さて、少し追加します。
先日、ちょっと不思議:制吐剤「アロキシ」という記事のコメントで、乳癌の抗癌剤治療中の患者さんからコメントをいただきました。
この中で抗菌薬の予防投与に関しては不用ではないかと書きました。
抗癌剤治療を行うことで、好中球という「細菌」や「真菌(カビ)」と闘う兵隊の数が減るという事象が発生します。白血病や悪性リンパ腫などでは、特に血液に作用する抗癌剤を使用するので発症頻度が高いのですが、他のがん腫に対する治療でも当然起きうるものです。
その兵隊が副作用で減ったときに抗菌薬を投与することがどれだけメリットがあるのか…というようなことも検証されています。メリットは感染症による死亡の減少ですし、デメリットは恐らく耐性菌の増加の問題が中心で、他にも抗菌薬そのものによる副作用などもあると思われます。
ちなみに好中球数500/μl以下の患者の半数で発熱に関するエピソードがあり、その多くは感染症と言われています。また、好中球100/μl以下になった場合は、80%に発熱のエピソードがあり、その20%は敗血症と言われています。
昔はよい薬がなかったので死亡率が高かった「発熱性好中球減少症」も現在では5%以下になったとされています(実際は積極的な治療のできている人は少ないと思いますが、慢性的に好中球が回復しない疾患だときついことがあります)
まぁ、そういう実情があり「好中球が減ったら、予防投与しよう」という発想に行くわけですが、基本的に現在は全例での予防投与は推奨されていません。まず、さまざまなRCT(ランダム化比較試験)の結果の解析がありまして、抗癌剤治療による好中球減少に対して予防投与を行ってもグラム陰性桿菌による菌血症の発症頻度に有意差がでなかったり、95のRCTのメタ解析の結果では死亡率は予防投与群の方が良かったのですが、非予防投与群の感染症による死亡が10%(急性白血病の寛解導入療法や、地固め療法の大量シタラビン療法でも5%ないくらいですが・・・汗)と高いことが問題で・・そういう疾患群を対象に証明されているというのが事実です。
その為、2011年のIDSAガイドラインでは「好中球100/μl未満が7日以上続く患者」に限定してキノロン系抗菌薬の予防投与を推奨しており、7日未満(100/μlが)の患者に対する予防投与は推奨しない…となっています。
はっきり言うと急性白血病や骨髄移植時以外では基本的に予防投与は推奨されていません。あとは再生不良性貧血のATG+CyA以外では不用という意味です。
ということで、予防的抗菌薬投与に関してでした。
いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。
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それでは、また。