新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

麻疹の流行とインフルエンザ対策:国民を失えば・・・税収も減るのにね?

2008-05-28 23:44:25 | 医療

さて、もう一つ記事を書きたいと思ったのだが、看護関係の記事と公務員法の記事とで迷っていました

 

しかし、迷っているなら自分の考えを書こうかと思い、ちょっと書きます。 今日の診療途中、看護師さんと話をしていました。

 

麻疹ワクチンが足りていないという事で、麻疹ワクチンをうつ人間をTriageする必要があったのです。

 

一応、成人麻疹は1000~1500人に一人脳炎を発症するといわれています。結構な高率です。

 

で、職場関係で麻疹ワクチンがまったく足りず・・・少し相談を受けました。

 

2週間前に患者が出た職場A

先週患者が発生した職場B

 

両方にうてるだけの量のワクチンが手に入らず・・・・どちらかの、麻疹感染の既往がなくてワクチン接種もない人にうてるかどうか・・・・という事であった。

 

基本的に潜伏期10日、発症して・・・3日位して2回目の発熱の際に発疹が出て気がつかれるので、カタル期を考えると1週間ごとのサイクルで来ているのは・・・まぁ、概ね了解できる。

 

感染確率の高い人に「麻疹ワクチン」を接種するのは常套手段です

 http://www.mhlw.go.jp/qa/kenkou/hashika/index.html

 

しかし、数がまったく足りない。さてどうするか・・・・。麻疹だから・・・とはいえ、脳炎を発症すれば・・・危険な事この上ない。

 

この麻疹ワクチン接種率の話もそうだが、インフルエンザのパンデミックに関しても突っ込みどころ満載である。

 

まずは国立感染症研究所のHPからです

http://idsc.nih.go.jp/disease/influenza/pandemic/QA17.html

 

ここでは2500万人という患者の発生予測の下にワクチンを確保しています。まぁ、お金が無駄になるかもしれないから・・・という国の考え方なのだと思います。

ついでに言うと計算に使っている25%という感染予測は・・・単純に考えたら2800万になるわけで・・・数が足りない

更に予測死亡率は2%という数字を出しているが、過去のインフルエンザパンデミックは死亡率は50~60%であり、更に新種のウイルスに対するワクチンの効果は通常のものより低いというDataがでている。

 

日本はインフルエンザパンデミックを生き残れるのか?

 

そして・・・もう一ついいたいのは・・・・

「お金より命だろう!」という常識的な意見とは別に

「もし、パンデミック対策に失敗して1000万人死んだら、それだけ税収が減るのだけどね。しかも長期に・・・。とくに幼なければ、幼いほど

という考えもある。 将来の税収も考えれば、万全の対策を採ることのほうが重要だと思うのですけど、これは僕の考えがおかしいのでしょうか?

 

今回の麻疹騒ぎで、ワクチンが足りないときのもどかしさを痛感しました。ワクチンが十分量あれば、感染している可能性のある人間全員にうてるのに・・・これでうち損なって、そっちのグループで脳炎が出たら誰が責任を取るのだ

 

また、一般的に知られていることだが、欧米各国の対策は日本とは異なる。

 

例えばアメリカでは2005年9月の国連総会で国際的な協力体制の構築を提案し、新型インフルエンザ対策に毎年約 9,000 億円の国家予算を計上、「国家戦略」にすると表明しました。

アメリカ保健省が実施したマスコミ関係者を対象にした会議では、致死率を20%と推定し、流行時の行動制限等の対策を公表しています。

で、アメリカはパンデミックワクチンに重点をおき、新型インフルエンザ発生と同時にパンデミックワクチンを大量製造し、半年以内に全国民に接種できるようになっています。プレパンデミックワクチンも2800万人分備蓄しています。

 

日本はプレパンデミックワクチンが2000万人分備蓄してありますが、通常6~7割の人がプレパンデミックを接種していたら、パンデミックになるのを防げるとしており・・・まさに準備不足の感が否めません。

 

その上パンデミックワクチンの準備も不足しているとなれば・・・何が起きるかは予想できません。

 

 そう思いながら、記事を書いています

 

調べながら書いていたら、今週こんな記事が書かれていました。

Gooニュースからです。

 

