の質も益々高度なものになり、それは総じて国民の健康と安全に大きく寄与している。しかし残念ながら最善と思われる医療の提供をもってしても不幸な結果となる症例が存在することも事実である。このような症例の原因究明と患者・家族ないし遺族への説明は、そもそもその症例を担当した医師らの責任であることは当然である。しかし、それに加えて、高度で複雑な医療内容の透明性を担保するために、専門家を交えた中立な第三者機関が存在することは、患者・家族ないし遺族と、担当した医師らとの双方にとって相互の理解を図る上で有益である。また、潜在した過失の存在が明らかになれば、その責任が明確になるだけではなく、同様な事例での貴重な教訓となり、その意味で再発の防止にも大きく貢献するものと思われる。 

従って、医療の安全性の向上をめざして、医療行為に関連する予期せぬ事象、特に死亡に関して客観的で、公正性・透明性が確保された仕組みが必要なこと、より具体的には学術的な調査・検討機関が必要なことに全く異論はない。また、このためには、専門家集団である各領域の医学関連学会が全力をあげて協力すべきであり、日本救急医学会も例外ではないと考える。 しかしながら第三次試案においては救急医療の現状や特殊性に対する理解、配慮が充分になされているようには見受けられない。本案のままではわが国の救急医療が崩壊することを本学会としては直言せざるを得ない

Ⅱ救急医療の本質と死因究明等の在り方について 

救急医療の本質は緊急性の高い患者に、一刻も早く処置を施すことにある。その意味で救急医療は他の医療分野と大きな違いがある。後者では専門医への紹介などによって診療の対象を自らの専門領域に限定することが可能であり、時間的な余裕のある慢性疾患や計画的な治療・手術等の診療行為が主体となる。 

しかし、救急医療では専門領域以外の救急患者に対応することが多々強いられ、しかも緊急性が高く重症であればあるほどその必要性が高まる。例えば上腹部痛を主訴とする急性心筋梗塞に消化器内科医が、あるいは胸痛を主訴とする特発性食道破裂に循環器内科医が対応することなどがある。急速な医療の高度化に伴い内科・外科に限らず、あらゆる医療領域が専門細分化されつつある。あらゆる領域の医療の進歩があまりに急速であるために、自らの専門領域以外の分野の進歩を常に把握することはもはや不可能である。すなわち、それぞれの領域の専門医にとっては「標準的な医療行為」であっても、他の領域の医師にとっては標準的であるとは決して言えないことが多い。 

さらにまた、「標準的な医療行為」を行う前提として、必要な人員や設備が全国の病院に整っているという状況ではない。ありていに言うなら、全国的にみれば、救急医学を専門とする救急科専門医などは著しく不足している。つまり、救急医療は、専門診療科を問わない医師らによる、いわゆる応急処置と呼ばれる協力なくして成立し得ない。すなわち救急科専門医でない各専門診療科の医師による、限られた環境と条件の下での救急医療を期待することに留まらざるを得ない。または、そのように留めるべきである。このような現状に対する十分な認識を欠いて第三次試案を導入すれば、「標準的な医療行為から著しく逸脱した医療であると、地方委員会が認めるもの」と明確な定義もなく、また判断基準も曖昧なままに、地方委員会に委ねられる「重大な過失」が捜査機関へ通知される危険性があって、それを冒してまで救急医療に今後も携わり続ける各診療科の専門医師は極めて少なくなるであろう。勿論、救急科専門医にとっても、重症患者が原因不明のまま死亡する、積極的な救命処置を経てその後に死亡するなど、「重大な過失」と隣り合わせの状況に不安を抱かざるを得ない。本試案に則った届出義務が課せられれば、多くの医師が救急医療から撤退することが強く懸念される。

Ⅲ救急医療の萎縮と崩壊についての議論  

「立ち去り型サボタージュ」という言葉に象徴されるように、勤務する医師の確保が困難なために病院は多かれ少なかれ機能を縮小することを迫られている。その際に、まず対象になるのが救急医療である。なぜなら24時間365日の対応を求められる救急医療こそが、勤務医の過酷な労働の元凶であり、また救急医療にまつわる苦情や紛争が勤務医の大きな精神的負担となっているからである。実際に「救急医療を行うと常勤医師が次々と辞めていく」ことを理由に救急医療からの撤退を決断する病院は後を絶たない。 

