新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

診察の時間の重要性

2013-05-18 23:29:09 | 医療

もう一つだけ追加します。

 

人気ブログランキングを覗いてみたら「医学」分野で7位に入っておりました(すいません、10位台をうろうろしていたのは知っているのですが、1桁に来たのは久しぶりで)。本当に応援ありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。

7位
新・眠らない医者の人生探求劇場

 

さて、先程サラさんからのコメント(がん遺伝子は遺伝しない)を読み、あたり前ですが患者さんの話を聞くことの重要性を痛感しました。アメリカに来て精密検査に行けたというのは、患者さん一人値に割く時間も影響しているのではないかと思っています。

おそらく話をしっかり聞けば・・もしくは「この年齢ではおかしいのではないか(ちなみに学生時代に、2種類の小児がんをやっている患者さんに関して、おかしいから調べたらどうかと言ったらそんなのはどうでもいいといわれました・・汗)」「一般的に合わない」など考える時間があれば、違う結果にもなったのではないかと思いました。

今、僕は新患外来のみ(建前上)をやっていますので、患者さんをゆっくり診ております。しかし、以前40名くらい+新患の時もそうでしたが、日本で一人の患者さんに割ける時間はわずかではないかと思っています。

 

医療において最も重要なことは「診断」だと思っています。治療も重要ですが、診断が間違っていたら話になりませんよね。アメリカを旅するのにオーストラリアの地図を見ていたら、目的地にはたどり着きません。治療方法が「○○」という疾患で正しかったとしても、××という病気であったので実は効いていなかったという可能性があるわけです。

 

このBlogでも何回も書きましたが、診断などのために検査を行いますが、検査を有効にするのは「検査前確率」です。

 

検査前確率とは「○○というものの確率がどの程度と踏んでいるか」もしくは「○○でない確率はこの程度」というようなものです。

アメリカなどの教科書では「この所見、この所見が合わされば○○の確率はX%」と書かれているのもあります。

昔は参考にさせていただいておりましたが、

「American academy of Family Physicians http://www.aafp.org/online/en/home.html

などにもそういう記載はたくさんあります。

 

診断に至る前の検査前確率は「医師の問診」「身体所見」です。医師が病気を疑えるかという話になります。ここで検査前確率をいかに上げるかが重要になってきます。恐らく「人の話を聞き」「丁寧に診察する」ことができない医師は、どんなに優秀でも検査前確率を上げる能力が下がるのではないかと思っています。

 

僕はあまり優秀ではありませんが、比較的ゆっくり患者さんの話を聞くのでいろいろなことに気が付く機会が多いのだと思っています

 

検査前確率に関して具体例をあげます

 

これは僕が研修医のころに作ったスライドですが、検診の有効性はまさに有病率に依存します。感度(病気を病気と診断する能力)・特異度(病気ではないものを病気でないと判断する能力)が99.9%というとんでもない検査だとしても、検査前確率が低ければ陽性的中率(診断精度)は低くなります

 

一般診療では検査前確率はそれなりに高い(医者によりますが)ので、こんなに感度や特異度が良い検査でなくても十分有用なわけですが、検査前確率というのが検査後の「診断精度」に大きく影響を与えるのは理解しやすいのではないかと思います。

診断だけでなく、何かを判断するというのはそういうプロセスを踏んでいます。

 

白血球が増えていた

 

だけでは、さまざまなことを考えます。

一般的に喫煙者は白血球は増えますし、妊娠でも見た目上増えます。ステロイドホルモン使用中の患者も増えます。

さらに、熱がある…という話だと感染症・・・すなわち肺炎などがないかと考えます(他の検査と合わせ技で考えますが、本来肺炎を疑うならば、熱やせき、呼吸困難などの症状から入りますが)。

貧血の症状や出血があって…という話だと血液疾患を考えるでしょうし、まぁ、いろいろですよね。

 

診断がついた後、検査によって治療の選択肢を変えたりすることがありますが、そこでも患者さんの話を聞けば適切な治療薬に切り替えられる可能性は高いですよね。何に困っているかとか・・・。

 

そういう時間がないのが日本の医療の弱点になっているのだろうと思っています。日本は検査が多い。これは事実だと思います。

僕も定期の患者さん+新患の外来をしているときには、話を聞く時間がないので紹介状から検査だけ先に出していました。患者さんの話を聞けば、もしかすると削れるかもしれない検査もすべて出していました。時間がないので問診の代わりに検査の増加で対応とかですね。

結局無駄な検査が多いというのは患者さんの話をよく聞かなくなったということ、聞く時間がないということなのではないかと思っています。

 

もちろん、それ以外にも診療報酬の問題とかいろいろあるんでしょうけど(汗

 

いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。

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肝硬変に骨髄投与:幹細胞の可塑性

2013-05-18 23:08:52 | 医療

こんばんは

 

今日は皆様からもコメントをいただきましたが、ゆっくりと体を休ませていただきました。

34歳(今年35歳)でいろいろ言うと怒られるような気がしますが、学生時代と比べるとやはり体力がなくなったか・・・と思います。

 