新型インフルエンザで「20兆円の損失・64万人が死亡」 日本政府はなぜ最悪の事態に備えないのか2008年5月26日(月)11:49

http://news.goo.ne.jp/article/hatake/politics/hatake-20080526-01.html

 5月24日の日経新聞(朝刊)によると、日本経団連は政府に対し新型インフルエンザ対策の大幅強化を要請、現在2000万人分しか蓄えられていない流行前の予防ワクチン(プレパンデミック・ワクチン)を全国民分用意することを求めるようです。政府は新型インフルエンザが大流行した場合、17万人から64万人が死亡すると推計、これ以上の被害が生じる可能性も否定できないとしています。  

ニュース畑では、4月に「政府はなぜ最悪の事態に備えないのか」と対策の重要性を訴える投稿があり、それをきっかけに国民の政府への不信感や、あるべき対策について真摯な議論が交わされました。

致死率63%の「新型インフルエンザ」で日本どうなる なぜ最悪の事態に備えない - goo ニュース畑  

 

投稿者は大流行発生前に予防として投与される、2000万人分のプレパンデミック・ワクチンが一般の国民には行き渡らないと説明。備蓄されているタミフルや、発生流行後に必要とされるパンデミック・ワクチンは現実的な生産計画すらないとしています。 「プレパンデミック・ワクチン2000万人分は、政治家、行政・医療・ライフラインの従事者が優先されるので、一般人には到底回ってこないでしょう。感染してしまった場合、2500万人分のタミフルは、強毒型の場合通常の3~4倍の投与が必要になるので、実際は700万人分くらいしかない計算です。感染率25%でも3200万人が感染するので全然足りません。本命のパンデミックワクチンに至っては発生後1年からなので、ワクチンも薬もない状態で1年間自宅に籠城する必要があります...できます?」(fuchikkoさん)

 そして、「政府・厚生労働省の危機管理能力の無さ」を嘆き、「自費でもいいからワクチンを接種できるようにして欲しい」と訴えています。 「日本では、目の前で、家族が倒れても何もしてあげられない可能性が高いのです。正直、自費でいいから『プレパンデミック・ワクチン』を接種できるようにして欲しい」

■国民に横たわる政府への不信感 新型インフルエンザの対策は、スイス・フィンランド・イギリス・アメリカ・カナダなどで進んでいる一方、同じ情報を持っているはずの日本では対策が進んでいません。そこには、政府の危機管理能力の無さに加えて、一般の国民の製薬会社や政府への不信感が背景にあるようです。

「(投稿者に対して)プレパンデミックワクチンで儲かる製薬会社の関係者でしょうか。…と最初に頭に思い浮かぶほど、日本の政治は国民に信用されていません。そういう状況では、厚労省が何を訴えても信じてもらえないかと」(匿名投稿者)

「国内で新型インフルエンザで亡くなってしまった人が出ても厚労省側は情報開示を真っ先にするとは考えられませんが…保身と責任回避の行動を優先し、利権を確保し逃げ場を準備するでしょう。そして準備万端、完璧な状態になったところで報道公開するでしょう。もしかしたら海外の配信ニュースの方が早いかも知れませんね?」(匿名投稿者)

「アフリカとか貧しい国でエイズでいくら人が死んでも、先進国で高く売るために薬価さげるわけでもないし、コピー薬に対しては実力行使。製薬会社はこの手の国家的危機の時に、普段儲けさせてもらっているんだから、もう少し積極的に協力してもいいんじゃないかと思うなだけど、こういう危機的な状況こそビジネスチャンスとばかり、足元を見てぼったくりにかかる」(匿名投稿者) 

 

しかし、こうした製薬会社に対しての批判には、下記のような反論もあります。

「一つの医薬品が販売されるまでに、10年以上の歳月と数百億円の経費がかかっているんですよ。それを回収できないうちに、製造経費だけで売れ、コピー薬を作らせろ、と言われたら製薬会社はやっていけません。それでも構わない、と言っていたら、この先、新しい薬は全く出て来ないことになります」(charlie0913さん) 

新型インフルエンザの予防ワクチンを全国民分揃えるには、約1700億円かかると言われています。ワクチンを備蓄可能な期間は約3年間とされ、その間に大流行が起こらなければ対策費用は「無駄」になってしまいます。一方で、新型インフルエンザが大流行した場合の経済的な損失は約20兆円と試算されています。  

