日経BPに森永卓郎さんがこのような記事を書いていた http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/o/134/index.html
医療費のコスト削減策はこんなにある
後期高齢者医療保険制度が4月から始まり、少ない年金から保険料を天引きされたお年寄りたちの悲鳴が上がっている。
(中略)
厚生労働省や政治家は、国民の負担を増やす前に、なぜ医療コストを削減する努力をしないのか。彼らはその点について一切触れようとしない。そして、国民に対して「高齢化が進むと医療費が増えるのが当然」だと信じ込ませようとしているのである。
(中略)
支払いは増えているのにサービスが低下している。これはどう考えても納得できない。医療費増大の原因は本当に高齢化だけが原因なのか。医療のコスト構造自体も、じっくりと検討すべきときに来ているのではないだろうか。
(中略)
なぜ、医療コストが下がらないのか。その理由は明らかである。需要が爆発的に増えているのに、供給を増やしていないからだ。高齢者が増えて患者は増大しているのに、医師の数が絶対的に足りない。
実際、この10年間の医師国家試験合格者数をみると、2001年の8374人を除いて、ずっと7000人台で推移している。医師の供給はまったく増えていないのだ。その最大の理由は、政府が医学部の定員を増やさないことにある。
では、なぜ医学部の定員を増やそうとしないのか。 ある政治家は、「医者の数がどんどん増えると、それに比例して医療費が増えてしまうからよくない」と述べている。だが、そんなことはありえない。供給が増えれば値段が下がるのは必然であり、国民が支払う医療費を抑えることができるはずだ。
また、厚生労働省によれば、高度な知識をともなう医療分野の人材を医学部で養成するためには大きなコストがかかり、人数を増やすことは容易ではないという。
だが、それなら、なんとか頭をひねって対策を考えるのが役人や政治家の務めだろう。医療制度の危機は待ったなしなのである。
例えば、こうしてみたらどうだろうか。建築士と同じように、医師の資格も1級と2級に分けて仕事を分担するのである。
確かに、先端医療の場合には、高度な知識や技術が必要なことはわかる。しかし、中高年やお年寄りに多い慢性疾患の場合は、さほど高度な医療判断が必要だとは思えない。極端なことを言えば、医者は話の聞き役にまわればよく、出す答えもほぼ決まりきったもののことが多い。もし、手に負えない症状であったり、急性疾患の疑いがあれば大病院にまわせばいい。
そこで重要になってくるのは、先端医療技術よりもコミュニケーション能力である。そうした技能の優れた人を養成して、2級医師にするわけだ。2級医師は4年制で卒業可能として、とりあえず大量に育成する。
最近の若者には、福祉の分野で働きたいという意欲を持つ人が多いから、人は集まるだろう。病院が彼らを年収300万円ほどで雇えば、若年層の失業対策にもなる。
病院としても、そうした2級医師を採用して「早い、安い」を売り物にすれば人気が出るだろう。高齢者にとっては、待ち時間が減って、話をじっくり聞いてくれるので喜ばしい。こうした医療機関が普及すれば全体の医療費を下げられる。みんなハッピーになるのではないか。
(省略)
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ひとこと・・・・。一部は賛成、ほとんど反対。 賛成する場所は「医者を増やす必要性」だけ・・・である。
他は二級医師という制度は・・・4年だけで何かできるようになるとは思えないし(そもそも6年でも短いかもしれないのに)・・・そんな医師に診療して欲しいか・・・といわれたら、恐らく「二級医師」という名前だけでみんな診療を受けたくないと思うのではないだろうか?
だって、だから大病院志向が強いわけだし・・・・。
それと300万って何w
年収300万で・・患者さんを診ろというのはひどくないか?
恐らく、心などにゆとりがないと他人を診るのは厳しいと思うが(w
また、責任を持って診療できるかどうかわからないような医師を大量に増やすことで、医療事故や見逃しが増えたらどうするのか?
ついでに、ただ話を聞くだけの医者がいればよいというのであれば、それは「医療が不要」という事ではないのか?
僕は素直には聞けない意見だと思いましたが、皆さんはどう思われましたか?
さて、ではどうしたらよいでしょうか?
