もう一つだけ追加します。
人気ブログランキングを覗いてみたら「医学」分野で7位に入っておりました(すいません、10位台をうろうろしていたのは知っているのですが、1桁に来たのは久しぶりで)。本当に応援ありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。
7位![]() |
さて、先程サラさんからのコメント(がん遺伝子は遺伝しない)を読み、あたり前ですが患者さんの話を聞くことの重要性を痛感しました。アメリカに来て精密検査に行けたというのは、患者さん一人値に割く時間も影響しているのではないかと思っています。
おそらく話をしっかり聞けば・・もしくは「この年齢ではおかしいのではないか(ちなみに学生時代に、2種類の小児がんをやっている患者さんに関して、おかしいから調べたらどうかと言ったらそんなのはどうでもいいといわれました・・汗)」「一般的に合わない」など考える時間があれば、違う結果にもなったのではないかと思いました。
今、僕は新患外来のみ(建前上)をやっていますので、患者さんをゆっくり診ております。しかし、以前40名くらい+新患の時もそうでしたが、日本で一人の患者さんに割ける時間はわずかではないかと思っています。
医療において最も重要なことは「診断」だと思っています。治療も重要ですが、診断が間違っていたら話になりませんよね。アメリカを旅するのにオーストラリアの地図を見ていたら、目的地にはたどり着きません。治療方法が「○○」という疾患で正しかったとしても、××という病気であったので実は効いていなかったという可能性があるわけです。
このBlogでも何回も書きましたが、診断などのために検査を行いますが、検査を有効にするのは「検査前確率」です。
検査前確率とは「○○というものの確率がどの程度と踏んでいるか」もしくは「○○でない確率はこの程度」というようなものです。
アメリカなどの教科書では「この所見、この所見が合わされば○○の確率はX%」と書かれているのもあります。
昔は参考にさせていただいておりましたが、
「American academy of Family Physicians http://www.aafp.org/online/en/home.html」
などにもそういう記載はたくさんあります。
診断に至る前の検査前確率は「医師の問診」「身体所見」です。医師が病気を疑えるかという話になります。ここで検査前確率をいかに上げるかが重要になってきます。恐らく「人の話を聞き」「丁寧に診察する」ことができない医師は、どんなに優秀でも検査前確率を上げる能力が下がるのではないかと思っています。
僕はあまり優秀ではありませんが、比較的ゆっくり患者さんの話を聞くのでいろいろなことに気が付く機会が多いのだと思っています。
検査前確率に関して具体例をあげます
これは僕が研修医のころに作ったスライドですが、検診の有効性はまさに有病率に依存します。感度(病気を病気と診断する能力)・特異度(病気ではないものを病気でないと判断する能力)が99.9%というとんでもない検査だとしても、検査前確率が低ければ陽性的中率(診断精度)は低くなります。
一般診療では検査前確率はそれなりに高い(医者によりますが)ので、こんなに感度や特異度が良い検査でなくても十分有用なわけですが、検査前確率というのが検査後の「診断精度」に大きく影響を与えるのは理解しやすいのではないかと思います。
診断だけでなく、何かを判断するというのはそういうプロセスを踏んでいます。
白血球が増えていた
だけでは、さまざまなことを考えます。
一般的に喫煙者は白血球は増えますし、妊娠でも見た目上増えます。ステロイドホルモン使用中の患者も増えます。
さらに、熱がある…という話だと感染症・・・すなわち肺炎などがないかと考えます(他の検査と合わせ技で考えますが、本来肺炎を疑うならば、熱やせき、呼吸困難などの症状から入りますが)。
貧血の症状や出血があって…という話だと血液疾患を考えるでしょうし、まぁ、いろいろですよね。
診断がついた後、検査によって治療の選択肢を変えたりすることがありますが、そこでも患者さんの話を聞けば適切な治療薬に切り替えられる可能性は高いですよね。何に困っているかとか・・・。
そういう時間がないのが日本の医療の弱点になっているのだろうと思っています。日本は検査が多い。これは事実だと思います。
僕も定期の患者さん+新患の外来をしているときには、話を聞く時間がないので紹介状から検査だけ先に出していました。患者さんの話を聞けば、もしかすると削れるかもしれない検査もすべて出していました。時間がないので問診の代わりに検査の増加で対応とかですね。
結局無駄な検査が多いというのは患者さんの話をよく聞かなくなったということ、聞く時間がないということなのではないかと思っています。
もちろん、それ以外にも診療報酬の問題とかいろいろあるんでしょうけど(汗
いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。
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それでは、また。