さて、今日記事の題材に取り上げたかったのはこれです。
「婦人科がん」も医師不足 悪性腫瘍の手術1~2か月待ち
2月2日19時36分配信 J-CASTニュース
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090202-00000005-jct-soci
大学病院や地域の中核病院に女性特有のがんである「子宮がん」と「卵巣がん」の患者の受診が急増している。このため、産婦人科ではお産に加えて「婦人科がん」も医師不足に陥り、地域によっては悪性腫瘍にもかかわらず、手術が1~2か月待ちという状況になっている。
■昼間はがんの手術、夜はお産
日本産科婦人科学会・第5回拡大産婦人科医療提供体制検討委員会が2009年1月25日、都内で行われ、筑波大学の吉川裕之教授が「地域の婦人科腫瘍診療が抱える問題点」について発表した。
調査は日産婦に登録されている約220病院について、子宮がん(子宮頸がん、子宮体がん)、卵巣がんの患者数を04年と07年を比較した。このうち年間症例数100以上の病院で、患者が1.25倍以上に増えたのは、17施設に上った。中でも増加が著しかったのは三重大(2.26倍)、千葉県がんセンター(2.02倍)や東京医科大(1.95倍)、大阪大(1.71倍)、群馬大(1.62倍)、東海大(1.62倍)、千葉大(1.61倍)と続く。
吉川教授は、
「大学病院の産婦人科で行われている医療は、周産期医療(妊娠からお産まで)が4割、婦人科がん治療が6割で、婦人科治療にかかる割合の方が大きいです。昼間はがんの手術をして、そのまま夜にお産に入るというケースもある。現場からはお産を扱うのを止めて、がん治療に徹したいという声も上がっています」 と話す。
現状では産婦人科医のうち8割が産科と婦人科の両方に携わっている。 地域によっても事情が異なる。吉川教授が日産婦の地方部会に行ったアンケートで、こんな意見が上がった。
「悪性疾患にも関わらず手術待ちの期間が1か月以上、特に混み合っている時期には2か月半前後になることもある」(栃木県地方部会)
■宮城県「崩壊寸前」茨城県「中堅機関はがん治療中止」
宮城県では「崩壊寸前」という声も上がっている。茨城県は、「県内中堅の医療機関の産婦人科で減員され、分娩取り扱い中止とともに婦人科がん治療の多くを中止した。かなりの数の重症症例が筑波大学などに紹介されている」。千葉県は、「婦人科腫瘍専門医はすべての婦人科に存在しているわけではなく、県内においても地域格差があるのが現状である」。富山県は「(地域での分娩施設が減少したことで)分娩取り扱い数の増加が、婦人科診療を困難にしている」。他にも群馬、三重、熊本、鹿児島などで問題となっている。一方で、山口県は「大きい問題があるとは認識していません」。愛媛県は「対応できているものと思われます」と答えており、地域によって差が出ている。
その理由について、吉川教授はこう説明する。
「お産の場合は自宅近くで生みたいという人が多く、自宅から20―30キロ圏内の病院を選ぶ。一方、がんの場合は自宅から100キロ離れていても、いい病院があれば遠くに行く。そのため一部の病院でのみ患者が増えているが、全体では増えていない所もあり、ばらつきが出ています。婦人科医不足が大騒ぎになっていない理由でもあります」 同調査で女性がんの患者が2.26倍に増えた三重大学医学部付属病院。総務課の担当者は、
「(産婦人科の医師に聞いたところ)近隣の病院で放射線治療を行わなくなり、大学病院に集中しています。また、患者の『大病院志向』も高まっており、産婦人科の患者が増えています。当院の場合は産婦人科医よりも麻酔医が不足しており、手術が予定通りに運ばず、患者さんに待っていただくという事態も出てきています」 と話す。
産科医不足が叫ばれ、とかく周産期医療の改善が指摘されているが、それだけではだめで、産婦人科医療全体を変えていく必要がありそうだ。
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この記事では「産科診療」にからめて「婦人科腫瘍」に関する記事を書いている。産婦人科医療全体を変えなくてはならないと書いているが、現実はもっと厳しいのではないでしょうか?
腫瘍の増勢速度は「個々の腫瘍」「腫瘍の種類」などでも大きく違うので何とも言えませんが、2カ月待ちということの重要性を分かっていないと思います。
ダブリングタイム・・・腫瘍が二倍になる時間だと思っていただければいいですが、白血病なら4~5日程度(もちろん、MDS Overtとかであればゆっくりでしょうけど)、リンパ腫なら1か月、他の癌腫でも60~80日くらいが多いのではないかと思います。
2カ月放置するということは・・・リンパ腫のように1カ月で倍になる腫瘍であれば2×2で4倍になってしまっています。白血病並みの速度で増える腫瘍であれば1カ月で64倍になってしまう。
当然白血病であれば待てないですから、すぐに治療可能な施設を探すわけですが…先日書いたように「14件目でようやく受け入れ先が見つかる」ということになる。
どこでも患者さんが集中しているから受け入れ先などなかなか見つからないわけだ・・・。
婦人科腫瘍は白血病ほどの速さで増えるわけではない。他の腫瘍も同じである。 それでも2カ月先というのは・・・それまでの検査結果と手術を行う時期とで状況が異なっている可能性すらあるわけで・・・。
そして患者さんの精神的なストレスというものもある。
一つは待つ時間である。 患者さんは「悪性腫瘍で手術が必要」と説明されたのちに「2カ月先になります」と言われるわけで・・・・。
この期間を待つ患者さんのストレスはどれほど大きいだろうか?
また、再発した時に「早く手術をしていたら・・・」と患者さんや家族が思うのは当たり前ではないだろうか?
逆に我々医療従事者だって「早く手術をすれば助かるかもしれない」と思っているのを待たざるを得なかったら・・どれだけストレスになるだろうか?
今現在、「最良の方法はこうだ」と思っても「ベッドがなくて入院させられない」ためにうまい手を使えないというのは如何なものだろうか?
そういうことをこの「2ヶ月間」に思うのです。
http://blog.with2.net/link.php?602868
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この記事は婦人科医の不足に関しての記事ですが・・・血液内科の医師不足に関してはたぶんもっと深刻だと思う。
実際に内科の中でも極端に「医師不足」の診療科であり、重症度が高くて特殊な領域である。そのためすべての病院で慢性的に医師不足だと思う。
(実は血液内科が足りているのは「北海道」ではないかとも思うのだが、それは札幌を中心とした地区に集まっているだけだろうしな~・・・・。)
そのため病院の血液内科医の負担が増える。医師が増えているわけではないのに患者さんは増えるから・・・限られた病院に患者さんも集まる。さらに負担が増す。患者さんを受け入れられなくなる。しかし患者さんがいる。
(これは医療が進んで昔なら死んでいた人たちが生存できるようになったから。治療手段が出てきたので、治療するようになったから。そういった理由もあり負担が増えていく。そして治療した分だけ外来加療する患者さんの数は増えるし・・・)
最終的にどこかの病院が崩れていく。崩れた分だけ連鎖する・・・。
本当にこういった「負の連鎖」が起きてきているように思う。
僕は自分の領域の話しかできませんが、他の領域も大なり小なり似たようなことが起きているのではないでしょうか。
いくつか思うところがあるのですが、正直眠くて考えがまとまりません。ここらで失礼いたします。
では、また。