あの頃は本当に朝4時に起きてランニングして、シャワーを浴びてから2時間ほど勉強し、授業に出た後その内容をイントラネット(無料のやつを使っていました)にアップし、部活をして、勉強したりして、24時過ぎに寝る。友人と一緒に飲みに行くのみょくありましたが、仮に6時まで飲んでいても次の日の授業は絶対に寝ない(一度、酒臭いから後ろに行けと言われましたがw)。

 

そんなことができていたのも25歳くらいまでか・・・と。

 

研修医のころも3時間くらいの睡眠で肉体的にも精神的にも持っていましたが、今はきついなぁ~

 

眠らない医者も卒業か・・・orz

 

さて、昨日の記事ですがこんなものがありました。

 

 厚生労働省の「先進医療会議」は17日、山口大医学部附属病院が申請した、C型肝炎ウイルスに起因する肝硬変に対する「自己骨髄細胞投与療法」を先進医療Bとして了承した。同療法は、肝線維化の改善によるQOL(生活の質)の向上は認められるが、6か月以上の長期予後についての有意差が確認されていないもの。事前評価を担当した福井次矢委員(聖路加国際病院院長)は「ほかに治療法がなく、放っておくと予後が悪い。少しでも可能性があるのならば検証すればよい」と容認を主張。会合では異論がなく、了承された。

 同療法は、C型肝炎ウイルスによる非代償性肝硬変で、ほかの内科的治療によって改善が見込めない患者が対象。具体的には、肝硬変の重篤度を評価する「Child-Pughスコア」が7点以上の患者の腸骨から、全身麻酔下で骨髄液を約400ml採取。血液成分分離装置(アムコ)を適応外使用して無菌的に単核球分画を分離精製し、末梢静脈から投与する。現時点では、非代償性肝硬変の根治療法には、肝移植しかないが、脳死ドナーの絶対的な不足や安全面などの問題を抱え、症例数はごくわずか。こうした中で、同療法に対する期待感は高まっている。

 ただ、これまでの試験では、投与後6か月以内に肝線維化が改善されるなど「臨床指標」に有意差があっても、長期生存率にはつながっていないのが現状。さらに「Child‐Pughスコアの1点以上の改善」という主要評価項目について、肝性脳症の程度や腹水の量などで、評価者の主観が入りやすいという問題点も指摘されている。
 福井委員は、ほかの治療法がない現状をかんがみて、「先進医療Bとすべき」とした上で、「将来的に説得力のある評価をしてもらえれば、保険収載もスムーズになるだろう」と付け加えた。別の委員も福井委員の発言に同調、全会一致で先進医療Bとして了承した。

■先進医療Bの「削除」と「申請取り下げ」も了承
 同日の会合では、15日の中央社会保険医療協議会総会で、「メトレレプチン皮下注用11.25?シオノギ」が保険収載されたため、薬事未承認の同薬剤を使用した「脂肪萎縮症に対するレプチン補充療法」の先進医療Bからの削除を了承した。事務局の厚労省によると、医薬品の保険収載を理由に先進医療Bから削除されたのは今回が初めて。
 
 さらに、旧第3項先進医療(現在の先進医療B)で継続審議としていた「ディスポーザブル高周波切開鉗子を用いた内視鏡的粘膜下層剥離術」の申請取り下げも認めた。申請者である国立がん研究センター東病院が、当時の「高度医療評価会議」から、同技術で使用している未承認医療機器について、「薬事承認可能な医療機器」との指摘を受け、試験の中止を決めたため。

■効率化の観点から、メールによる持ち回り会議も
 このほか、会議の効率的な運営、審査の迅速化などの観点から、電子メールのやりとりなどで意見集約を図る「会議の持ち回り開催」が提案され、これも全会一致で了承した。持ち回り会議は、先進医療A、Bの振り分けのみを議題とする場合に限定。具体的には、(1)委員の日程調整が付かない(2)審議案件がなく、テーマが振り分けのみ-の場合に開催する。ただ、テーマが振り分けのみでも、委員の意見が割れた場合には、本会議の開催を義務付けている。【医療・医薬ライター 半田良太】

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この記事を見て思ったことは肝硬変の治療!にも書きましたが、あの研究はどうなったんだろうなぁ・・・ということ。

 

自分の骨髄の投与が有効だというのは、心筋梗塞などほかの「再生できない」ものでも言われています。骨髄の中にある幹細胞には「柔軟性」があり他のものに変わることができます。これを幹細胞の可塑性といいますが、医学の分野では一般的な話になってきています。

もっと簡単に書きますと、幹細胞のなかにも「生まれたての赤ん坊」のようになんにでもなれるものから、「幼稚園児」くらいまで来ていて「可能性は高く、いろいろなものになれるけど・・・3つ後の魂100までのように…ある程度先が決まってきているようなもの」まであります。この幼稚園児クラスでもいろいろなものになれるから、それを投与することで線維化して使えなくなった肝臓の再生のために活用しようという話です。

 

ちなみにデータは「QOLは改善したが、長期予後が不明」とあります。多分6ヶ月で予後に差が出るような肝硬変の人にしか使えないのであれば、恐らく物の役に立たないと思うので長期的に経過を見るしかないのではないかと・・・

 

記事に書かれていますが、他に改善の可能性がないのであれば「先進医療」の名のもとにやってみて、Historical controlと比較してみるしかないのではないかと思います。

 

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