対策費用(=ワクチンの値段)を高いと考えるか、安いと考えるか。国民的な議論が必要かもしれません。

■重要なのは「知識のワクチン」 

事態の大きさに比べて、遅々として進まない日本政府の新型インフルエンザ対策。では、個人は何をすればいいのでしょうか。ニュース畑で紹介されているスイスやアメリカの例では、それぞれの政府は「新型インフルエンザが人から人に感染するようになるのは時間の問題」として、国民に向けて、下記のような対策を奨励しています。

アメリカの例:

・新型インフルエンザに関する情報の収集と理解

・普段から健康的な生活を心がける

・水・食料・日用品の備蓄(10日分以上)

・家庭用医薬品の備蓄(解熱鎮痛剤、胃薬、かぜ薬、電解質液、ビタミン剤など)

・家庭での看護の仕方、調理のやり方などについて話し合っておく …など

 

スイスの例:

・政府が警告を発したときにすぐマスクを使用する

・手を石鹸で定期的に洗う

・鼻をかんだり咳をしたりした時はティッシュを使い、すぐゴミ箱に捨てる

・(発生後は)握手は避ける …など 

 

新型インフルエンザ大流行時の参考とされる、1918年から1919年に発生した「スペインかぜ」は当時の全人類の50%以上が感染したとされ、もっとも多くの人を短期間で死に至らしめた記録的な現象であるとされています。人類はそれ以降、世界規模でのインフルエンザの大流行を経験していませんが、国際的な人の移動が活性化する現在、日本も常に「最悪の事態」に備える必要があるのではないでしょうか。

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流行でたった(?)17-64万ではなく、もっと多くの方が亡くなる恐れがあります。にもかかわらず、対策を練っていないのは国が目に見えないものに金をかけない体質だからです。

 

経済的なダメージは20兆円ではなく、恐らくもっと大きなものになるでしょうし・・・国は多くの国民を失うことで税収が減り、更に苦しい状況になるでしょう

 

まとめます。

 

現在、日本では新型インフルエンザ対策がかなり遅れています。 1500人に一人の脳炎発症率の麻疹ですら、ワクチンがないことで思い悩みました政府の2%でも100人に2人の死亡、アメリカなどの計算では20%・・・。この高率の死亡率が予想されている「鳥インフルエンザ」対策の準備が出来ていないのは、医者としても・・一日本人としても大きな問題だと思います。

 

実際に「ワクチンさえあれば・・・・」と思ってから苦しんでも仕方がないと思います。

 

将来、「ワクチンさえあれば」と思わなくて済むよう、パンデミック対策を練る必要が在ると思われる方は、応援をよろしくお願いいたします

http://blog.with2.net/link.php?602868

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なかのひと 

明日は・・・当地に派遣されてきた後輩医師の歓迎会があります。昔の寮の同室の後輩もいるので、ま・・・楽しみにしております。

 

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本田宏先生の訴え:せめて先進諸国レベルまで医療費と医師数を!

2008-05-28 21:41:02 | 医療

こんばんは

今日は出張して、何でも屋をしていました。何でも屋ですので、いろいろやります。

 椎間板ヘルニア、シンスプリント、ヒ骨骨折(ひびくらいだろうけど)など整形外科関係から・・・ 先日健康診断で見つけた方・・・とか(結局、あさって僕の外来に来て検査をして・・・という流れで行く予定)。

 

 ただ、今回のTopicsは「麻疹」ですね。今日・・・臨床的診断2名ですね。

2回目の発熱と同時に顔面主体に体幹部へ広がる発疹があり、麻疹のワクチンも感染暦もない。 コプリック斑もあるし~。一人は微妙だったので(コプリックが)保健所への報告はせずに様子を見ていますが・・・(というか、2日前に発疹がでて、すでに色素沈着し始めていたので、今更と思い・・・今週仕事を休ませました)。

 

さて、今日はCBからこの記事です。本田宏先生が医師不足の現状と医師の増員の必要性、そして国民の責任に関して訴えられました。

 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080528-00000004-cbn-soci

爆発的医療需要に備え医師増員を  

現役の外科医として臨床に携わる傍ら、全国各地で医師不足などの医療問題をテーマに講演している埼玉県済生会栗橋病院副院長の本田宏さんが5月28日、さいたま市内で開かれた連合埼玉の政策フォーラムで、日本の「医療崩壊」について語った。本田さんは、米国や英国など先進諸国が高齢化に備えて医師を増員しているのに対し、日本では医師数を抑制していることを批判。「このままでは医療ばかりか日本が崩壊してしまう。医療崩壊を食い止めるのは、医師を含む国民みんなの社会的責任だ」と訴えた。  

