1.だん中の位置と解剖
だん中穴は、ほぼ両乳頭間にある胸骨上の穴で、ほぼ第4肋間に位置する。皮膚の直下は皮下脂肪を介して胸骨がある。
2.だん中圧痛の現代医学的意味と針灸治療法
1)津田胃・十二指腸潰瘍点
だん中穴は、津田氏点でもあって、胃・十二指腸潰瘍時に圧痛が出現しやすい部だとされる。内臓体壁反射で有名な石川太刀雄は、その理由として横隔神経や肋間神経(第4肋間神経の前皮枝の前枝)の反応だと推測している。
胃十二指腸の交感神経性デルマトームは、Th5~Th9である。しかし胃は横隔膜に隣接しているので、胃の病的反応は横隔膜に伝達され、横隔膜は胃より鋭敏な組織であるため、むしろ横隔膜の異常反応として体壁に出現しやすい。横隔膜は中心部がC3C4脊髄神経支配、辺縁部は肋間神経支配である。
また肋間神経が深層から浅層に出てくる部の一つに胸骨点がある。胸骨点は胸骨外縁部の肋間で、肋間神経前皮枝が表層に出てくる。前皮枝は、胸骨側に行く前枝と外方に行く後枝があり、前枝は胸骨上にまで枝を伸ばす。すなわち胸骨上の圧痛をもたらす直接原因は、第4肋間神経の興奮による。
2)心疾患の反応点
では第4肋間神経の興奮をもたらす疾患にはどういうものがあるだろうか。心疾患の交感神経性デルマトームはTh1~Th5なので、心疾患が該当するが、この場合には左前胸部の反応(自発痛と圧痛)が強く出現することが多いが、右心房や大動脈基部の反応としてはだん中に特異的圧痛点になることが報告されている。
3)肋間神経痛
第4肋間神経を自発痛が出ない圧痛点程度の反応にするには、Th4あたりの椎体間の椎間関節症や肋横突関節症に求めるべきだろう。とすれば治療点もTh4椎体を中心とした背部一行に求めると考えるのが自然である。
それを裏付けるものとして、だん中に圧痛がある場合、胸骨外縁(=肋間神経前胸点)や前腋窩線上(=肋間神経外側点)の、第4~第6肋間にも圧痛が出現しやすいという現象があった。
まただん中に圧痛ある者の多くは、だん中だけでなく、だん中から巨闕(第8肋間神経支配)にかけての前正中にも圧痛のあることが多く、これは肋間神経痛は第5~第9肋間に好発するという結果とも一致する。
するとだん中の圧痛をとる方法は、第4~第5肋間神経痛の治療と同一であり、私の場合、同レベルの肋椎関節への深刺ということになる。この方法を実際の臨床に用いてみると、非常に効果的だった。
3.古典的意味
だん中穴の圧痛の古典的意味は、心臓疾患もあるが、常見的には精神疾患時の反応点とみなすのが一般的である。だん中穴は古典では心の募穴とされているからである。なお古典の「心」は心臓と精神を併せた概念を意味する。
※私は、古典でいう心は心拍数を変化させる要因である情動に、心包は心ポンプ作用を営むものと理解している
2.だん中穴反応の古典的意味
だん中穴圧痛の古典的意味は、心臓疾患もあるが、常見疾患としては精神疾患時の反応点とみなすのが一般的である。だん中穴は古典では心の募穴とされているからである。なお古典の「心」は心臓と精神を併せた概念を意味する。
(私は、古典でいう心は心拍数を変化させる要因である情動に、心包は心ポンプ作用を営むものと解釈している。)
それにしても、なぜだん中を精神疾患と結びつけたのだろうか。「悲しみに胸が塞がる思い」などとの連想がまず思い浮かぶ。精神的苦痛→頭を下に垂れる→胸腔臓器や横隔膜を圧迫→ だん中の圧痛という関連、あるいは胸椎前湾を助長させ、肋間神経に悪影響を与えた結果だろうか。