このような状況の中で、第三次試案で示されたように「標準的な医療行為から著しく逸脱した医療であると、地方委員会が認めるもの」と極めて曖昧な定義の「重大な過失」が捜査機関への通知の対象となれば、わが国の救急医療は壊滅するであろう。地域社会に対する責任と義務感から辛うじて救急医療を守っている病院までもが、救急医療が原因で勤務医師を確保できなくなるために、救急医療からの撤退を余儀なくされるからである。 さらには、これらの病院が担ってきた救急患者が救命救急センターなどの三次救急医療施設に集中すれば深刻な状況が生じる。救命救急センターが患者増に対応できないだけではなく、最重症の救急患者を収容するという本来の役割を果たせなくなる。そしてこの徴候は既に出始めている。この救急医療の連鎖的崩壊は止め処なく続き、わが国の救急医療提供システムは壊滅の危機に瀕する。「救急医療は医の原点であり、国民が生命維持の最終的拠り所とする根源的な医療」と位置づけられているが、今やわが国の救急医療提供システムは危機的状態である。第三次試案はその危機を一層高め、救急医療の壊滅を招来することが強く危惧される。

Ⅳ医療安全を構築することと紛争を解決することの違いについて  

病院医療において、医療安全そのものを構築する活動と、いわゆる苦情対応ないし紛争処理とが渾然一体となって行なわれていた時期があった。院内に配置されたリスクマネージャーが次から次と疲弊していく実態を分析する過程を経て、現在ではこれら二つの課題は病院医療を展開する中で明確に区分けされている。つまり、医療安全と紛争解決との本質的な違いに関する認識が深まったということである。 

今では、関係した個人の責任を問うのではなく、些細な事例でも職員皆が共有し、院内で注意を喚起したり改善策を普及させたりすることを目的として、事故・インシデントレポートが提出されている。急性期病院においては、このようなレポートが100床あたり1ヶ月に40件以上が妥当な水準であると言われていて、例えば500床規模の地域中核的な急性期病院であれば、年に少なくとも2500件程度のレポートが出され、それらを基に医療安全を向上させる活動が展開されることとなる。これとは別に、患者・家族ないし遺族からの苦情などがあれば、またそれらがなくとも解決すべき重要な課題が想定される場合などにも、院外からの識者などを招聘して個別の委員会を開くなどを病院の多くが行っている。       このように、重要な事例では院内外からの情報を収集し、それらを用いながら患者・家族ないし遺族に納得のいく説明を行なうという方法である。年余を経て病院の安全文化はこのように漸次進歩して来たと言うべきである。 

以上のような病院医療における経験は、「医療安全調査委員会(仮称)」にとっても貴重で有意義なものであるに違いない。事故又はインシデントを調査する唯一の目的が、将来の事故又はインシデントの発生の防止であるなら、多くの事例を集積せねばならない。その場合に、罪や責任を課すことを同時に行なってはならない。つまり、医療安全を向上させる取り組みは、罪や責任を課すための司法上、または行政上の手続きや調査とは分離されるべきものであることを理解せねばならないということである。再発防止と責任追及とを同時に行なおうとする試みは、本来の再発防止の対策とはほど遠いものである。第三次試案に書かれている通り「責任追及を目的としたものではない」が真にその通りならば、行政処分を行なう機関にも、捜査を行なう機関にも事故・インシデントに関する報告を用いた通知をすべきではない。責任追及を目的としていないことの制度上の担保がなければ、結局のところ、現場の医療者は安心して診療に当たることはできない。ここに救急医療が色濃く含まれるのは前述の通りで、至極当然である。

Ⅴ厚生労働省を超えた広い立場から 

「診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会」において、医療、行政、法曹、患者、警察・検察など多くの立場から様々な意見が述べられている。しかし、議事録を読む限り、議論がかみ合って、合意がみられたように思われない。第三次試案は本質的に第二次試案と異なるものではなく、記載された文章の表現はいかようにも解釈できるものである。実際、医療側に配慮した表現に変更されているがゆえに、元検事からの反論も報道されている。先に、「標準的な医療行為から著しく逸脱した医療であると、地方委員会が認めるもの」と明確な定義もなく、また判断基準も曖昧なままに、地方委員会に委ねられる「重大な過失」が捜査機関へ通知される危険性があることについて言及したが、「委員会で問題となった事例だけ警察で扱う」という文言は、結局単なる“お願いの域”を出ないといっても過言ではない。  