 

日本の医師数は約26万人で、人口1000人当たりで比較すると世界63位にとどまり、経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均と比べると、約14万人不足している。このまま推移すると、2020年にはOECD加盟国の中で最下位になるという予測に触れ、本田さんは「日本の医師数について厚生労働省は偏在としているが、そうではなく絶対数が足りない」と指摘。医師が不足する中、特に勤務医は当直を含め36時間連続勤務を強いられるなど、過酷な労働環境に置かれていることを紹介し、「高齢化や医療技術の進歩に伴って医師数を増やしている世界のグローバルスタンダードから、日本は大きく立ち遅れている」と述べた。  

「医療崩壊」については、英国がサッチャー政権時代に医療費を抑制したため、手術の半年待ちなどといった異常事態を経験したことを指摘。その反省から、英国では医療費を国内総生産(GDP)比10%を目標に増額し、医学部の定員も50%増にする政策に転換したものの、劇的な効果には至っていないため、「医療は一度崩壊すると、元に戻るまでに相当の年月を要する」と警告した。  

また、既に日本よりも人口当たりの医師数が多い米国が、将来の高齢化に備えて医師の増員を図っていることを取り上げ、「今後、団塊の世代が高齢化していく日本では、爆発的な医療需要が発生する。大量の医療難民を出さないために、日本の総医療費を国力に見合うよう、G7(先進7か国)並みのGDP比10%に引き上げる必要がある」と強調した。  

 

財源については、「ガソリン税をはじめとする特別会計や公共事業の無駄遣い、特別会計などの『霞が関埋蔵金』を見直すことで、医療に公的資金を注入することは十分に可能だ」と指摘。その上で、「医療は国民の『命の安全保障』。医療や介護など社会のセーフティーネットを整備することで、国民は安心して経済活動や社会活動に専念できるし、永続的な雇用効果も生まれる。医療関係者はもちろん、国民も医療現場の正しい情報を共有し、日本の医療を立て直すために発想の転換を図り、医療崩壊阻止への決断に踏み出すべき時が来ている」と訴えた。

更新:2008/05/28 20:19 キャリアブレイン

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本田先生の講演は非常にわかりやすく、笑いありで非常に面白いです。

 

それはさておき、医療に関して 「医療費の増額と医師の増員は必要であり、医療費はその性質上、公的資金を投入するべきである」 と、僕も思っています。そして、その資金は特別会計(一般会計の2倍くらいでしたっけ?)や公共事業費などの見直しで可能であるというのも同意見です。

 

医師の増員に関しては、イギリスと同じ政策は取れないと僕は思っています。50%もあげたら、今の大学では教えきれないと思っていますので、少なくとも何か一つアクセントを入れなくてはならないと思います

 

 ただ、どのような方策も「医療費を上げる」「医師数を増やす」という事が、国策として決められてから動き出すものですし・・そう決まれば、僕も「職場から退散」して、そういう仕事にも協力したいという思いがあります。

 

もちろん、死ぬまで「臨床家」として・・・血液腫瘍や臨床腫瘍学を、研究者として腫瘍関係の研究をし続けていくことは、心に決めていますが・・・。

いずれにせよ、本田先生がおっしゃるように「医療費の増額」「医者の増員」をせめて「先進7カ国」レベルまで上げる必要は在るのではないかと思っています。

 

どうせ、追いつくころには・・また突き放されているでしょう。更に分野や生活の場所が広がってしまい、更に不足しそうな気がします。

 

まとめます

 

本田先生がおっしゃるように、せめて先進7カ国レベルまで医療費や医師数を上げていくことで、日本が完全に医療崩壊をする前に立ち直らせる事が必要だと思います。

一からの再生は・・・かなり厳しいものになると思われますし、壊れるのが予想できるのに放置するのは問題ありだと思います。

同感だと思われる方は、応援をよろしくお願いいたします

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なかのひと 

また、何かあれば記事を追加します。

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