ここから先は僕の個人的な意見です。
僕は今の医療に関しては「第3次試案」などの問題もありますが、医師の数を増やす事と教育制度に関して主に考えています。今を見ずに将来ばかり見ている・・・足元疎か組みですw
他の先生方を信じて、僕は先を見ながら(対策などを考えたり、情報収集しながら)生きております。
まずは問題点を整理したいと思います。
医師を増やす事に関してですが・・・いつぞやも書きましたが「大学医局」の力を削ぎすぎて、医大生を教育するゆとりがない・・・というのが現状です。
「各医科大学病院」に勤務する医師は「臨床」に対する研修医と医大生の教育を行いますが、医師不足の波が大きく・・・本来の「研究」「教育」という分野をカバーする事ができなくなってきています。そして、臨床面でも影響が出始めているわけです。 今の医大では「医師」を急速に増やそうにも、増やすための教員となるべき医師の数も不足しており不可能(?)です。
また、研修医に関しては「新臨床研修制度」以降、お客様扱いの研修医が増えてきたとはいわれます。特に産婦人科などの領域では、専門外の研修医は手を出しにくい領域であり、また患者(妊婦)さんも嫌がるため、まさに無駄な研修になりかけています。
はっきり言えば学生の延長になっています。
かく言う僕も「新臨床研修1年目」ですがw
3つ目に学生実習も「大学病院」でそこまで手が回らない状況ですし、どう考えても効果的な実習になっているとは考えにくい。 ということで、これらに関して個人的な意見を書きます
過去にも書いた記事がいくつもあると思いますが、まとめだと思ってください。
たぶん書き損なっていることもいろいろあると思いますが・・・・。 まず、学生実習ですがCBTという「臨床実習を受ける前に、知識技能があることを確認する」試験があります。
これを受けた以上は・・本来は「どこの病院でも病院実習が受けられるようにする」ようにするのが普通です。(因みに、僕の1回目の改革はこいつを実施させようと、他の大学の学生をたきつけにいきましたw)
CBT+OSCEをクリアした学生にいろいろな病院を実習できるようにします。 まず、この段階ではCBTはともかく、OSCE評価が一定にならなくては一律化が難しいという話がありましたが(文科省の方より)、逆にそれが出来れば実施可能ということでした。
で、これを実施させた段階で学生実習の評価に「ポートフォリオ」を導入し、これを国家試験の成績に加えます。イギリスのマネです。
しかし、そうすることで「学生実習」の充実化、そして「学生実習の重要性」を認識してもらいます。僕も学生実習のときの症例ノート(すいません、まだ持っています。病棟の患者全員のメモ書き)のおかげで、今までにずいぶんと助けられました。
医師国家試験は「医大」に入学できる人間はある程度勉強すれば、受かってしまうので・・・いろいろな意味で、病院実習をおろそかにして「医師国家試験対策重視」になってしまう学生を見たりします(特に現在)。
なお、この制度は「学生教育」に手を回しにくい「医大勤務医」の負担軽減と、学生が様々なところを見てみたいという希望の両方をかなえさせたいという考えです。
これをする事で「医学部入学者数の大幅増大」は可能だと思う。他の方法では不可能だろう。実際に大学で「講義だけ」は大丈夫だが、臨床実習は穴が開くのは目に見えている。
病院実習が効果的に行われ、これが「クリニカルクラークシップ」のようになれば、少しだけ医療従事者の補充にもなるかもしれません。また、学生実習の充実は「基礎医療技術の早期習熟」に繋がります。
ここまでくれば「研修医制度」も改革してよいと思います。僕なら「最初の一年を半年(内科or外科)+3ヶ月救急+3ヶ月麻酔」+「残りの1年は自分のやりたい診療科」にします。
あと、もう一つの医療従事者増員は「準看護師の増員」+「看護大学院→NP」というセット。NPに関しては「森永さん」の二級医師ではないですが、診療行為のほうに参加してもらう。
しかし、診療というのは森永さんが書かれているような適当なものでは決してなく、非常に責任感を必要とするものである。
今日のマルクですら
「見た目も骨髄。顕微鏡で見ても未熟な細胞がいるから骨髄。けど、万が一とり損ねていたやつをFCMに出していたらどうする」
とか、責任感を感じながらやっています。
ですから、看護大学院のようなものを作り、「責任感+向上心」の両方を持ちえた看護師さんが、診療側サイドに入ってくるようなものの方が良いと思います。
あとはそうやって看護師さんを診療側にとってくるのであれば、準看護師を増員することで数を増やす。しかし、病院当たり30%までという制限を撤廃しなくてはならない。
厚労省などが「医局」というものを押さえようとした理由もわかりますし、「医局の功罪」というのは実際あるようにも思えます。
そういう意味では「人事組織としての医局」ではなく、「純粋な教育組織としての医局」を作れたらと考えています。
これに・・・僕は「横断的教育組織」を作れればと思っています。
これは・・・先日少ししゃべらせていただきましたが・・・まぁ、詳細はここでは書きません。実施できれば、良いところ取りをしながら、うまく医療が発展していけるかもしれません。
医局というものを「教育」「研究」「臨床」ができるような組織にし、しかも現状のように仕事内容にあわない給与ではなく、「大学の医師」としてのプライド(?)と心の余裕が持てるようになれればよいと思います
まぁ、こういった対策を行いながら・・・20年くらいのSpanを考えて運用していくしかないのではないかと思っています。
まとめます。
今の医師不足は偏在ではなく、実際に足りていないのは間違いのないことであり、これを是正する必要がある。
そのために中途半端な医師を大量生産して「医療」の質を下げるのはおかしいと思う(すなわち、質を下げて「コスト」「アクセス」を採る政策)。
質の悪い医者を大量に作るのではなく(しかも失業対策w)、全てが一つの流れになるような形での「医師増加政策」をとり、更に医療教育システムを改善することで質の確保、更にそこから「開業医⇔勤務医」の患者のやり取りが「信頼関係」+「情報交換」によりスムーズに行われる状況を作れたらと考えています。
こんな意見を持っていますが、一部でもなるほどと思っていただけましたら、応援をよろしくお願いいたします
http://blog.with2.net/link.php?602868
明日は、また出張します。健康診断で胸部異常影を見つけましたが、その人がくることになっています。必要があればさっさと必要な検査や治療が受けられるように持って行くつもりです。
では、また。