もし、真にその通りであれば、刑事訴訟法や刑法そのものを変える必要があろう。しかし、これは全く実際的ではない。この部分について医療に携わる者は重く受けとめておかねばならない。このような事情に鑑みれば、この問題が厚生労働省の一委員会の中の議論だけで解決できるテーマでないことは自明である。 また、この問題の本質は、結局のところ、医療自体に内在する“リスク”に関する考え方が、医療と法曹とのそれぞれに携わる者の間で、または医療者と一般国民との間でも異なっていることに起因するように思われる。医療、行政、法曹、患者、警察・検察など多くの立場がこの本質的な議論を積極的に行なう必要がある。それらを経て、行動の規範や思考の過程などにおける違いなどについて相互に理解しあうならば、先の“お願いの域”ではない、また安全の構築と紛争の解決との違いを峻別できている“メリハリの効いた試案”へと進展できるように思われる。 

最後に、厚生労働省を超えた広い立場からの議論が是非必要であることに関する、もう一つの意見を追加したい。現在進行している救急医療の崩壊については、その原因の一端が厚生労働省による施策の結果でもあることは周知である。その故に、救急医療に関連した医療事故の中には、救急医療体制の構造そのものに起因する、言わばシステムエラーという要素が関与した事例も少なくない。医療事故を調査する、または医療安全を構築する委員会を厚生労働省の中に設置するのであれば、そこでこれらのシステムエラーともいうべき諸問題を鋭く指摘することはまず不可能に近いと言う他はない。 

以上のことから理解されるように、「診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会」に関する議論は、厚生労働省の一委員会としての範囲をはるかに超えている。我が国における行政、司法、立法といった大所高所からの視点が求められ、それは我々の社会のあり方そのものとも強く連動する。そのような議論を避けては通れないことを肝に銘ずるべきである。従って、もし行政府のどちらかにそれなりのリーダーシップを求めようとするなら、重要課題について各省より一段高い立場から「企画立案及び調整」を行なう内閣府こそが相応しいように思われる。

Ⅵまとめ 

医療の現場においては、中心静脈の確保などさまざまな侵襲的な処置、副作用のある薬剤の投与、危険を伴う検査・手術などが日常的に行われている。各々の医療行為にはそれぞれに合併症がある。そして、一定の頻度で合併症が発生することは、病院での多数のレポートからも既知の事実である。医療とは後で振り返れば、判断の誤りがいくつも指摘できる医療行為の連続の上に成り立っているという言い方もあながち間違いではない。救急医療とはこれら負の側面を一層強いられる医療であると言うことができる。そして、そもそも救急医療は予期せぬ急病や事故を対象としている。 

以上の議論などを経て、日本救急医学会における「診療行為関連死の死因究明等の在り方検討特別委員会」は、厚生労働省における「診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会」による「第三次試案」(平成20年4月3日)そのものが、現行の救急医療に萎縮医療どころか壊滅的な影響を与える可能性とその懸念について指摘した。それらをまとめると以下のようである。

第三次試案は救急医療の本質的な部分への理解が充分なされているとは言い難い。

第三次試案にそのまま則るなら、救急医療に携わる医師は萎縮し撤退を余儀なくされ、救急医療は崩壊する。

医療の安全を確保することと、紛争を解決することとは、全く異なるプロセスを必要とする。

よりよい試案を作成するには、厚生労働省内の一委員会という範囲を超えて、大所高所からの議論を集約させる必要がある。  

中立な第三者機関の設立は是非とも必要であり、ここに書かれた意見などを容れながら、“よりよい試案”を作成することを期待したい。そしてその過程においては、深刻な影響をそもそも受ける可能性がある救急領域の分野からの意見を引き続き聴取し、またそのような委員を議論に加えるなどして、大所高所から“よりよい試案”の作成に反映させることが必要であると考える。

以上

----------------------------------何も、コメントする必要がないくらいすばらしい内容です。 第3次試案は結局第2次試案となんら変わりはない・・・という言葉がすごく本質を突いているように思います。

他の問題も一つ一つ書かれていて、非常にわかりやすいですし・・・救急医療という分野が崩壊すると言う意見に対して、厚生労働省がどのように動くのか・・・と思っています

救急医学会の第3次試案への反対意見、説得力が合ってすばらしいものだと思います。これを読み、やはり「第3次試案」は問題だろうと思われる方、応援をよろしくお願いいたします

http://blog.with2.net/link.php?602868

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なかのひと 

これで、強行可決したら厚労省も国も・・・何を言われても文句は言えない様な気がします。

本当に何を考えているのだろうか?

コメント
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